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村田兆治、「まさかり投法」で完投の美学貫く

スポーツライター 浜田昭八

捕手が投手の投げた球を"トンネル"するシーンを、何度か見た。ロッテの村田兆治が最も輝いていた1970年代の終わりごろ。フォークボールが捕手の両足の間をすり抜けた。

ワンバウンドする投球は胸に当てて前に落とすのが鉄則だが、捕手が反応する間もないほど鋭く落ちた。

日本プロ野球記録を持つ"暴投王"だが…

村山実(阪神)、野茂英雄(近鉄から大リーグへ)らフォークで有名な投手は多いが、捕手が捕球できずにトンネルしてしまうほど、村田の「高速フォーク」はピカイチだった。

日本プロ野球記録となる通算148の暴投を犯した"暴投王"だが、このうちの2割ぐらいは「捕逸」と記録してもいい球ではなかったか。

投球フォームにもすごみがあった。バックスイングで尻を思い切り打者に向けて突き出した。そこで"タメ"を作ってから、体に隠れた右腕を思い切り振り出した。

オノで大木を切り倒すような投球フォームは「まさかり投法」と名付けられた。

75、76年に2年連続で最優秀防御率

入団当初はノーコン投手だった。しかし、4年目の71年に試行錯誤して「まさかり」にしたら、球威が増した上に制球もよくなった。

まだ投手の役割分担がきちんと確立されていなかった時代。若くてスタミナのある村田は先発、救援に大車輪の活躍だった。

金田正一監督のもとで75年にセーブ王、75、76年に2年連続で最優秀防御率のタイトルを獲得した。76年の5完封を含む21勝、257イニング2/3で防御率1.82は、投手の仕事に厳しい金田監督も手放しで褒めた。

だが、入団15年目の82年に投手人生のピンチに直面した。2完封を含む4勝1敗の好スタートを切ったが、5月17日の近鉄戦に先発して1イニングを投げただけで降板した。2年ほど前から感じるようになった右ヒジの痛みが再発したのだ。

"勤続疲労"が招いた右ヒジ痛

76年から4年連続で200イニング以上投げ、1年おいて81年にはまた230イニング2/3も投げた。こうした"勤続疲労"が招いた故障だった。

当初は2週間ほど休めば復帰できると本人は思っていた。しかし、それは2年を超す治療とリハビリ期間を要する深刻な故障となった。

83年はプロ16年目にして初めて登板ゼロ。8月に渡米してスポーツ医学の権威、フランク・ジョーブ博士の執刀で手術に踏み切った。

当時は「ヒジにメスを入れた投手は復帰しても満足に働けない」と言われていたが、村田としては待ったなしの心境だったに違いない。

ジョーブ博士の手術を受け復活

手術は成功し、村田は見事によみがえった。84年8月に戦列復帰し、85年から本格的に参戦。4月14日の西武戦で2失点の完投勝利を飾った。実に1073日ぶりの白星だった。

これを皮切りに7月7日の南海戦まで11連勝した。その後、ペースは落ちたものの、17勝5敗の好成績を残してカムバック賞に輝いた。

復活した村田はヒジをかばった技巧派にならず、「まさかり投法」を貫いた。完投にこだわり、85年は24登板のうち10試合で完投した。

故障前ほどの過密登板はなかったが、日曜日ごとに登場して力投する「サンデー兆治」は感動的で人気を集めた。

89年には通算200勝をマークした。この年にも延長11回を投げ抜いての完投があった。「記録にこだわって投げているわけではない。ただ、完投だ、記録だと自分にプレッシャーをかけるのが、いい投球につながる」とたくましかった。

90年に引退、最終登板は"完封勝利"

90年に40歳で引退したが、この年の成績はユニホームを脱ぐ投手とは思えないものだった。オリックス相手の開幕投手に選ばれ、11三振を奪っての2安打1失点完投勝ち。最終登板、10月13日の西武戦では5回コールドながら4安打"完封"で10勝目を挙げた。

これ以上投げ続けると、日常生活にも響くと警告されての引退だった。故障を克服した適切な治療、たくましく復活した気力は後輩に大きな影響を与えた。

還暦を迎えて平穏な日々だが、OB戦などでは今でも豪快な「まさかり投法」から140キロ近い速球を披露している。

 むらた・ちょうじ 1949年広島県出身。68年、福山電波工高からドラフト1位で東京(現ロッテ)入団。83年の右ヒジ手術から復活し、90年まで投げて215勝177敗33セーブ、防御率3.24。最多勝、最多セーブ各1回、最優秀防御率3回。

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