新型インフルエンザ流行に備えるには
宮田満日経BP社特命編集委員に聞く

2018/2/19 10:00
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小谷:厚生労働省の発表によると、全国のインフルエンザの患者数は今月4日までの1週間に1医療機関当たり54.33人と、統計を取り始めた1999年以降、過去最多となりました。感染症の脅威は今後も拡大するのでしょうか。日経BP社の宮田満特命編集委員に聞きます。厳しい寒さが続く中、インフルエンザの流行が記録的に拡大しています。何が原因でしょうか。

小谷真生子メインキャスター

小谷真生子メインキャスター

宮田満日経BP社特命編集委員(2月12日放送)

宮田満日経BP社特命編集委員(2月12日放送)


■パンデミックの発生の危険

「例年と異なり、A型とB型のインフルエンザが同時に流行する「混合流行」が起こっています。これが患者数過去最大の原因だと思います。春になれば流行は終息に向かうと思います。ただ、こうした季節性インフルエンザとは全く異なり、来年以降流行するリスクが高まっているのが新型インフルエンザです。この対策も非常に急務だと思います」

小谷:新型インフルエンザ対策とは具体的にはどういうものが考えられますか?

「今月初めに沖縄で、企業などの民間、アカデミア、そして政府や自治体関係者が一堂に会した『第5回日経アジア感染症会議』を開催しました。この会議の中で、東京大学医科学研究所の河岡教授が『H7N9』という鳥インフルエンザウイルスがパンデミック(世界的大流行)になる危険性をはらんでいると警鐘を鳴らしています」


小谷:「H7N9」鳥インフルエンザウイルスとはどのようなウイルスですか?

■アフリカなどの感染症対策も重要

「鳥だけではなく、鳥から人への感染も確認されている鳥インフルエンザウイルスです。これまでのところヒトからヒトへの感染は報告されていませんが、中国では鳥から感染したヒトが死亡するなど、重症化したケースも出ています。今後、突然変異が起こりヒトからヒトへ感染するようになると、パンデミックは避けられません」


小谷:H7N9のパンデミックに対する対策はあるのでしょうか?

「日本ではパンデミックが起こった際の行動計画などは作られていますが、ワクチンなどは事前に用意することはできません。そこで、パブリックプライベートパートナーシップ、いわゆる産官学が連携して社会を強くすることが感染症対策に役に立つと考えられます。また、結核やマラリアなどの感染症に悩んでいるアジア・アフリカ諸国の問題を、こうした産官学が連携して解決しようという動きも出ています。ただ、そうはいっても簡単ではありません。たとえば、マラリアの流行地域にはアフリカの最貧国なども含まれるため、治療薬は1回の投与が1ドル以下と非常に抑えられています。そうなると、新薬開発などの資金回収がとても難しくなり、企業は開発を躊躇(ちゅうちょ)せざるを得ないという状況があります」

小谷:その製薬会社にとっての資金面での解決策というのはあるのですか?

■新薬開発しやすい環境整備を

「今回の会議でもいろいろ議論されましたが、一番面白い考え方が『デリスク・デリンク』いう考え方です。デリスクとはリスクをはずすことです。具体的に申し上げますと、研究開発投資のリスクを減らすために第三者の非政府組織(NGO)が、自分たちで研究開発をし、許認可まで取ってしまいます。ただし、生産が出来ませんので、生産は製薬会社に依頼することになります。こうした流れができますと、製薬企業は研究開発のリスクが減り、参入しやすくなるということがあります」

小谷:もうひとつの、「デリンク」はどういう意味ですか?

「デリンクというのは、売り上げのボリュームと企業の報酬や利益をはずすということです。本来は、商品を売れば売っただけ儲かりますが、そのリンクを断ち切り、別の報酬を用意するということです。先程も申した通り、アフリカやアジアなどでの感染症対策は価格が低くなっているので儲からないのです。売上高に応じてではなく、違う報酬を用意するということになります。例えばアメリカの「オーファン・ドラッグ」制度には、患者が数千人、数万人しかいない小さな市場に対する新薬開発に対してインセンティブが用意されています。オーファン・ドラッグを開発した企業は、新薬承認までの審査期間が通常12カ月かかるところを、6カ月に短縮できる権利を得ます。仮に年間1000億円の利益がある新薬ならば、半年間の短縮で500億円の利益が生まれる。このようなインセンティブの与え方を感染症対策でも導入できないか、という議論が活発に行われています」

小谷:デリスクとデリンクで製薬会社は資金面の心配をすることもなく、ワクチンなどを作ることができるということでしょうか?

「今まで供給出来なかった商品を、困っている人たちに提供する事が出来るようになります。グローバル経済で地球が小さくなっているのでアジアやアフリカの感染症は、もはや対岸の火事ではありません。アジアやアフリカの感染症を撲滅することが我々の経済活動でも重要であるとともに、来るべき新型インフルエンザよるパンデミック対策でも重要になると思っています」

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