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サッカーアジア杯、ベストの布陣でないと痛い目にあう

サッカージャーナリスト 大住良之

2011年1月7日から29日までカタールで開催されるサッカーのアジアカップ。日本代表のアルベルト・ザッケローニ監督は、今月下旬に代表メンバー23人を発表するが、難しい問題が山積している。

■50人の予備登録に「海外組」は11人

大会規定に従って、日本サッカー協会は12月6日に50人の「予備登録メンバー」を発表した。このなかから最終メンバー23人を決め、28日までにアジアサッカー連盟(AFC)に提出する。

50人の中心は、10月にアルゼンチン、韓国と親善試合をこなしたメンバーである。ただしDF田中マルクス闘莉王(名古屋)とDF駒野友一(磐田)の2人は、故障のため除外された。

「海外組」は11人。そのほかに、この冬の間にヨーロッパのクラブに移籍することが決定、または有力視されている選手が3人(MF家長昭博=C大阪→マジョルカ、MF細貝萌=浦和、FW岡崎慎司=清水)含まれている。

■近い将来に戦力になる可能性のある選手

今回、50人の予備登録メンバーが明らかにされたのは興味深いところだ。そのうちの29人は9月のパラグアイ戦とグアテマラ戦(原博実技術委員長が監督を代行)、そして先に述べた10月の2試合に招集されたメンバーだが、そこでは名前が挙がらなかったメンバーも21人含まれている。

その21人の大半は、就任以来、精力的にJリーグなどの試合を見てきたザッケローニ監督が、「近い将来に日本代表の戦力になる可能性がある」と判断した若手である。

なかでも注目されるのは18歳の攻撃的MF宇佐美貴史(G大阪)で、すでにU-19日本代表でも中心選手として活躍し、ヨーロッパのクラブからも熱い視線を注がれているストライカーだ。

技術、スピード、シュート力とも第一級。ことし1年間、G大阪のトップチームで経験を積み、課題だった守備もこなすようになった。

■長身センターバックの吉田

そのほかでは、オランダのVVVフェンロでプレーするDF吉田麻也が入っているのも目につく。高い技術をもつ22歳のセンターバックは身長187センチ。ザッケローニ監督がのどから手が出るほど欲している大型DFで、この次の14年ワールドカップ・ブラジル大会のときには36歳を迎える中沢佑二(横浜M)、33歳になる闘莉王の後継者として大きな期待がせられている。

フェンロは今季オランダの1部リーグで3勝1分け14敗。18チーム中17位と苦戦しているが、吉田はレギュラーとして活躍中だ(15日現在)。

今季、広島で大活躍したFW李忠成がはいっているのも興味深いところである。19日で25歳となり、「若手」とはいえない存在だが、最前線で体を張るタイプの選手で、エースの佐藤寿人が負傷欠場している間にポジションをとり、大きく評価を上げた。

■「2軍」なら手痛いしっぺ返し

日本サッカー協会は11月に中国の広州で行われたアジア大会にJ1クラブの主力クラスを外した21歳以下の代表を送り込み、優勝を飾ることができた。

しかし今回のアジアカップに、もし「2軍」のようなチームを送ったら、手ひどいしっぺ返しを食うのは目に見えている。出場各国が優勝を目指して最強チームを送り込んでくるからだ。

前回の07年大会は国際サッカー連盟(FIFA)の公式日程に入っておらず、ヨーロッパのクラブは選手を出す義務を負っていなかった。

しかし今回はFIFAの公式カレンダーに入れられ、クラブは選出された選手の供出を拒むことはできない(拒めばその選手はその間出場停止になる)。

オーストラリア、韓国といったヨーロッパに主力を出している国々もベストの布陣でこの大会に臨むはずだ。

当然、ザッケローニ監督も最強の布陣でという希望を持っている。だが、日本には「ヨーロッパ問題」とは別の大きな問題がある。天皇杯全日本選手権だ。

■天皇杯戦う選手は、ほとんどオフなしに

現在8チームが残り、25日に準々決勝、29日に準決勝、そして2011年元日に決勝戦が予定されている天皇杯。その選手たちは、ほとんどシーズンオフなしでアジアカップに臨むことになる。

準々決勝は鹿島-名古屋、福岡-FC東京、山形-清水、G大阪-浦和の組み合わせ。このうち50人の予備登録に、選手が入っていないのは福岡と山形の2クラブだけで、残りの6クラブに計20人もの選手が含まれている。

鹿島がDF岩政大樹ら4人、名古屋がMF金崎夢生、FC東京がDF今野泰幸ら6人、清水がFW岡崎ら3人、G大阪がMF遠藤保仁ら3人、そして浦和がMF細貝ら3人。

今季J1を制した名古屋から1人しか入っていないのは興味深いが、J2に降格するFC東京から最多の6人が選出されているのも非常に目を引く。

25日の準々決勝を最後にオフに入る選手もいるが、元日まで戦った選手は遅れてカタールに向かうことになるかもしれない。

■「ヨーロッパ組」の事情

ヨーロッパのクラブに在籍する選手にも悩みはある。DF長友佑都は所属のチェゼーナが降格の危機に立たされており、長友自身、1月にもセリエAの試合があるため、「できれば免除してほしい」という気持ちのようだ。

イングランドのレスターでプレーするMF阿部勇樹も同じだろう。ウインターブレークがなく、年末から正月にかけて、びっしりと日程が組まれているからだ。シーズン序盤の不調を脱し、順位を上げてきているときだけに、離れがたい思いがあるのではないか。

この冬に移籍が決まる選手は、新しいクラブに慣れ、力を認めてもらう時間を少しでも長くしたいところだろう。移籍早々1カ月間も合流しないというのは、選手として大きなマイナスに違いない。

■「ザック・ジャパン」のベースがつくられる

だが、このアジアカップは「ザック・ジャパン」の足固めとして非常に重要なチャンスである。

昨年9月に就任したザッケローニ、9月2日から7日にかけての代表の活動に帯同し、10月4日から13日にかけての活動では自ら監督としてトレーニングを課し、指揮をとった。しかし、いずれもわずかな期間の活動にすぎなかった。

今回は、決勝まで進出すれば約1カ月間を一緒に過ごすことになる。その間のトレーニングと試合で、ザッケローニ監督は彼の哲学や攻撃と守備の考え方を選手たちに伝え、同時に、選手たちの長所と短所、性格などを知ることができる。

来年は、7月にコパアメリカ(南米選手権)という長期的な大会のチャンスもあるが、今後につながる「ザック・ジャパン」のベースがつくられるのは、アジアカップが行われる1月のカタールでの1カ月間に違いない。

■現時点の最強のイレブン

だからこそ、今回のアジアカップには、今後の日本代表の中心となるべき選手が、全員参加することが望まれるのだ。

闘莉王、駒野は参加できない。中沢も故障をかかえており、辞退ということになるかもしれない。だが、それ以外は、ザッケローニ監督が必要と考える選手をそろえなければならない。

GKの軸はもちろん川島永嗣(リールセ)。DFは、右から内田篤人(シャルケ)、栗原勇蔵(横浜M)、今野、長友。MFは遠藤と長谷部誠(ウォルフスブルク)をボランチに置き、右に松井大輔(トム)、左に香川真司(ドルトムント)、トップ下に本田圭佑(CSKAモスクワ)。そしてワントップは森本貴幸(カターニア)。

■若手がどう食い込むか

こうした選手たちに絡むのはGKでは西川周作(広島)、DFでは槙野智章(広島)、森重真人(FC東京)、MFでは阿部、中村憲剛(川崎)、細貝、FWでは前田遼一(磐田)、岡崎らか。

そこにDF丸橋祐介(C大阪)、MF本田拓也(清水)、家長、乾貴士(C大阪)、宇佐美、FW李忠成、平井将生(G大阪)といった「新戦力」がどこまで食い込み、大会のなかで存在感を示すか。

「ベストの布陣」のなかに食い込むから、「若手」にとっても価値がある。

選手たちの切磋琢磨、そしてザッケローニ監督とのコミュニケーションのなかで、新しい日本代表が成長し、同時に4回目の優勝を手中にすることを期待したい。

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