2018年6月21日(木)

「つなぐ力」悪用 深まるネットの闇
坂口祐一論説委員に聞く

日経プラス10「フカヨミ」
2018/3/12 10:00
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小谷:インターネットは犯罪の手段として急速に拡大しています。実態がつかみにくいネット空間でいま何が起きているのでしょうか。日本経済新聞の坂口祐一論説委員に聞きます。警察庁によりますと、インターネットを利用した犯罪の相談件数は13万件もあるのに対し、摘発件数はわずか8000件余りです。摘発された件数の割合が低いのはなぜですか。

小谷キャスター

小谷キャスター

坂口氏(3月6日放送)

坂口氏(3月6日放送)


■認知件数のデータさえない状態

 「ネット犯罪は一般的に匿名性が高く、証拠が残りにくいため、摘発が難しいとされます。地理的、物理的、時間的な制約がないので、犯罪を行う側は自由にいつでも、どこからでも仕掛けることができます。こうした状況に警察の体制が追いつかない。捜査には一定の知識や経験が必要で、急ごしらえでは対応できないのです。それからインターネット犯罪の特徴ですが、犯罪の統計として表に出てこない「暗数」が多いという事情があります。データが読み取られたり、ウイルスに感染したりしても、被害に気付かないことが多い。被害にあったことが分かったとしても世間体や、被害が回復する可能性が低いことから、被害を申告しないといったことも考えられます。現実の空間で起きる殺人や詐欺事件などと違って、インターネット空間では犯罪がどれだけ起きているかという認知件数のデータさえない、という状況にあるのです」


小谷:実態がつかみにくいわけですね?

 「2005年ごろから『闇サイト』事件が非常に大きな問題になりました。ネット上で『薬物売ります』『殺人を請け負います』などと呼び掛けるサイトで、実際これに呼応した事件が相次ぎました。警察が摘発し、サイバーパトロールなども行い、現在は落ち着いてきていますが、闇サイトがなくなったわけではありません。今、一番大きな問題と言われているのは『ダークウェブ』と呼ばれるものの存在です」

小谷:ダークウェブといえば、コインチェックの流出問題でも話題になりましたね?

■ダークウェブが犯罪の温床に

 「インターネットの空間は3つに分けるとわかり易いのですが、一番上が『表層ウェブ』で、検索サイトで自由にアクセスできます。通販サイトや企業のホームページが該当します。その下に『ディープウェブ』があります。企業のデータベースや個人のメールなどです。検索サイトでは表示されませんが、IDとパスワードを使うことでアクセスできます。その下にあるのが『ダークウェブ』です。発信元を隠すような特別なソフトなどを使わないと中に入れません。ここで違法な薬物の取引、コンピューターウイルスの売買、犯罪の代行などが行われているといわれています」

小谷:ダークウェブなどの対策として具体的な取り組みはあるのですか?

■官民挙げて犯罪防止に全力

 「まだ数は少ないですが、警察もダークウェブの中に何とか入って、事件を摘発しています。警察庁も実態解明にむけて努力しています。また日本サイバー犯罪対策センター(JC3)という、産業界や研究機関、警察が連携してサイバー空間の脅威に対処する組織ができました。米国をモデルにした組織で、最近ではインターネットショッピングを装って代金をだまし取るというような事案を詳しく調べ、手口を分析して公表することで被害を防ぐ取り組みをしています。警察の捜査にも協力しています」

小谷:ネット犯罪は今後も拡大していくのでしょうか?

 「認知件数のデータさえないような状態ですから、情勢は非常に厳しいといえます。ただ私は、今は過渡期にあると考えています。ネット上の空間には犯罪者が多いのは事実ですが、それ以上に警察や国の機関、民間のセキュリティー会社などの方々が、ネット空間を安全・安心なのものに変えていこうと日夜努力をしています。私はネット空間にも悪よりも善の方が多く、いずれは善が勝つと思いたいです」

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