2017年12月16日(土)

受け取り方が変わる? 宅配の未来
田中陽編集委員に聞く

日経プラス10「フカヨミ」
2017/10/30 10:00
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小谷:宅配最大手のヤマト運輸を傘下にもつヤマトホールディングスが9月、新たな中期経営計画を発表しました。今後3年かけて物流施設や新型車両の導入などに2000億円、夜間配達専門ドライバーの新設や人工知能(AI)やロボットの導入など働き方改革に1500億円を投資します。これらの投資によって、人手不足や再配達問題を解決することはできるのでしょうか。流通業界に詳しい日本経済新聞の田中陽編集委員に聞きます。田中さんは今回のヤマトの投資計画をどのように分析されていますか?

小谷真生子メインキャスター

小谷真生子メインキャスター

田中陽編集委員(10月24日放送)

田中陽編集委員(10月24日放送)


■ヤマトHD 中期経営計画の背景

 「まず、ヤマトのこれまでのビジネスモデルを振り返ってみたいと思います。ヤマトのビジネスモデルを象徴する言葉として、社訓の『ヤマトは我なり』があります。従業員の誰もが当事者意識・経営者意識を持ち仕事に取り組むということなんですが、今まではそれでうまく回っていました。世の中の困り事をドライバーが吸い上げることで、『時間帯別配送』や『クール宅急便』『ゴルフ宅急便』など、現場発の、現場を起点とした革新的なサービスを生み出してきました」

小谷:顧客の細かなニーズをすくい上げ、現場の人たちが裁量権を持たせてもらって成功してきたビジネスモデルといえますよね。

 「ワンオペレーション、1人で色々な事をやるスタイルなんですね。お客のためにいろんなサービスをやるあまり業務が増えたことや、以前から言われていましたが、ネット通販の急拡大による物量の増加と人手不足のために対応しきれなくなってしまったわけです。一つ一つはお客様のためにということですが、合成の誤謬(ごびゅう)に陥ってしまったというのが現在の状況です。今回の中期経営計画ではITを使ったり、配送の仕組みを抜本的に変えようとしています。いわば『運び方改革』ということだと私は見ています」


小谷:この「運び方改革」うまくいきますか?

■宅配の「運び方改革」と利用者の意識改革

 「今回の大型投資を伴う運び方改革ですが、持続的に成長するためには必要だと思います。ただ私は、利用者の意識改革、いわゆる受け取り方改革も必要だと思います。ネット通販で食料品や生活必需品が気軽に、すぐに届けてもらえるようになりましたが、全てそれらの商品が『本当に自分の家で受け取るべきものなのか』を考える時期だと思います。高齢者や体の不自由な人は別として、例えば、本やCDやシャンプーといった緊急性がない、かさばらないものを届けてもらうことが本当にいいことなのか。それだったら、受け取りに行く、自分からどこかに受け取る場所に出向くということも考えるべきだと思います」

小谷:受け取りに行くのと同様、買いに行くという行為自体が非常に面倒で、配達をしてくれることが非常に便利なんですが。

 「確かにその通りです。今まで来てもらっているわけですから、便利だと思いますが、例えば土曜日の午前中、再配達をお願いすると、違う宅配業者が3便も来るようなこともあり、荷物を待つために午前中ずっと拘束されることになるわけです」

小谷:つまり、家に居なければいけない。

 「そういうことです。トイレにも行けない、ペットの散歩にも行けない、ということもあり得るわけです。そうすると、やはりもっともっと受け取る場所の整備が必要なのではないかと思います」

小谷:ただ、受け取り場所のインフラはちゃんと整ってきているのでしょうか?

■宅配の今後 ポイントは生活動線

 「今もコンビニエンスストアといった所で受け取りが可能です。ただ、宅配便は年間およそ40億個あるわけです。色々なeコマースのサービスが始まるとともに、取扱個数が増えます。コンビニは約5万6千店ありますが、もし40億個を全てコンビニで受け取ることになると、1店舗で年間約7万個も処理しなければいけない計算です。これは現実的にはあり得ないことですので、であれば抜本的に受取場所を考えるべきではないでしょうか」

小谷:コンビニも、そのためのスペースをまた確保しないといけないぐらいですね。

 「そうですね。コンビニはお店が狭いですから、なかなかうまくはいきません。駅でも受け取れる場所が増えています。例えばですが、生活動線を考えると、クリーニング店や車に乗る人であればガソリンスタンドなどがいいかと思います。道の駅もそうです。また、何丁目何番地にある自動販売機とか、売れない自動販売機を撤去してそこを受け取り拠点にする、といったことも可能だと見ています」


小谷:これからは、受け取るためのロッカーというのが皆さんの身近に増えてくるということでしょうか。

 「色んな拠点、インフラを、使うということだと思います」

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