2019年4月23日(火)

ビットコイン分裂危機 対立の背景とは
木ノ内敏久 シニア・エディターに聞く

2017/7/24 10:00
保存
共有
印刷
その他


小谷:仮想通貨ビットコインが分裂する可能性が高まり、複数の取引所が取引の一時停止を表明しています。なぜビットコインは分裂の危機に陥ったのでしょうか。仮想通貨に詳しい日本経済新聞の木ノ内敏久シニア・エディターに聞きます。まず騒動の全体像を押さえたいのですが、いったいどことどこが対立しているのでしょうか。

小谷真生子 メインキャスター

小谷真生子 メインキャスター

木ノ内敏久 シニア・エディター(7月19日放送)

木ノ内敏久 シニア・エディター(7月19日放送)


■「コア」対「マイナー」 対立の構図

「大まかにいうと、ビットコインのソフトウエアを管理する開発者たちと、ビットコインの取引を監視する業者という2種類の専門家集団が中心になって争っている構図です。このまま両者の争いに決着がつかなければ、8月1日にビットコインのシステムは2つか3つに"分裂"してしまう可能性があります。このため、国内の13社の仮想通貨取引所が一時的な取扱い停止を決めました。開発グループは『コア開発者』と呼ばれるボランティアの5人組で、ビットコインの創始者である『サトシ・ナカモト』という人物の後任を務めています。ずっとビットコインシステムを維持・管理してきた、まさにビットコインの『コア=核』となる人々です。この人たちがビットコインのソフトウエアを変更しようと、新しい規格を提案したことが騒動のきっかけです。彼らと対立する人々は『マイナー=採掘者』と呼ばれます」


小谷:「マイナー」とは、どういった人々を指すのでしょう。

「ビットコインの取引が完了するためには、第三者に取引を『承認』してもらわなくてはなりません。その承認を行っているのがマイナーです。世界中に数千いるといわれています。大抵が巨大なデータセンターを持つ組織化された企業で、その多くが中国に立地しています。マイナー達は作業の報酬として、10分ごとに新たに発行されるビットコインをもらっています。この一連の作業が鉱山の採掘に似ていることからマイナーと呼ばれるようになりました。現在、ビットコインは流通総額で4兆円を超える規模があり、仮想通貨で最大規模です」


小谷:コア開発者とマイナーの対立の火種はなんでしょうか。

■対立の「火種」 ビットコイン急騰

「今まではコア開発者の決定をマイナーも尊重して付いてきました。事情が変わったきっかけが、今年に入ってからのビットコイン価格の急騰です。日本では4月に改正資金決済法が施行され、仮想通貨が決済手段として認定されました。法整備された安心感からかビットコインに日本人の個人マネーが流入し、6月には年初の3倍という異常な高騰をみせたのです。こうして取引が増えたことにより、決済の処理に時間がかかったり、手数料が急激に上昇するような問題が起きたりするようになりました。利用者からは当然、不満の声が出てきます。このため、コア開発者が処理能力を高めるためのアップデートを提案しましたが、承認手続きで得られる手数料収入が減ることを危惧したマイナーが反発。別の処理方法を提案して、両者が対立することになったのです」

小谷:和解策は出てないのでしょうか?

「お互いの主張を汲んだ折衷案も出ています。しかし、期限までに両社が折り合えず、規格のアップデートが8月に実行されてしまえば2種類、下手をすると3種類の違ったビットコインが並び立つ事態になってしまいます」

小谷:実際に分裂すると、どういったことが起きるのでしょう。

■仮想「通貨」 分裂後の見通し

「何かの買い物にコインを使っても、その取引を拒否されたり、取り消されたりする可能性が指摘されています。また、手持ちのビットコインが所有者の知らぬ間に別のビットコインに置き換わる可能性もあります。実際、8月1日以降にどんな事態が起きるのか専門家でも正確には予想しかねているのが実情です。普通の投資商品にひき付けて考えると問題の大きさが想像しやすいかもしれません。たとえば外貨預金だったら、投資していた米国ドルがある日突然、同じドルはドルでもニュージーランドドルやカナダドルに変質してしまうことはありません。もちろん、普通の金融商品ではこんなことは起きません。ところが電子情報の仮想通貨では、規格の変更によって全く別の代物に変質する可能性があるのです。いくつもの取引所がXデーの8月1日を控え取引停止を表明しているのも、利用者の保護のために妥当な対応だと思います」

小谷:他の通貨では通常、2種類に分裂するなどということは考えられないわけですね。今回の問題はビットコインに限ったことですか。

「そうではありません。他の仮想通貨も分裂する可能性が全くないわけではありません。仮想通貨で第2位の規模を持つ『イーサリアム』も、経緯は異なりますが一度分裂して大混乱が起きました。『通貨』という聞きなれた呼称に目を奪われがちですが、仮想通貨の本質は本物の通貨とは全く異なるものです。ビットコインは米国ドルや日本円のように国家や中央銀行といった責任ある管理者が一元的に管理していません。マイナーなど利用者全員で取引を相互監視することで中央銀行が不要なシステムが実現したのですが、コミュニティー内部で路線対立が起きたときにそれを調整する絶対的な存在がいません。今回は、国家や中央銀行といった管理主体がない仮想通貨ならではの課題がまさに浮き彫りになった形といえます」

小谷:では消費者はこういった新しい金融商品にどう対応すればいいのでしょうか。

「仮想通貨を法的に認めた4月の改正資金決済法の施行をきっかけに投資を始めた人も多いと思いますが、これまでの金融関連商品とは全く違う種類のリスクを潜在的に持っていることを理解した上で投資することが必要です。2009年に誕生した仮想通貨はまだまだ法整備も甘い部分があり、偽の仮想通貨をつかませる詐欺事件など別の問題も起きています。市場を健全に発展させていくためには、仮想通貨取引所を運営する民間業者が魅力だけを言い募るのではなく、危険性を利用者に啓蒙し、仮想通貨全般への理解を深めていく必要があると思います」

日経プラス10のホームページ

番組は日経電子版、テレビ東京ビジネスオンデマンドで配信しています

春割実施中!無料期間中の解約OK!
日経電子版が5月末まで無料!

保存
共有
印刷
その他

電子版トップ



[PR]

日本経済新聞社の関連サイト

日経IDの関連サイト

日本経済新聞 関連情報