2019年8月25日(日)

来年度予算の焦点、診療報酬の改定を読む
大林尚上級論説委員に聞く

2017/11/27 10:00
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小谷:政府の2018年度予算編成に向けた攻防が始まっています。特に重要なのが、医療と介護の改革で、医療費と介護費の伸びをいかに抑えるかが議論の焦点になっています。いま検討されているのは、病院や薬局、介護事業者に支払われる診療報酬と介護報酬の見直しです。社会保障問題に詳しい日本経済新聞の大林尚上級論説委員に聞きます。医療と介護の改革がいま特に重要なのはなぜでしょうか?

小谷真生子メインキャスター

小谷真生子メインキャスター

大林尚上級論説委員(11月20日放送)

大林尚上級論説委員(11月20日放送)


■診療報酬改定 攻防は医療の人件費に

「団塊の世代の人すべてが75歳以上の後期高齢者になる2025年問題を前に、診療報酬と介護報酬を同時に改革する事実上の最後のタイミングです。例年にも増してその重要性が高いと思います。2025年の人口ピラミッドを見れば、高齢化には2つの要素があることがわかります。一つは高齢者そのものの増加。もう一つは高齢者の寿命が延びていることです。医療費は今から2025年に向けて20兆円程度増え、介護も今の約10兆円から7兆円程度増えると政府は推計しています」


小谷:診療報酬や介護報酬の改定とは、病院や薬局、介護事業者に支払われる報酬の水準を上げ下げするということですね?

「そうです。予算を査定する財務省は当然、大幅な引き下げを画策しています。これに対して、日本医師会や医師会の応援団である『医療族』の議員が反発しているという構図です。きょうは診療報酬に絞って解説します。診療報酬は医療界の人件費が大半を占める診療報酬本体と、医療用の薬の値段、つまり薬価に分かれます。過去の診療報酬改定は、薬価を引き下げることで本体を上げる傾向がずっと続いていました。しかし、ちょっと待ってほしいと言いたい。グラフは世間の物価や賃金の水準と診療報酬本体を指数にしたものです。この二十数年間、デフレが続いていて物価・賃金はほぼ横ばい。これに対して診療報酬の本体はかなり上がっていてデフレ知らずです。まずは人件費に切り込むことが18年度予算の課題になります」


小谷:具体的には、どのように診療報酬を下げていくのでしょうか。

■「とことん医療」から「ほどほど医療」へ誘導

「ヒントは、わたしたちが病院や診療所で渡される医療費の領収証にあります。診療行為には一つ一つ『点数』がついています。1点を10円に換算した額が、健康保険組合などから病院や診療所に払われています。この単価を変えることで、診療の仕組みや病院・診療所の収益構造に影響を及ぼそうとしています。具体的な方法として検討されているのが、急性期病棟を減らすことと病院の門前にたくさんある薬局の調剤報酬を引き下げることです」

小谷:まず、急性期病棟を減らすとはどういうことですか?

「これは本来、緊急性が高く症状が重い高度急性期の患者のための病棟で、入院患者7人に対し常勤の看護師が1人という手厚い配置基準を満たした病棟を指します。この基準を満たしていれば、入院患者1人あたり1日1591点、つまり1万5910円が入院基本料として病院に入ってくるわけです」

小谷:これが実態に即していないということですか?

「高齢化の時代、特にこれからの後期高齢者は高度急性期よりも回復期とか慢性期の患者が増えます。つまり『とことん直す急性期医療』よりも『そこそこ治す、あるいはほどほど治せばいい』という医療のニーズが高まるわけです。しっかりと急性期医療に特化している病院にだけ、それに見合った入院基本料を払うという仕組みに変える必要があると思います」

小谷:できれば高度急性期に該当する患者さん以外の方は遠慮してほしいと。

「本来はもう少し看護基準がゆるい病棟で療養するのがベストだと思います。症状が安定していれば介護施設へ移る選択肢もあるでしょう」

小谷:もう一つのポイントが、いわゆる門前薬局の調剤報酬を下げるということですが、なぜその必要があるのでしょうか?

■調剤薬局が激増する理由は?

「病院内の薬局で患者が薬を受け取る方式だと、病院が公定価格よりも安く薬を仕入れてそれを公定価格で売るために生じる薬価差益が発生する問題がありました。これを減らすために、院内処方よりも門前薬局の院外処方を増やすよう誘導してきたのですが、それが行きすぎてしまい、いまや調剤薬局はコンビニの数より多いと言われています。これが調剤報酬、なかんずく医療費の増大につながっているわけです。例えば、高血圧・糖尿病・不眠・胃炎の症状の人が28日分の内服薬を出してもらったときの領収証を見ると、調剤薬局の方が高くなっています。自己負担3割の患者の場合、院内処方が420円、院外だと1820円で4倍程度の差がついています。真に患者のためになる指導をしている薬局にだけ加算する仕組みにしていくことが課題です」

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