/

安藤美姫「もっと伝えたい。SP変更は前向きな挑戦」

 パーフェクトなフリーで逆転優勝――。安藤美姫(23、トヨタ自動車)は全日本フィギュアで6年ぶり3度目の頂点に立って2010年を締めくくりました。今季はシーズン途中でショートプログラム(SP)を変更、フリーでは後半部分に5本のジャンプを跳ぶなど、どんどん挑戦しています。並みの選手なら、ちょっとてこずりそうなことを事もなげにやってしまうのが、今の安藤選手です。

■納得のSP変更、不安はなかった

GPファイナルからSPの曲を映画「ミッション」のサウンドトラック(世界的なチェロ奏者、ヨーヨー・マさんの演奏)に変えましたが、これはプラスの意図があってのプログラム変更なので、不安はありませんでした。

最初のSPはステップが難しくて、一緒に練習している男子選手も『あれはスゴイ』って立ち止まって見てくれたほど。でも、体力的にきつくて、迫力がなくなってしまうことがありました。

ジャッジの方も、これまでの女子の演技にはない新しさを評価して下さる人がいた一方で、「評価が難しい」という意見もありました。

自分にとって新しいものに挑戦しつつ、もっと伝わるものを何かした方が点が伸びるだろうと思ったので、納得しての変更です。最初のSPも気に入っていましたが、ジャッジに評価されなくては試合で通用しません。

■2シーズン前のフリーもいい方向に

3シーズン前のSP「サムソンとデリラ」は、その前年の「シェヘラザード」と曲調が似ていて、滑りやすいけれども気持ちがなかなか乗りきれませんでした。だから、シーズンの終わりに「シェヘラザード」に戻しました。これは過去に戻るので、いい変更とはいえません。

2シーズン前には、フリーを「ジゼル」から、サン・サーンス作曲の交響曲第3番にしましたが、これは前向きな変更でした。

ジゼルは中野友加里さんと同じで、どうしても比較されてしまいます。評価は悪くなかったけれど、自分にはジゼルより似合うものがあるって思えたので、この変更はいい方向に行きました。

(今シーズン、多くの女子選手が3回転-3回転の連続ジャンプをプログラムに入れている。多くの選手は2つ目の3回転は左足をつき、右足で踏みきる「トーループ」を跳ぶが、安藤選手は右足1本で跳ぶ「ループ」を跳んでいる。)

■3回転ルッツ-3回転ループにこだわって

(一番簡単とされる)トーループの方が苦手なんです。ダブルアクセル(2回転半ジャンプ)-3回転トーループはきれいに入るけれど、自分としてはしっくりしないところもあります。

ずっと3回転ルッツ-3回転ループは跳べていたので、(回転不足とジャッジされるときもありますが)これにこだわって、このままやっていきたいです。

トーループは真っすぐに跳ぶからクリーンなエッジで着氷しやすいです。でも、ループはカーブをかけながら跳ばないといけないので、どれだけクリーンに着氷しても回転不足をとられやすいという点はあります。

かといって、3回転半ループみたいなことをすると、回り過ぎたり、タイミングが狂ってしまいます。あまり考えすぎずにやりたいです。

■なぜ日本人はジャンプがうまい?

米国では「なんで日本人のスケーターはジャンプをこんなに早くから(小さなころから)跳べるの?」ってよく聞かれました。

ニコライ・モロゾフコーチによると、「アジアの人は筋肉の質というか、細身のラインで太りにくいから」だそうです。でも、トリノ五輪銀メダリストのサーシャ・コーエン(米国)のようなスリムな欧米人もいますから、理由はよく分かりません。

確かに日本人選手のジャンプは優れていると思いますが、欧米人のスケーティング技術はすごいですよ。

■スケーティング技術はすぐには身につかない

私も中学1年生のころから、佐藤信夫先生、久美子先生にエッジワークとか、「目線を変えず、氷をなめるように滑る」「体を上下動させず、姿勢よく滑る」とかいった点を、いろいろ細かく教えて頂きました。

だいぶジャンプ力に追いついてきましたが、スケーティング技術ってすぐには身につきません。

私のイメージでは関東など東の選手はスケーティングが上手、西の選手はジャンプが上手という感じがします。そして私のジャンプは門奈裕子先生が教えてくれたもの。絶対的に信頼しています。

■小さいころは無心で

門奈先生について習い始めたころ、どんどん、どんどんジャンプの回転数が上がっていくのが楽しくて仕方ありませんでした。そして、うまく着氷できた時の感触ったら……。

練習中に転んで頭も打ったし、成長痛のまま試合に出たこともありました。成長痛だと思っていたら、疲労骨折していたこともありました。

小さいころって無心でスケートに打ち込めるから、怖さもありません。1回転の次は2回転、その次は3回転……。4回転もその延長でした。

■体が変わればジャンプも変わる

でも、体が変われば、ジャンプも変わってきます。たまに懐かしくなって16歳のころの演技とか見ますが、体つきも、ジャンプの大きさも違います。「チュルチュル」っていう感じで簡単に跳んでいるんですよ。だから4回転も跳べていました。

体が大きくなるとそういう感じでは跳べませんが、ジャンプに飛距離や高さ、迫力は出てきていると思います。

そうした過程では、もちろんきつい時期もあります。私の場合、17~19歳くらいのときに、どんなダイエットをしてもなかなか体重が減りませんでした。

注目されて精神的なストレスもあったかもしれませんが、成長期だったんですね。

■ジャンプにはコツがある

いつの間にか、自然に体重が減りましたから。特別なことは何もしていないのに。心掛けたのは食事のときに野菜をたっぷりとる、ということくらい。不思議でしたね。

体重が減ってきて、ジャンプが安定してきました。今でも日本に帰ってくるたびに、門奈先生に見ていただいていますが、「気をつけているから大丈夫ね」って言って下さいます。

何を気をつけているかって? それはナイショです。実はジャンプにはちょっとしたコツがあるんです。

将来、指導者になったら、生徒さんには門奈先生由来の"秘訣"を伝えるつもりです。

すべての記事が読み放題
有料会員が初回1カ月無料

セレクション

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
新規会員登録ログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
新規会員登録 (無料)ログイン
図表を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した図表はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン