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中南米ビジネス、一過性にせずに 工藤章氏
ラテンアメリカ協会専務理事

2016/9/20 3:30
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リオデジャネイロ五輪が盛り上がり、日本では久々に中南米が脚光を浴びた。報道では治安の悪さなどネガティブな面が過度に強調されがちだったが、中南米は天然資源が豊富で人口も増加が続いている。経済成長の潜在力は高く、日本経済の将来にとっても欠かせない地域となる。

にもかかわらず我が国は官民とも中南米に対する動きが鈍いと言わざるを得ない。日本には中南米専門のシンクタンクが存在しない。そのため欧米やアジア、中東など他の地域に比べると情報の入手が難しい。2000年代に日本で頻繁に政権交代が起き、首脳交流が途切れたことも痛手だった。その間、中国は着実に存在感を高めてきた。

短期的な視点で経営判断を急ぐ日本企業にも問題がある。1960年代から70年代にかけ、中南米は重要な輸出市場で、日本企業の存在感は大きかった。家電から自動車、素材まで様々な日本製品が飛ぶように売れ、投資も含め各社は次々と現地に進出した。

ところが80年代の中南米での経済危機や90年代の日本のバブル崩壊を経て、多くの企業は撤退した。中南米経済が低迷している間も、長期的な視点から事業を続けた欧米企業に大きく差をつけられた。

多くの日本企業は地理的・文化的に近いアジアに目を向けている。だが将来の人口動態を考えると、グローバル競争で勝つために中南米攻略は避けて通れない。中南米市場だけでなく、地理的に近いアフリカ市場を攻める拠点にもなり得るからだ。

日本は最近、官民一体で人材育成に取り組み始めたが、長期的なプランが必要だ。大学や企業は留学生を受け入れて知日派を育てる。日本からも若者を積極的に送り、現地事情に精通した専門家を育成すべきだ。企業は中南米で経験を積んだ社員を安易に他の地域に回さず、中南米のスペシャリストとして息長く活躍する道を作る必要がある。

近年は自動車業界を中心に対メキシコ投資が増えている。アルゼンチンでは親ビジネスのマクリ新政権が誕生した。ビジネス環境は総じて改善傾向にあり、中南米に注目する企業は増えるだろうが、今度こそ一過性のブームに終わらせてはいけない。

リオ五輪やパラ五輪では日本選手団への声援が目立った。中南米諸国は日本との間に不幸な歴史を持たず、対日感情は良好だ。物理的な距離だけを理由に遠ざけてしまうのはあまりにもったいない。

 「私見卓見」は有識者や読者の意見を紹介するコーナーです。個性的な洞察や時代を読むヒントになる投稿や寄稿を紹介します。経済に限らず、政治、国際、企業、社会など幅広いジャンルの問題を取り上げ、日本経済新聞朝刊「経済教室」面と電子版に掲載します。
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