年金受給 10年で資格 どう変わる?
山口聡シニア・エディターに聞く

2017/8/21 10:00
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水原:これまで、年金を受け取るためには25年以上保険料を納める必要がありましたが、この8月から10年に短縮されました。これによって年金制度はどう変わるのでしょうか。まずは新しい制度をおさらいします。
 国民年金の保険料は原則、20歳から60歳までの40年間納めることになっています。これまでは、25年以上払わないと年金は原則1円も支給されませんでしたが、今月から10年以上払っていれば支給されることになりました。これにより、25年には満たないものの10年以上保険料を払ってきた約64万人の高齢者が年金を受け取れるようになります。社会保障問題に詳しい日本経済新聞の山口聡シニア・エディターに聞きます。政府が年金を受け取るのに必要な期間を10年にした狙いは何でしょうか?

水原恵理キャスター

水原恵理キャスター

山口聡シニア・エディター(8月14日放送)

山口聡シニア・エディター(8月14日放送)


■年金受給資格 短縮の狙いと注意点

「一言でいうと、無年金者をなくすということです。いま年金をもらえていない高齢者の救済です。説明にもあった通り、64万人が対象になります。それほど大きな額ではないですが、この人たちが新たに年金を受け取れるようになると、世帯、特に低所得者世帯にはプラスとなります」


水原:10年に短縮されたことによる課題や弊害はないのですか。

「一つの課題は、10年保険料を納めればそれでいいと考える人が出てこないかということです。原則として、40年間納めて満額が支給されるのが年金制度ですから、そこが非常に心配です」


水原:払い込み期間によって支給額にはどれくらいの差が生まれるのですか?

「自営業者の国民年金ですと、40年間納めた場合は月約6万5000円を65歳から受け取れます。これが、10年しか入っていない場合は月1万6000円にしかなりません。夫婦ともに自営業者だとしたら計3万2000円。非常に少ない額です。満額もらった場合は夫婦だと13万円になりますからだいぶ違います。ここをきちんと理解していないと、人によっては生活保護を受給するようになる可能性もあります」

■受給資格短縮で年金制度は大丈夫?

水原:年金の受給資格期間を10年に短縮して、日本の年金制度は大丈夫でしょうか?

「日本の公的年金は、20歳以上60歳未満の全ての人が加入する国民年金(基礎年金)と、会社などに勤務している人が加入する厚生年金の2階建てで、国民年金支給額の2分の1は税金で賄われています。国民年金の財源は保険料と税金で半分ずつ賄われているわけです。ですから、新たに国民年金を支給する人が出てくるといっても、その半分の財源はすでに支払われた保険料で手当てされるので、新たに工面しなければならないのは、あと半分の税金のところです。今回その額は約650億円といわれています。国は年金積立金から借りるなどしてこの650億円をなんとか調達しないといけないのですが、日本の公的年金制度は全体で50兆円を超える規模の支給をしているので、650億円程度が一時的に不足するようなことがあっても制度全体が急におかしくなるようなことはまず考えられません」

「それよりも心配なのは、先ほど申し上げた通り、『10年しか払わなくていい』と下手に思ってしまうと、保険料の納付率が下がりかねないということです。今でも65%ですが、これがさらに下がりかねません。特に若い世代は将来年金をもらえないんじゃないかという不安がありますので、払っていない人が多く、その人たちの保険料の納付率がさらに下がる懸念があります。今すぐに年金制度がどうこうなるというものではありませんし、今も既に多くの人が年金制度に頼って老後の生活を送っていますので、若い人も納めておくに越したことはないと言えます」

水原:とはいえ、納めた保険料に対する支給額は減少傾向にあります。年金をなるべく多くもらう方法はありますか?

■受給開始年齢繰り下げで増額も

「繰り下げ受給という方法があります。年金は原則、65歳から受け取ることになっていますが、これを、例えば70歳からなどと繰り下げることで年金額を増やせるのです。繰り下げは1カ月ごとにでき、繰り下げると1カ月あたりの受給額が0.7%増えます。1年間にすると8.4%、5年遅らせて70歳から受け取ることにすれば42%と、1.5倍弱ぐらいになるわけです」


水原:でも、実際は繰り下げよりも60歳に繰り上げる人の方が多いようですね。

「年金の受給は繰り下げも繰り上げもできます。今現在は繰り上げて早く年金をもらう人の方が統計上は非常に多くなっています。ただ、1カ月遅らせれば0.7%ずつ額が増えていくわけですから、遅らせた方が有利でしょう。65歳から本来の額をもらうのと、70歳からもらうのとでは、70歳から受け取った方が81歳以上生きれば得になるという計算もできます。

これからの時代、寿命はどんどん延びていきます。厚労省のデータでは、60歳まで生きた人は、男性の場合でさらに23年以上、女性の場合でさらに29年ぐらい生きるということになります。繰り下げて年金を受け取った方が結局もらった累計額は多くなりますから、その点をよく考えて、貯蓄をしておいたり働き続けたりと色々な方法で受給開始を遅らせるのが一つの手です」

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