みずほ銀行、大規模障害を招いた「夜間バッチ処理」
19~21日の3連休にすべてのATMが停止する事態に至ったみずほ銀行のシステム障害。発端は15日未明に起きた「バッチ処理」のトラブルだった。一瞬も止まることを許されない高い信頼性を求められる銀行システムに何が起きたのか。

銀行は窓口業務やATM、インターネットバンキングなどで発生する金銭取引を「勘定系システム」と呼ばれる巨大システムで処理している。みずほ銀行は口座利用客だけで約2500万人を抱え、日々の入出金や送金、振り込み、記帳といった顧客の依頼のほとんどをオンラインで処理している。
給与振り込みは夜間処理
こうした取引は日中のコンピューター処理で完了するが、それ以外にも給与振り込みや企業間取引といった件数の多い業務が存在する。これらは日中のシステム運用が終了した夜間にまとめて勘定系システムで処理している。それがバッチ処理だ。
バッチ処理とは、大量のデータを一定期間ためておき、まとめてコンピューターで処理する操作を意味する。日本の金融機関は、日中は勘定系システムをオンライン処理に使い、夜間は給与振り込みや企業間取引などのバッチ処理に振り分けている。これは限られたシステムを有効活用するために、時間を区切って使い分ける考え方に基づいている。
夜間のバッチ処理では、その日に扱うべき取引データをチェックし、所定のフォーマットに整えたうえで、自行や他行の口座宛てに送金処理して取引を完了させる。バッチ処理に使える時間は深夜から翌早朝までに限られる。日中用のオンラインシステムを立ち上げるには2~3時間を要し、遅れは許されない。「給与振り込みなどのデータは一定期間に集中するため、日程に合わせてシステムの処理能力を確保し、予定時間までにバッチ処理が終了するよう準備する」(システム技術者)という。
人為ミスの可能性も
しかし、みずほ銀行は15日未明、バッチ処理が予定時間までに終了しなかった。原因について同行は「東京都内の特定支店の特定口座への振り込みが想定以上の件数に上った」と説明しており、その段階でシステムが動かなくなった可能性がある。18日夜の会見で西堀利頭取は「一部の口座では、データ容量の上限設定が適切な数値になっていなかった」と人為ミスの可能性に言及している。

いずれにせよ、14日から15日にかけて終了させるべきバッチ処理は朝5時になっても終わらず、約38万件の処理が翌日に積み残された。バッチ処理が長引いたせいでオンラインシステムの起動が遅れ、15日と16日にATMが一部利用できなくなり、さらに両日の夜間バッチ処理も計12万件を積み残すという悪循環に陥った。
この間、みずほ銀行はシステム上のつじつまを合わせながらオンライン処理を運用したが、通常にはない処理負荷に加えATMなどの利用集中もあり、17日にはシステムがダウンした。
このトラブルを解消するには、15日から積み残されたバッチ処理をいち早く片付け、一度崩れたバッチ処理とオンライン処理のバランスを取り戻すしかない。3連休の19~21日にATMとインターネットバンキングを休止するのは、勘定系システムの能力をすべてバッチ処理に振り向けるためだ。みずほ銀行はシステムのソフト、ハードを増強し、処理能力を高めたとしている。
ただ、西堀頭取は残るバッチ処理について、「本来、処理するはずの日付とは違う日にやる分、(システム処理が)煩雑になる」との懸念も明らかにしている。3日間で予定通りバッチ処理が完了するかは予断を許さない。みずほ銀行は19日から21日まで毎日経過を説明し、21日夕方には頭取が3連休の進捗を説明する予定としている。
(電子報道部 松本 敏明)