2019年2月22日(金)

黒船グルーポン追うリクルートの勝算
反転攻勢の裏に「愚直な策」

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2011/2/17 7:00
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やはり同業界に身を置く人間の嗅覚は鋭かった。昨年の暮れ、リクルートが運営するクーポン共同購入サイト「ポンパレ」の前澤隆一郎編集長は、まるで「おせち騒動」を予期していたかのごとく、こう話していた。

「グルーポンのクーポンの質について、けっこう危ないのでは、そこがアキレス腱(けん)になる可能性があるんじゃないかと見ている。景品表示法も含めて、いつ刺されてもおかしくないなかで、サービスをなされている印象。勢いで伸びている業界だけに、何かが起きたら騒ぎになるかもしれない」――。

その危惧が現実のものとなった年明けのおせち騒動。クーポンを購入する消費者側、提供する店舗側ともに不信感がまん延する結果となり、急成長を遂げてきたクーポン業界は踊り場にさしかかった(詳しくは「クーポンサイト、隆盛の陰にひそむ危うさ」を参照)。そのなかで、首位グルーポンの後塵(こうじん)を拝していた2位のポンパレが反転攻勢に出ている。

■1月中旬から手数料の有料化に踏み切ったポンパレ

1月中旬、リクルートは準備が整ったとして、ポンパレ事業の有料化に踏み切った。じつは2010年7月にサービスを開始して以降、リクルートはポンパレを「テストマーケティング」と位置づけ、掲載する店舗からの手数料を無料としていた。消費者から得たクーポンの代金は、その全額を店舗側に還元、リクルートの実入りはゼロだった。

新たに設定した手数料率は、原則15%。業界最大手、グルーポン・ジャパン(東京・渋谷)が基本手数料率に据えている50%からすると、かなり低い。ポンパレの事業責任を負うポンパレ事業推進室の北村吉弘室長(事業部長に相当)によると「クレジットカードの決済手数料や、サイトの維持運営費・人件費などの固定費をまかなえるくらいの料率」という。

今後は、クーポンを掲載する店舗の業界ごとに適切な料率を探り、今夏をめどにリクルートに利益が残る新たな料率を設定する計画だ。北村室長は、「たとえば飲食業はだいたい3、4割が原価と固定費なので、半額にしてさらに手数料を50%取るとほとんどが赤字になる。手数料が20%から30%が、店舗の損益分岐なのではないか」とする。

同時に組織体制も強化した。クーポン付きグルメ情報誌・サイト「Hot Pepper(ホットペッパー)」など、全国30カ所の拠点に散らばる既存媒体の営業担当約1500人をポンパレ向けの新たな商材の発掘にフル活用するほか、衣料品のクリーニング店など既存媒体で扱っていない業種をカバーするポンパレ専任の営業部隊を70人ほどに倍増させ、全国7カ所の主要拠点に配置した。

攻勢は数字にも現れている。クーポン情報サイト「クーポンジェイピー」を運営するシープジェイピー(栃木県大田原市)によると、11年1月にポンパレが提供したクーポンの掲載数は前月比15%増の1620件と伸び、同8%増で1529件のグルーポンを初めて超えた。

月間の推定販売総額では、ポンパレが4億7664万円なのに対し、グルーポンの販売総額は約2倍の9億8385万円と"ダブルスコア"の差は埋まらない。だが、数字を詳細に追うと、違ったトレンドが見えてくる。

■週次販売総額の開きを1.4倍に縮め、射程圏内に

12月からの週次の販売総額を割り出し、グラフにすると、クーポン掲載数が回復した正月休み明けの1月初旬以降、グルーポンが横ばいなのに対し、ポンパレは右肩上がりで売り上げを伸ばしていることが分かる。11年1月30日からの1週間、ポンパレが販売したクーポンの推定金額は1億5393万円で、グルーポンは同2億1567万円。2月1日には、日次の販売額で初めてポンパレがグルーポンを抜いた。この期間だけを見ると、その差は1.4倍。射程圏内に収めたと言える。

破竹の勢いで進軍する「黒船」に、ようやく反撃ののろしを上げるところまできたリクルート。ただ、潮目が変わった要因に、おせち騒動があることは間違いない。グルーポンがつまずいただけ、という見方もできる。棚ぼたか、地力か。取材を進めると、反転攻勢の裏には周到な準備と独自性にこだわった策が隠されていた。

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