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高橋大輔「格好いいか、悪いか。流れと表現力を磨く」

 フィギュアスケートの2010~11年シーズン開幕まで1カ月を切り、現在、選手たちは追い込み練習のまっただ中だ。バンクーバー五輪銅メダルの高橋大輔(関大大学院)も、プログラムの完成度を高めるため、8月から練習に一段とスイッチが入りました。今やるべきことは「とにかく滑ること」と言います。
高橋大輔(右)自ら振り付けしたプログラムをアイスショーで披露した(8月、公開リハーサル)

テンション最高

今はいい感じで練習できていると思います。僕の場合、テンションが上がれば集中できるんです。どうやって上げるか? それは自分でも分かりません。勝手に上がってしまうんです。逆にどうしたら疲れてしまうなど、自分のペースは分かってきました。疲れるとイライラして機嫌が悪くなってしまいます。

今だから言えるのですが、去年は12月ごろまで本当にひどかった。いろんな人やモノに八つ当たりして、恥ずかしながら、携帯電話を壊しそうになったこともあります。

特にシーズン中は、自分でリラックスしているつもりでも実際には緊張していたようで、日常のささいなことでも神経質になっていました。

チーム全体に"あうんの呼吸"

今年はコーチらと一緒に練習計画を組むようになって3年目。「こう言ったらこうなる」といった"あうんの呼吸"がチーム全体にあるのは大きいですね。去年のようなことにはならない……と思います。

4月から7月までは振り付けやショーに支障がないよう、軽く氷に乗る程度でした。2日間滑らないと少し違和感は出るけれど、それはそれで問題はありませんでした。

でも、試合が近づくとそうはいかないので8月から1日最低3時間は滑っています。本当は4時間はやりたいけれど、日本のリンク事情ではなかなかそれだけの時間が取れません。けれども、内容が濃ければOKだと思っています。

8月の間はジャンプやステップで何回転ぼうが気にしません。とにかくプログラムを通して滑ることに意義があるという感じです。8月の北海道合宿では貸し切りの時間が多くとれたので、ガンガン滑り込みました。ジャンプやスピンなどの技術練習もしているけれど、まずは体が勝手に動くまでプログラムを染み込ませることが大事なんです。ジャンプは9月から本格的に詰めています。

アイスショーの公開リハーサルで拍手に応える高橋大輔(左)

通し練習の方がいい

僕は基本的に、1日1回ずつショートプログラム(SP)もフリーも通して練習した方がいいと思っています。

ちなみに、このように毎日通すのは米国式で、1週間に2回くらい通すのがロシア式。どちらの場合も、残りの時間はパート練習に当てます。プログラムをいくつかに分割して、その部分だけ何度も曲をかけて細かく突き詰める。この練習方法はニコライ・モロゾフコーチから学びました。細部を追求する作業は面白いけれど、日本でやるのはちょっと難しいですね。

僕は関大リンクを優先的に使わせてもらえているので恵まれていますが、多くの選手はそれほど自由にリンクを使えません。1日に2回、音楽を通しでかけて練習できれればいい方というのが現状だと思います。

つながりが大切

僕が思う男子フィギュアは簡単に言えば、「格好いいか、悪いか」だと思います。形は大事だけれど、それ以上に心をわしづかみするような演技ができるかだと思います。演技要素にはスピンやジャンプなどがありますが、そこだけで差をつけるには限界がある。基本的に全体の流れ、つながりが大事だと思います。

全体をつなげるには、体のライン、ポジションの美しさ、つま先まで意識した姿勢……といったものまで必要です。そうしたことを反復練習で身につけます。滑る曲が変われば、意識するポイントも変わるので、毎年プログラムの滑り始めに「これって変?」と、長光歌子コーチに聞いています。

「変だ」と言われたら、「じゃあ、こうしようかな」って。僕はあまり鏡とかは見ません。動きをイメージしながらやってみて、コーチに意見を聞いて、調整していきます。バレエやダンスを習うとフィギュアに役立つのだろうけれど、僕はほとんど教わったことがありません。

アイスショーの公開リハーサルでの高橋大輔(中央)

目立ってナンボ

しかし、これだけでは「アッ、きれいだね」の一言で終わってしまう恐れもあり、観客に十分には訴えられません。それにプラスして必要なのが「表現力」です。これはもう気持ち次第。大切なのは「恥ずかしいという気持ちをなくすこと」ですかね。

日本人は派手なことをして目立つと、周りの目が気になる控えめなところがあります。でも、世界では目立ってナンボというか、目立って自己主張しなければ生き残れません。

僕は比較的早い段階で、恥ずかしさを吹っ切れたけれど、今でも周りの視線が気になって、気持ちがいまひとつ乗り切れない時もあります。でも、今季のSP「マンボ」の振り付けは、振付師とリンクが貸し切り状態で集中してできました。

表現力が大切といいましたが、感情移入しても、自分に酔うことはありません。自分に酔ってしまったら伝わりません。だから演技中、自分がきれいに見えているかなんていうことは考えていません。

常に肌で感じながら演技

「どれだけ曲のイメージを伝えられているか」「どの表情がこの表現に合うか」「観客がこう反応しているから、僕はこう返そうか」……。そういったことを常に肌で感じながら演技しています。これは頭で学ぶことでなく、本人がそうしたいかどうかにかかっている問題だと思います。

今年の曲は1つ、2つ年齢を重ねたものを選択しました。それを演技でも表現したいと思っています。あくまで僕の意識であって、見ている皆さんに押しつけるつもりはありませんが……。でも、分かって頂けたらうれしいです。

スケートは遊びそのもの

子供のころ、僕にとってスケートは遊びそのものでした。休日は朝10時にリンクへ行って夜の7時45分まで滑っていました。途中、屋外でも遊びましたね。帰宅して夕飯を食べて、また深夜営業のリンクに行って滑る。

札幌市内で練習を公開した高橋大輔(8月)

小さいころは細かいことは関係なく、ひたすら楽しんで氷に乗っていたことは本当に良かったと思います。ただ、基礎をきちんと身につけてなかったので、後で別の苦労はしましたけれど。

中学2年で本格的な指導を受けるようになって、ジャンプの跳び方だけでも、いろんな人がいろんなことを教えてくれました。

自分に合うものだけを選ぶ

僕はとりあえず教わったすべてのことをやってみます。どのやり方が自分に合うかはやってみなければ分からないし、体も日々変化するからです。

ただし、教えてもらったものの中から自分に合うものだけを選ぶことが大切。それが成長の鍵だと思います。僕は昔から、自分に合う、合わないが、なぜかすぐ分かるタイプだったようです。

すべて聞き入れるのはいいけれど、それを自分で消化しきれないタイプもいます。だから、自分に合わないものは捨てること。こうした取捨選択だけは自分で判断するしかありません。

もっとリンクを

今の子どもたちは昔のように氷の上で遊ぶ時間が少なくなった気がします。でもそれは、日本のリンク環境に原因があるのかもしれません。

僕の小さいころはフィギュアは人気がなかったので、いくらでも滑れました。しかし今は、せっかくフィギュア人口が増えたのに、リンクは増えたという話はとんと聞きません。

自由に滑れる環境がないんですね。日本にもっとリンクができることを、切に願っています。

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