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退職金受け取りは一時金か年金か

田村正之・編集委員に聞く

小谷:今年度、3年ぶりに公的年金の支給額が引き下げられ、老後を支える役割が増しているのが退職金です。しかし退職金は受け取り方によって金額が大きく変わるといいます。田村正之・編集委員に聞きます。どんな選択をすれば良いのでしょうか?

受け取り方法は3パターン

「退職金の受け取り方法には3つのパターンがあります。(1)全額を一括で受け取る方法(2)全額年金として会社が決めた期間と運用利率で運用したものを分割で受け取る方法(3)一時金と年金方式の併用--です。(3)の場合、会社によってその比率を変えられることもあります」


小谷:実際、どのくらい受取額に差が出るのでしょうか?

「60歳から10年間、年金を分割で受け取った場合と一括で受け取った場合の総収入を試算しました。前提条件は(1)60歳で退職金2000万円(2)60~64歳は働いて年収が350万円(3)65歳から公的年金で年220万円--です。先ほどの3パターンで比較すると、年金の場合は期間10年・運用利率2%、併用の場合は一時金と年金が半額ずつ。この結果、額面ベースでは全額年金が一番多くなります。なぜなら会社が2%でずっと運用を続けてくれるため、一時金に比べ多くなります。その差は、全額一時金と比べると、210万円増えます。

小谷:全額一括で受け取るのが、この中では一番少ないんですね?

手取りでは一括に軍配

「そうです。年金では会社が運用してくれるので、その分だけ額面では増えます。ただ、これが手取りになると結果は逆転します。手取りベースでは全額一時金が一番多くなります」

小谷:どうしてそうなるのですか?

「ポイントは、税金と社会保険料の負担額に差があることです。まず税金の仕組みから見ていきたいと思います。一時金で受け取る場合、退職所得という所得になります。勤続年数によって異なりますが、非課税枠が増え続け、それを超過した分についても課税対象額が半分になります。非常に優遇が大きいです。例えば大卒22歳で入って60歳まで38年働くと最大2060万円まで非課税枠があります。

年金にも公的年金等控除というのがありますが、これを超えた分は雑所得になります。ただ多くの場合、公的年金でこの非課税枠を使い切ってしまっていますので、これに加算して退職金の分を年金で受け取ると税金がかかってしまいます。今回の試算では、全額年金受け取りの税負担額は、全額一時金に比べおよそ240万円多くなってしまいます」

小谷:つまり全額一括で受け取る場合は、税金が少なくて済み、年金で受け取ると税金がかかりやすい。という考え方でよろしいでしょうか?

社会保険料の違いにも注意

「そうです。あまり知られていませんが、さらに社会保険料も違ってきます。一時金でもらった場合、社会保険料は掛かりません。年金で受け取ると、国民健康保険や介護保険料の対象になります。これは所得額が増えれば大きくなります。税金に加えて手取り額を減らしてしまいます」

小谷:やはり全額一括で受け取るのが得なんですね?

「基本的には一括受け取りの比率を高くするほうが、手取りベースでは有利な場合が多いです。ただ、条件にもよります。少なくはなっていますが、運用利率3%というような高い利率で運用してくれたり、年金の受取期間を15年にしてくれる会社であれば、税金や社会保険料を引いても手取りで年金が有利になる場合があります。

また、会社によっては終身年金の仕組みが残っているケースもあります。その場合は終身で受け取ったほうがよいと思います。自分の会社の仕組みをよく調べることが大事です。

それ以外にも気を付けることがあります。一時金でまとまった額が入ると、夫婦で海外旅行に行ったり、住宅をリフォームしたり、つい無駄遣いしてしまう人が多いんです。資金管理に自信がない人は、多少手取りで不利でも年金受け取りを選択したほうが、こうした無駄遣いも減るし、定期的に安定収入を得られます。そういうことも含めて判断することが必要だと思います」

番組は日経電子版、テレビ東京ビジネスオンデマンドで配信しています

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