2017年11月21日(火)

届かぬ被災地の声、支援阻む「情報断絶」
震災1カ月で課題が露呈 16年前の教訓生かせず

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2011/4/16 7:00
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被災地のがれきの下には、今も多くの「思い出」が眠っている

被災地のがれきの下には、今も多くの「思い出」が眠っている

 「Youth For 3.11」という学生ボランティア団体の一員として4月2日から1週間、主に南三陸町でのボランティア活動に参加した東京大学大学院の奈良悠子さんは、南三陸町災害VCを通じて、写真を拾い集め泥落としをする「思い出探し」や入浴補助といった作業を手伝った。その経験をもとに、こう指摘する。

 「VCでは、各避難所を回ってニーズを吸い上げるというより、各避難所から連絡が入るのを待っているだけの姿勢のようでした。例えば志津川小学校では、被災者300人に対してボランティアは1人と不足しており、ニーズがないわけではない。家が残る地区では、がれき撤去や老人のご用聞きなど、ボランティアはいくらいても足りません」

■身を粉にして働く被災地のスタッフ

 情報武装も進んでいない。南三陸町災害VCには、数台のパソコンがある。それで、かわら版も作り、毎日、掲示している。だが、取材した4月7日時点で、ネットには接続されていなかった。近県の社会福祉協議会から応援に来たという男性スタッフに理由を聞くと、「電力はそんなにない。機材もなく、そんな指示もない」との答えが返ってきた。

 だが、南三陸町災害VCが手を抜いているわけではない。VCは原則、「事前に電話で登録して、募集があった時に来ていただく」としているが、募集がなくとも、自分の判断で現地に赴く一般ボランティアは多い。その日の仕事を何とか探して、彼らを割り当てるだけで手一杯となっている。

 物資の分配も、同じ事情でままならない。南三陸町にある45カ所の避難所への配分は、原則、各避難所をまとめる運営者からの要望を受けて行っている。だが、ある小規模な避難所の運営者は「何があるか分からないのに要望は出せない」と言う。物資が集中するベイサイドアリーナであっても、搬入搬出の記録はノートで行っており、リアルタイムに物資一覧が外部へ公開されているわけではない。南三陸町を中心に支援活動を続ける前出の川上氏は、こう擁護する。

 「町職員はスタッフがかなり亡くなっているし、身内が亡くなった方も大勢いる。そのなかで、集団移転も仮設住宅もやらなければいけない。身を粉にして働いている」。被災者自身も、目の前の仕事に対して必死で働き、日々を生き抜いている。1日の作業が終われば誰もがくたくたになり、また次の日を迎えている。

■「ツイッター? 何ですか、それ」

 要するに、ニーズを掘り起こして精査し、情報を発信するまでの余裕が被災地にはない。それは、普段から情報ツールを使いこなしているボランティアが現地に入ったとしても同じだ。

 ニーズをつかめば、ボランティアはその場で支援活動に入る。ほかを俯瞰して見る暇はない。今、現地に入っているボランティアは、移動手段や燃料、食料を自分で賄う必要があり、活動時間の限りもある。自らの拠点に帰ってから、現地で聞いたニーズを報告しても、その頃には別のボランティアが入り、解決している可能性がある。

 震災直後、首都圏を中心にツイッターなどのソーシャルメディアが活躍を見せたように、支援する側と避難所が、直接ネットを通じてつながることも難しい。避難者には高齢者が多く、若年層であっても「電波が弱く、電池ももったいない。ツイッターの文化も浸透していない」と、ベイサイドアリーナで避難生活を送る前出の男性は話す。

「孤立していて救援物資が足りていない」とされた高台の地域

「孤立していて救援物資が足りていない」とされた高台の地域

 そうした環境の中で出てくる情報は、不確実であったり、時間経過で事情が変わってしまったりすることも多い。4月3日、あるつぶやきが瞬く間にツイッターを駆け巡った。被災地支援に関するつぶやきを必死に集めていた女性のつぶやきを、ある企業経営者が数十万人のフォロワーに回覧した。内容は、特定の地域が孤立状態にあり物資が足りていない、というものだった。

 そこは高台にあり、津波被害は免れた地域。もしやと思い、3日後の6日に名指しされていた施設を訪れると、ちょうど住民同士で物資を仕分けている最中。現場を仕切っていた60歳代の女性に話を聞くと、意外な返事が返って来た。「ツイッター? 何ですか、それ。物資は2週間ほど前から十分に足りていますよ。困っていること? 特にありません」

■不確実なつぶやきに翻弄

 被災者や避難所からの直接の情報発信に頼るのは、不均衡を助長する危険もある。テレビによく映る避難所に支援が集中するのと同じことがソーシャルメディアでも起きかねない。小規模なある避難所からツイッターやウェブサイトを通じた情報発信を試みようとしている30歳代の男性は、こう言う。

 「ツイッターを見ていると、事実に基づかない善意の勘違いや大げさな表現に、遠い場所の人たちが翻弄されていないかと不安だ。誰かが物資が足りないとつぶやくと、そこに視線が集中する。物資が足りないと言った者勝ちで、奪い合いになってしまわないかと危惧している」

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