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アマゾン本社で見た次世代の企業経営

村山恵一・コメンテーターに聞く

水原:5月、株式上場から20年を迎えた米国のアマゾン・ドット・コムの株価が初めて1000ドルを突破しました。時価総額でも世界のトップ5入りを果たしたアマゾンの強さは一体どこにあるのでしょうか? 世界のIT(情報技術)企業の取材を続けている日本経済新聞の村山恵一コメンテーターに聞きます。村山さんは先日、アマゾンの本社がある米シアトルを訪れ取材をされたそうですね。

現地取材から見えたアマゾンの企業経営

「1週間ほど行ってきました。アマゾンといえば、やはりネット通販事業ということで、まずはフルフィルメントセンターと呼ばれる倉庫を訪れました。取材したフルフィルメントセンターは2014年に開設され、家電や日用品などかさばる商品を扱います。欠かせないのが数百台のロボットです。このロボットたちは商品が積まれた重い棚を、必要なとき、必要な場所に自動で運びます。棚の商品を出し入れするのは従業員ですが、これにより従業員は倉庫内を歩き回らずに済みます。つまり、通路を確保する必要もなく、同じ広さの伝統的な倉庫に比べるとスペース効率が5割よく、ロボットは点検時間を除き働き続けることができるため、フルフィルメントセンターは1日20時間の稼働を維持しています。非常に効率的です。このように自動化されたフルフィルメントセンターは世界に25あり、合計8万台のロボットが稼働しているそうです。アマゾンでは人と機械のコラボレーションで大量の商品をさばき、通販の『早い・安い』を支えているといえます」

水原:他に今回の取材で村山さんが注目されたポイントはどこでしょうか?

「アマゾンはネット販売で得たデータを基に厳選した本を売る『アマゾン・ブックス』というリアル店舗を全米で7店舗展開しています。私が訪れたのはシアトルにある1号店です。ネット通販のアマゾン・ドット・コムでのレビューや評価を表す星の数なども店頭に掲示されています。コーナーも色々あり、星が4.8以上の本のコーナー、レビューが1000以上ついた本のコーナーなど、データに基づいた品ぞろえをしているのが特徴です。本だけではなく、話しかけて操作する人工知能(AI)スピーカーのアマゾンエコーや、電子書籍のキンドルも並べられています。電子書籍と実際の本を見比べることで、どちらがその本に向いているのかを比較することもできる、そんな仕組みになっています」

水原:アマゾンが他のIT企業と違うのはどういったところでしょうか?

ネットとリアル 事業モデル競争

「例えば先日、米国のヤフーが中核事業の売却を発表しました。ネット企業の草分け的存在としてインターネット黎明期を支えたヤフーですが、ネットの殻から抜け出すことができずに23年の歴史に幕を閉じました。一方のアマゾンですが、ネット通販の世界にとどまらず、AIスピーカーを開発したり、リアル店舗を運営したりと、型破りといいますか、ネットとリアルをまたにかけて事業革新をもくろむ『融通無碍(むげ)なところ』が目を引くと思います。変化率の高さが他社との違いといえるでしょう」

水原:そういった変化率の高さや型破りな発想は、どうやって生まれてくるのでしょうか? そういった環境があるのでしょうか?

「やはりアマゾンの創業者であるジェフ・ベゾス最高経営責任者(CEO)の存在が大きいと思います。4月、株主に宛てた手紙に『大組織の内部にどうデーワン(1日目)の活力を保つか』と書きました。巨大でも鈍重ではいけない。大企業の地位に安住することを戒め続けています。最近では、1.5兆円という巨額を投じ米国の高級スーパー『ホールフーズ・マーケット』を買収する計画を発表しました。おそらくリアル店舗と得意とするデジタル技術をドッキングして新たな価値を生む、そんな戦略だと思いますが、そういう斬新な試みを絶やさない経営がアマゾンの強みになっているのではないかと改めて思います」

水原:そのホールフーズですが、買収により今後、レジなし店舗「アマゾンゴー」のようになっていくのですか?

斬新な企業経営 実験会社・アマゾン

「そういった応用の可能性もあると思います。アマゾンは生鮮食品の販売にかねて力を入れていますが、なかなか決定打が得られていない。ホールフーズはそこが得意ですし、アマゾンは自分の持っているデジタル技術とうまく融合することで活路を見いだそうとの狙いがあるのではないでしょうか。今、IT業界では自動運転だったりAIだったり、色々なことをやっている会社が多いですが、アマゾンの場合は非常に振れ幅が大きいといいますか、非常に大胆な動きが目立つと思います」

水原:先ほどジェフ・ベゾスCEOのお話がありましたが、アップル創業者のスティーブ・ジョブズ氏と比較するとどうでしょう。

「スティーブ・ジョブズさんも最新のテクノロジーを、人々の生活にわかりやすく当てはめてライフスタイルやワークスタイルを変えることが非常に得意な経営者だったと思います。その後を引き継いで業界の盟主といわれるのは誰かというと、候補はたくさんいると思いますが、私個人としてはジェフ・ベゾスさんを筆頭候補に挙げたいと思います。実際にそういった動きを足元でしているのではないかなと思います」

番組は日経電子版、テレビ東京ビジネスオンデマンドで配信しています

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