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迫る「多死社会」 最期をどう迎えるか
石塚由紀夫・編集委員に聞く

2016/8/22 10:07
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水原:「多死社会」という言葉をご存じでしょうか。日本はいま、死亡する人が多くなり、人口が少なくなっていく社会を迎えようとしています。去年、年間の死者が130万人を突破しました。さらに2039年には、その数が167万人に達する見込みです。ほかの世代に比べて突出して人口が多い団塊世代が人生の終わりの時期を迎えるためです。戦争など特殊な事情を除き、短期間でこれほど死亡者が増えるのは世界的にも珍しい現象です。
 高度成長を支えた団塊世代がもたらす「多死社会」。人生の最期をどう迎えるかを巡って様々な課題が指摘されています。この問題を石塚由紀夫・編集委員に聞きます。亡くなる人が急増する多死社会ではどんな課題が考えられるのでしょうか?

水原恵理・サブキャスター

水原恵理・サブキャスター

石塚由紀夫・編集委員(2016年8月16日放送)

石塚由紀夫・編集委員(2016年8月16日放送)


■年間死者160万人時代

 「日本経済新聞で今年2月から多死社会に関する連載を掲載しています。近い将来にやってくる年間160万人の人が亡くなる状況に、社会構造や個人の意識が追いついていないという問題意識からスタートしたものです。例えばどこで『死ぬか』ということですが、水原さんは遠い将来、自分が亡くなるとき、どこで最期を迎えたいと思いますか?」


水原:暖かい南国で迎えられたら幸せですね。

 「いいですね。自然の中で静かに死を迎えられたら幸せなことだと思います。ではこちらをご覧ください。アンケートで『どこで最期を迎えたいか』という希望を聞きますと、半数以上の人が自宅で迎えたいと答えています。ところが実際は、病院など医療機関で亡くなる人が8割を占めています。1950年代には8割以上の人が自宅で亡くなっていましたが、だんだんと逆転してしまいました。現在、自宅で亡くなる方は約10%強です。自宅で亡くなることが難しい時代になってきています」

水原:自宅で亡くなることが難しいのはなぜですか?

■医療の進歩が阻む「自宅で最期」

 「1つは、自分の死が近づいたときにどこまで医療行為を受けるのかという、いわゆる『終末期医療』の問題があります。医療機関での治療や検査をどこでやめ、自宅に戻ると決断するのか。医療技術が進歩した結果、様々な疾患が見つかりやすくなり、病状が進んでもできる治療が以前より格段に増えました。回復の可能性がわずかでも、医師は延命治療の選択肢を示します。医師だって患者を死なせたくありません。『こうすればまだ生きられるかもしれない』と医師に示されたときに、家族が『やめてください』と言えるかどうかはとても難しいのです。結果的に病院で亡くなるケースが増えていきます」

水原:自宅で最期を迎えるためには、事前に家族に意思表示しておくことが大事ということですよね?

 「とても重要だと思います。アンケートでは、終末期医療について家族と話し合っている人は、『一応話したことがある』という回答を含めても4割程度にすぎません。事前に話し合うといっても、いつ話し合えばいいのかも難しいところですし、話したところで、実際に病気が進めば本人の意思も変わるかもしれません。延命治療をどうするかについて本人と家族で話ができるかどうかは、その場にならないとわかりません」

水原:自分がいざというときに延命治療をするかどうかを家族と話しておくというのは、意外と簡単ではないことなんですね?

■日本人の死生観に変化

 「ただ、最近になって、日本人の死生観に変化が出ていると思われるデータもあります。主な死因では2000年代後半から老衰が急増しています。これは、延命することを自らやめ、検査しないで亡くなる人を含んでいる数字です。『無理に延命するよりも、自然に死んでいきたい』という考え方が広がりつつあることを示しているように思われます。取材の中でも、主治医に検査入院を勧められてもそれを断り、自然死を選んだ高齢者の事例を聞きました。難しさはありますが、やはり自分の意思を家族と話し合っておくことは大事だろうと思われます」

水原:自宅で最期を迎えるには、本人の意思だけではどうしようもないこともあるように思えます。

 「取材を通して、自宅で亡くなるために必要なものが見えてきました。それは本人の意思に加え『介護力』です。特に家族の支えです。見守っている家族が同居していたり、近くに住んでいたら心強いです。また、自宅まで訪れて診療したり、最期をみとってくれる訪問医の存在も欠かせません。さらに訪問介護や訪問看護が可能な環境が居住地域にあるかどうかも重要です」

水原:実際、こうした条件は整えられるものなのでしょうか?

■自宅に近い環境の提供広がる

 「まだまだ医療、介護の環境が追いついていません。実は全国の病院や診療所で在宅でのみとりを実施している医療機関は全体のわずか5%しかありません。そんな中、自宅に近い環境で最期を迎える動きが広がっています。例えば『ホームホスピス』と呼ばれる施設がありますが、これは要介護や病気療養で一人暮らしが困難になった高齢者が、スタッフのケアを受けながら、共同で暮らしている場所です」

水原:老人ホームとは何が違うのでしょうか?

 「老人ホームの場合、最期は救急搬送されて病院で亡くなるのが今も一般的です。ホームホスピスは本人が望んでいる限り、最期も自分の部屋でみとりを行う。自宅に近い環境と感じてもらうため、食事時間など生活の制限は極力設けていません。地域の医師・看護師と連携もしっかり取れていて、定期的に医師の往診があり、いざというときには駆けつけてくれるので安心です。自宅で亡くなることが難しい時代に、新しい最期の迎え方になるかもしれません」

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