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安藤美姫「ショーも大切。どんなときでも高い意識で」

 全日本女王として臨んだ2月の四大陸選手権(台湾)で安藤美姫(トヨタ自動車)はショートプログラム(SP)、フリーともに1位で完全優勝しました。昨年12月の全日本から約2カ月間は、少し時間に余裕のあった時期。ショーで緊張感を保ちつつ、21日に開幕する世界選手権(東京)に向けて気持ちをもう一度高めていきます。

昔は嫌でしたが…

1月は試合もなく、シーズン中でも比較的余裕のある時期でした。後半戦に向けて気持ちを切り替えていったのは試合の2週間前くらいからです。今季は、日本でもスターズオンアイスのショーがあり、私も出演しました。たくさんの方々のサポートを頂いていますが、競技生活のためには、ショーの出演も欠かせません。

昔はショーや試合後のエキシビションはあまり好きではありませんでした。エキシビションは上位入賞者のみが出演できる名誉なことですが、ノービス(9~13歳のクラス)で優勝したころは、「なんで試合のために会場に行ったのに、それ以外でも滑らなければならないのか?」などと思ったこともありました。

スケートを始めて1、2年目のころは、エキシビションやショーの大切さが理解できませんでした。「嫌だ、嫌だ」と泣いたこともあるのを覚えています。

高難度のジャンプがなくても観客魅了

しかし5年前、ニコライ・モロゾフコーチのすすめでカナダのショーツアーに出演してから、「ショーっていいかもしれない」って思うようになりました。

共演する人たちはプロが多く、意識もとっても高いです。高難度のジャンプがなくても、ましてや仮に失敗してしまっても、他の部分で観客を魅了することができます。

1人ひとりに個性があるし、何人かで一緒に滑るグループナンバーでも息を合わすところでは、きっちり合わすことができます。中途半端な気持ちのスケーターがいたら、ショーは成り立ちません。そうしたことを改めて知って責任感が芽生えました。

今年1月に出演したスターズオンアイスでも「キャスト」と呼ばれるスケーターたちのグループナンバーがありました。キャストの人たちは前年の11月くらいから練習しています。アマチュア選手の私たちは「ゲストスケーター」としての登場となります。

昔のプログラムでも大丈夫

滑る曲は自分たちで決められます。1日2回公演でしたら、2曲選びます。今回は「Why Do People Fall In Love」と「アランフェス協奏曲」を、ディレクターに提出しました。どのショーでどちらの曲を滑るかは、ディレクターが決めます。

私は割と昔のプログラムも覚えていて、かなり昔のプログラムも滑れます。2003~04年にフリーで滑った「火の鳥」も大丈夫です。

これは6点満点だった旧採点時代のプログラムですから、今ほどジャンプ、スピンの要素に細かくはありません。ノビノビと滑れるから、覚えやすいです。新採点のプログラムはレベルをとるために、気をつけるべき要素が多くてちょっと大変です。

ほかのスケーターのプログラムもチェック

「アランフェス協奏曲」は本当は試合で滑りたかったです。でも、この曲を滑る選手は多いので、ニコライコーチからショーナンバーとして滑るように、と言われました。私はどちらかというと滑りが硬いスケーターなので、「スローな曲でも魅了できるようなスケーターになるように」と、ボーカル入りでショー用にプログラムを作ってもらいました。

いろいろなショーに出演するようになって、ほかのスケーターのプログラムもチェックするようになりました。シーズン前の曲選びのときとかですね。

一番のお気に入りは男子のカート・ブラウニング選手(カナダ、世界選手権4度優勝、史上初の4回転ジャンパー)です。キャラクター作りとか、プログラムの雰囲気が素晴らしいです。

そのほか、女子のミシェル・クワン(米国)選手も好きです。1回だけですが、リンクで一緒になったことがあります。全日本と世界ジュニアで初優勝して臨んだ国際大会のシニアデビュー戦、04年の世界選手権ドルトムント大会のことでした。

クワン選手と一緒でワクワク

このときはクワン選手の直後、最終滑走で滑りました。公式練習のときから感激して、本番もずーっとクワン選手の演技をリンクサイドで見ていました。今では考えられないけれど、まだ高校1年生だったからワクワク感が強かったです。

試合のときもショーのときも、朝からほとんど食べません。試合やショーまで5~6時間あるときは、魚やフルーツなどの消化しやすいものを口にしますが、2時間くらいしかなかったら食べません。衣装は体にピタっとするので、食事をすることでおなかが出てしまうのが気になります。それで体力は大丈夫? 前夜にたっぷり、試合後にも十分食べるので平気です。

メークを考えるのも大切な時間

衣装も大切ですが、それに合わせてあれこれメークを考えるのも、私にとっては大切な時間です。いつも同じ顔で演技するのは嫌です。SPとフリーでは雰囲気を変えるし、ショーも1回目と2回目の公演ではメークを変えます。

試合では、朝の公式練習はすっぴんで行き、試合前にホテルでメークをします。ヘアのセットと合わせて、だいたい1時間くらいかかります。舞台化粧と一緒で、遠くにいる人からも表情がわかるようにするので、少し濃いかなと感じる人がいるかもしれません。

ショーのときは試合のときとは違ってスポットライトなどの照明があるので、メークが濃すぎると反射して、逆に遠くの人から表情が見えにくくなってしまいます。だから、普段のメークとほぼ同じ。2回目の公演の前にちょっと化粧を直して、1回目とは色を変えます。

ショーでは時々、ほかのスケーターのメークを手伝うこともあります。この前は(村上)佳菜子選手のメークを手伝いました。「同じ曲でも雰囲気を変えたいから」ですって。

そんな風にバックステージで、ほかの選手と交流を深めるのもショーのいいところです。

体調はあまり良くなかったが優勝

こうしてリフレッシュしてからロシアへ行って練習し、2月の四大陸選手権に臨みました。あまり体調が良くなくて、薬を飲んだりもしましたが、そんなときにでもこれだけの演技ができるんだ、と自信になりました。

今季はこうした気持ちのコントロールがしっかりできて、周囲の雑多なことに影響を受けなくなりました。初めて世界女王になった4年前とは違う点です。

どんなときにでも自信を持って自分の演技を――。こうした意識をしっかり持って、3月の世界選手権でもメダルをとれるように頑張ります。

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