SNSを悩ます「出会い系」問題の深淵
非出会い系の被害児童数は最悪水準へ

(6/6ページ)
2010/12/8付
保存
共有
印刷
その他

09年3月、ある「事件」がネット上を騒がせた。mixiに約300あった出会い関連のコミュニティーが、すべて忽然(こつぜん)と姿を消したのだ。

ミクシィはその3カ月前の08年12月、改正出会い系サイト規制法の施行に合わせ、「面識のない異性との性交、わいせつな行為、出会い等を主な目的として利用する行為」という項目を利用規約の禁止事項に加えたばかり。だが09年に入ってからも、出会い関連のコミュニティーなどに、異性との交際を求める書き込みが多数、残っていた。ミクシィは「管理者に警告のうえ、規約に従って削除した」とする。

ただ、警視庁が「出会い系サイトと同様の書き込みがある」として、大手SNSに異例の削除要請をした時期とも重なる。「放置すれば出会い系サイトと見なし、規制法の対象とする」。そんな暗黙のメッセージと取ったのか、いずれにせよ大人の健全な出会いを求めるコミュニティーが次々とネット上から消えた。

mixiで削除されたコミュニティーのなかには数万におよぶ書き込みがあった人気コミュニティーもあり、「やりすぎ」「出会いがないコミュニティーって意味があるのか」「削除の基準が判然としない」といった声が噴出したという顛末だ。

フェイスブックやツイッターには、出会いの機能も

「mixi大量削除のとき、18歳以上しか使わない前提で、業として出会いを仲介しているわけではないコミュを片っ端からつぶす姿勢はいかがなものかと思った。孤独な人こそ出会いや関係が欲しくてカルトとかマルチにはまる傾向にある。出会いを抑止しては、逆に犯罪や社会不安、反社会的活動を増さないか、と」

ネット上の規制や、健全化の問題に詳しい楠正憲氏は、こう振り返る。マイクロソフトで技術標準部部長を務める傍ら、総務省の「インターネット上の違法・有害情報への対応に関する検討会」など、IT関連の法制化に関わる数多くの国の会合に属してきた楠氏は、こうも語る。

「国内SNSを厳しく取り締まれば、"監視社会"を窮屈に感じるユーザーが自由を求めて海外のSNSへと移動してしまうかもしれない。国内に拠点を置かない事業者であれば、国内法は適用されず、犯罪捜査がかえって難しくなる懸念もある」

実際、5億人以上の会員を抱える世界最大のSNS、Facebook(フェイスブック)やTwitter(ツイッター)は今のところ、運営会社としての日本法人を設けていない。フェイスブックはプロフィル欄で、恋愛対象を「男性、女性」、参加目的を「友情、デート、恋愛、情報交換」から選択し、示す機能を提供している。さらに「独身、交際中、婚約中、既婚、複雑な関係、離婚」などの項目から現在の状況を選び、知らせる機能もある。

一方、すでに国内だけで1000万人以上もの利用者がいるツイッターには、特定の文字列を付けて投稿するとコミュニティーのように活用できる「ハッシュタグ」という機能がある。見知らぬ者同士が仲良くなるための「#followmeJP」「#followdaibosyu」といったハッシュタグが頻繁に使われており、「出会い系コミュニティー」ととれないこともない。

犯罪と法規制、成長とユーザーの自由

元来、SNSは人のつながりを基軸としたサービス。既知の友人、知人に加えて、見知らぬ者同士でも気が合えば次々とつながっていき、大きなコミュニティーへと育った。言い換えれば、SNSはコミュニケーションツール。基本的には、道具を何に使うかは利用者任せであり、利用者が生み出すコンテンツによって発展を遂げた。そこには少なからず、出会いの要素も貢献した。

ある大手SNSの関係者は、「犯罪の撲滅、被害の根絶を願う気持ちは警察と同じだが、健全な出会いや、出会いのコミュニティーを求める成年のユーザーに不便を強いているとすれば残念。本音を言えば『大人の出会い系のコンテンツがあって何が悪い』と言いたい」と複雑な心境をのぞかせる。

ネット上の男女の出会いを描いた洋画「You Got a Mail」や邦画の「ハル」が人気を博したのは、今は昔の話。犯罪と法規制、そして成長とユーザーの自由。対立する2つの極の狭間でグローバルの競争に立ち向かわなければならない。そんな歯がゆい状況に、SNS各社は追い込まれている。

(電子報道部 井上理)

  • 前へ
  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
  • 5
  • 6
保存
共有
印刷
その他

電子版トップ



[PR]