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右ヒザ痛に苦しむ上田桃子、その決断と今後…

ゴルフライター 月橋文美

6月15日に24歳の誕生日を迎えた上田桃子。その姿が痛々しい。今年初めから違和感と痛みを訴えていた右ヒザが、ついに円板状半月板損傷と診断を受けた。当面は患部周りの筋肉をトレーニングで鍛えてヒザの動きを保護する方法を選択した、という。この判断が上田のゴルフに、人生に、どんな影響を与えるのか。今こそ勇気ある"状況判断"が求められている。

1月のトレーニングの時から痛み

「治すなら手術しか道はない、とも言われたけれど、手術をしたら必ず治るとも限らないというし……。100%良くなるというのなら、半年間、棒に振ってでも手術するんですけれど……」と上田。2月の米ツアー開幕時からたびたび痛みを感じていたと話していたが、「実は1月のオフのトレーニングの時に、すでに少し違和感があって、トレーナーさんに相談していました」と明かす。

上田の今季9戦目、4月30日から5月2日に行われたサイバーエージェント女子ゴルフでは、ついにテーピングでがっちり固めた右足で戦わなくてはならない状態になっていた。その翌週のワールド・サロンパス・カップでは、さらにサポーターをする姿も見られ、症状が悪化しているように映った。

ヒザの痛みが成績にも影響

それでも直後に再渡米。しかし、参戦した米ツアー2試合は5月13-16日のベルマイクロ・クラシックが49位タイ、同20-23日のサイベース・マッチプレー選手権が2回戦敗退の17位タイで3日目に進めず、ヒザの痛みが成績にも影を落としているのは明らかだった。

帰国して臨んだヨネックス・レディース(5月28日-30日)では、2日目に「前はそんなにじゃなかったけれど、今は立ってるだけでも痛い。休養を考えたいと思う。試合が終わったら医者に行こうと思っています」と語り、翌日の棄権の可能性さえ示唆。しかし最終日は気温も上がり「朝起きたら思ったより状態がよかった」といって出場。71で回って結局19位でフィニッシュした。

「下り坂では痛み」

とはいえ、「やっぱり下り坂のところでは痛みが出た。かばっているせいで背中にも張りや痛みがきているし、このままごまかしてやってもファンの人に見せるゴルフはできない。それが一番つらいので、今週中に5人以上の医師やトレーナーの診断をあおぐつもりです」と話してトーナメント会場を後にした。

上田がヒザの故障とは関係なく調整週に充てることにしていた週の6月3日、マネジメント事務所から発表された診断結果は『右ヒザ円板状半月板損傷』。前週、「どうも、もともとの半月板の形がよくないらしい」と話していた意味が、ここで明らかになった。

手術はせずに…

円板状半月板とは通常は「三日月形」をしている半月板が「半月状」や「満月状」になっているもの。半月板が正常より大きくて厚いために、大腿(だいたい)骨と脛骨(けいこつ)の間にはさまれて衝撃を受け、痛みやすく、損傷が起こることがあるという。日本人には多く見られ、しばしば手術が必要となる症例だそうだ。

上田は「いろいろ考えましたが、手術はせず、トレーニングで周りの筋肉を鍛えて状況を改善していく方法をとろうと思います。できるだけうまくこの膝と付き合って、とりあえず今シーズンいっぱいはこのまま戦おうと決めました」と、説明した。

翌週のサントリー・レディースでは、大会期間中にも注射を打ってもらうなどしながら、12位タイ。「前々週のヨネックス・レディースの時よりはぜんぜん痛みもなく、サポーターをしてると動きが抑えられるので違和感はない」と話していたが、表情はいまひとつ冴えないまま。「6割ぐらいのスイングで、ラインを出していくショットをすれば、負担もこない」と作戦も立てたものの、それがまた新たなストレスを生んでいるように見えた。

かばえばスイングを崩す可能性も

起伏のあるコースを歩けば、それだけでヒザに負担がかかるだろう。ヒザをかばって歩き続ければ、腰や股関節、足首やふくらはぎ、太ももなど、別の場所に負担がかかり、違う故障も生じかねない。さらに言えば、スイングそのものを崩す可能性は大きい。

3年前、宮里藍がスランプに陥ったときにも、ちょっとした故障があった。飛距離アップを目指して肉体改造を図り、体脂肪を落とそうとして体重を減らした直後に、まずは手首を痛めた。その後、左ヒザ裏を痛め、ランニングなどのトレーニングができなくなり、飛距離は低下。無理してクラブを振ろうとしたために、スイングも崩してしまった。

大山志保はツアー離脱余儀なくされる

大山志保の例はもっと悲惨だ。一昨年の年明けからヒジを痛め、まず「従来の半分以下しか練習ができない」というジレンマに苦しんだ。「1月に左ヒジに痛みが出て、次第に両腕へ。6月下旬に打った注射で左はおさまったけれど、今度は右が……」と、両ヒジの故障を交互に繰り返し、米ツアーQスクール受験のため、医師から「年に4回が限度」と言われた強いブロック注射を5度打った。

しかし、そこまでして行った翌年の米ツアーだが、開幕間もない3月にはヒジの痛みが再発。我慢して戦ったものの、8月に知らず知らずのうちに負担をかけていた首に激痛が走り、優勝争いの中にいた最終日のスタート前に涙の棄権。その2週後、左ヒジ関節内じん帯損傷との診断を受け、ツアー離脱を余儀なくされた。

公傷制度の適用を受け、12月中旬に内視鏡手術。復活を目指しているが、今年5月半ばの段階でようやくショートアプローチ程度の振りが痛みなくできるようになったところだという。

プロにとってケガはつきもの

プロスポーツ選手にとって、ケガはつきものともいえる。ゴルファーにとって、道具の著しい進化が体に影響を及ぼしているのかもしれない。もう20年以上前の話になるが、初めてメタルウッドを打ったジャンボ尾崎が、こう言っていたそうである。「アマチュアはいいけれど、俺たちプロは毎日何百球とボールを打つ。このクラブでそれを続けていったら、必ず手首かヒジか首を痛めることになるだろうな」

無理することは美徳ではない

そのジャンボの"予言"が今、現実の問題となっているような気がする。多くの選手たちがゴルフコースで戦う以前に、自らの体と闘っている。故障をしないための準備も必要だが、故障してしまった後の対処はもっと大事だ。無理をすることは決して美徳とはいえない。

上田の場合は道具に起因する故障ではないが、ヒザをかばいながらのゴルフは、彼女自身を追い込んでいるように映る。手術回避の判断に異論を唱える気はないが、休養は考えていかなければならないのではないか。スケジュールを再考して、日米間の移動回数を減らし、当面は3週以上の連戦を避けたトーナメント出場で体のケアにつとめることが、上田の言う「膝とうまく付き合う」ことになるのではないだろうか。

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