2017年12月17日(日)

IT企業が銀行を脅かす?
奥平和行編集委員に聞く

日経プラス10「フカヨミ」
2017/12/4 10:00
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小谷:IT企業が融資ビジネスで銀行の存在を脅かしています。金融とITを融合した「フィンテック」を活用して、異業種が融資ビジネスに参入を始めました。その一人が、短文投稿サイト「ツイッター」の創業者、ジャック・ドーシー氏です。ツイッターは、全世界で3億人以上が利用し、最近では米トランプ大統領が頻繁に投稿することでも知られています。ドーシー氏が立ち上げたのが、スマートフォン(スマホ)でカード決済ができるサービスと個人事業主や小企業を対象とした少額の貸し付けサービスです。ドーシー氏にインタビューした日本経済新聞の奥平和行編集委員に聞きます。ドーシー氏が始めたビジネスは銀行に取って代わるのでしょうか。

小谷真生子メインキャスター

小谷真生子メインキャスター

奥平和行編集委員(11月28日放送)

奥平和行編集委員(11月28日放送)


■ツイッター創業者に聞く 銀行を脅かすIT企業

米ツイッター ジャック・ドーシー最高経営責任者(CEO)

米ツイッター ジャック・ドーシー最高経営責任者(CEO)

 「ドーシー氏はもともと、ツイッターを創業したことで知られていて、米国を代表するIT起業家と言えると思います。このドーシー氏が2009年に立ち上げたもう一つの会社が『スクエア』で、専用機器をスマホに差し込んでクレジットカードを通すことによってクレジットカード決済が出来る仕組みを提供しています。日本でも利用されています。もともと、クレジットカード決済するには店のレジ回りに高額な大きな端末を置く必要があり、厳しい審査があるため中小の小売店、レストランにとっては導入のハードルが高かったわけです。決済端末を導入できないと売り逃してしまうリスクがあるので、そこに商機を見つけました。スクエアが最近、力を入れているのが『スクエア・キャピタル』という小口の貸し出しビジネスです。どのくらいの規模で伸びているか聞いたところ、ドーシー氏は『事業の動き出しにはとても興奮している。平均融資額は約6,000ドル(約67万円)だ。我々は従来の銀行が決して融資しない商店主に融資している』と述べました」

小谷:銀行との違いはあるんですか?

■スクエアの融資ビジネス 銀行とどう違う?

 「貸し出しの規模が小さいです。平均70万円弱ということですので、銀行にとっては小さすぎるビジネスなため、資金が必要になった店やレストランは友達から借りたり親から借りたりしていました。その需要を取り込んでいこうというビジネスです。ただ、もともと既存の金融機関と組んでサービスを提供していましたが、最近は自ら銀行免許の取得を申請し、さらに事業を拡大していこうという流れになっています」

小谷:日本でもそういう動きはあるんでしょうか。

 「アマゾン・ドット・コムは3年ほど前から、アマゾンに出店する企業向けに在庫状況や販売動向を見ながらお金を貸すビジネスを提供しています。クレジットエンジンというスタートアップやクラウドワークスもそれぞれ小口のネット金融というのを始めたり始める計画を立てていたりしています。もともと、中小企業のお金の流れは見えにくいものでした。実際にお金を借りるためには銀行に行き、決算資料や事業計画書を見せて面談をしてお金を借りるというのが一般的でした。最近は、例えばネット通販やSNS、評価サイト、会計ソフトといったものを使いネットを経由する取引が増えているので、色々とデータが蓄積されます。それを人工知能(AI)を使って分析することによって人手をかけずに効率的に貸し出しの枠や金利を決めて、さらに貸し倒れのリスクも減らすことが可能になっていると言えます」


小谷:融資というと、これまでは金融機関が専門でしたが、今後は競争にさらされるということでしょうか。

■異業種の融資ビジネス 銀行に危機感

 「そこは興味深いところだったので、ドーシー氏に聞いてきました。ドーシー氏は『我々は金融機関とのパートナーシップのような関係を意識している。銀行と同じ手法で銀行から融資を受けられない事業者に融資する。従来型の銀行と競合はしていない。銀行のパートナーとして融資をより多くの事業者に届けるようにした』と説明しました」

 「非常に慎重な物言いで、とりあえず銀行はパートナーであると。日本市場にも既存の金融機関と組んで入ってきているので、そのような言い方をしています。クレジットカードの既存のビジネスを見てみますと、もともと中小零細のレストラン、お店から商売を始めたのが、今は徐々に大きい規模の事業者にまで広げていて、それが業績拡大につながっています。当然、銀行も危機感を持って見ています。一つ象徴する動きとしては、昨年の9月、みずほ銀行とソフトバンクが組んで、AIを使って貸し付けサービスを行う会社をつくりました。このように金融とITが接近する動きが出ています。さらに、このところ銀行のリストラの話が相次いでいますが、低金利で相当、経営環境が厳しくなっているので、コストダウンという面でも、もしくは新ビジネスをつくるという意味でも、技術の活用が非常に重要になっています。そういう意味で、米国ではすでに起きていることですが、今後、技術の取り込みのために技術を持っている会社と組んだり買収したりする動きが増えてくるのではないかと見ています」

小谷:フィンテックの動きを日米で比較すると、日本は遅れているんですか。

 「例えばスマホ決済などは、日本はもともと『おサイフケータイ』というのがあったので実は進んでいました。ただ、米国ではプラットフォーマーという非常に規模の大きい会社、アマゾンやグーグルなどがあり、彼らは世界に一気に広げていく力があります。当然、日本に攻め込んでくる動きもあります。今後、日本から(対抗できるようなサービスが)出てくればいいなと思います」

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