子宮頸がんワクチン、健康被害巡り集団訴訟

2016/7/28 18:00
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提訴のため、東京地裁に入る原告ら(27日、東京都千代田区)

提訴のため、東京地裁に入る原告ら(27日、東京都千代田区)

子宮頸(けい)がんワクチンの接種により全身の痛みや記憶障害などの健康被害を受けたとして、全国の女性が国と製薬会社を相手に集団訴訟を起こした。接種と被害の因果関係を巡って双方の主張は対立、司法の場で争われる。他方では、子宮頸がんの発症リスクを下げるため、3年前に中止した国によるワクチン接種の呼びかけを早期に再開すべきとの声も上がる。

■2900人超から健康被害報告

国が接種を呼びかけた子宮頸(けい)がんワクチンが全身の痛みなどの健康被害を引き起こしたとして、全国の15~22歳の女性63人が27日、国と製薬会社2社に1人当たり1500万円の損害賠償を求め、東京、名古屋、大阪、福岡各地裁に一斉提訴した。
同ワクチンを巡る集団訴訟は初めて。接種と被害の因果関係が司法の場で争われることになる。
同ワクチンは英製薬会社グラクソ・スミスクラインの「サーバリックス」と米製薬大手メルクの日本法人MSDの「ガーダシル」。これまで接種と症状の因果関係を明確に認めた研究結果はなく、国と2社は全面的に争うとみられる。

大阪地裁への提訴後、記者会見する奈良県の高校3年生(左)=27日午後、大阪市の司法記者クラブ

大阪地裁への提訴後、記者会見する奈良県の高校3年生(左)=27日午後、大阪市の司法記者クラブ

提訴したのは東京28人、名古屋6人、大阪16人、福岡13人。
厚生労働省によると、今年4月末までに約339万人が接種を受け、2945人から健康被害の報告があった。

子宮頸がんワクチン、4地裁で一斉提訴 63人「健康被害」(7月28日)

山梨の高校に通う望月瑠菜さん(17)は小6でワクチンを接種してから頭痛や関節痛などが続く。「今の体では進学も就職も難しい」と話す。「次の世代が苦しむのを見たくない」と考え、訴訟参加を決めた。
都内の音大に通う伊藤維さん(20)は中3で初めて接種し、高2の時に激痛で一時歩けなくなった。症状は今も続く。「安心して暮らせるように支援してほしい」と訴えた。

「なぜこんな体に」悲痛(7月28日)

提訴を受け、厚労省は「現時点でコメントは差し控えたい」とコメント。グラクソは「臨床試験で高い予防効果が示されており、ワクチンの有効性が副作用のリスクを上回ると確信している」とした。

子宮頸がんワクチン、4地裁で一斉提訴 63人「健康被害」(7月28日)

■子宮頸がんとは

子宮頸がんは、女性の子宮の入り口近くにできるがんで、ヒトパピローマウイルス(HPV)と呼ばれるウイルスが原因となり発症。主に性交渉で感染する。
厚労省によると、ここ数年は年間約1万人が発症し、同約3千人が死亡している。20~30歳代の若い世代で増加傾向にあり、死を免れても手術で子宮を全摘するなど心身のダメージは大きい。

年3000人死亡、予防に遅れ(2015年6月13日)

子宮頸がんワクチンは、グラクソ・スミスクラインとMSDの欧米製薬2社がそれぞれ開発、2006年からオーストラリアや米国などで使われるようになった。現在は世界130カ国以上で予防接種として利用されている。
20代、30代で発症することが多い子宮頸がんの原因とされる約15種類のヒトパピローマウイルス(HPV)のうち、16型と18型の感染を防ぐ効果がある。この2つの型で子宮頸がんの50~70%を占める。
接種は原則、3回に分ける。インフルエンザのようなワクチンと異なり、皮下ではなく筋肉に注射する。このため、接種したところに激しい痛みが起きやすいとされている。

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■接種呼びかけ、2カ月で中止

厚生労働省は2009~11年に同ワクチンを承認、10年から接種への公費助成を始めた。
13年4月には小学6年~高校1年を対象に定期接種としたが、健康被害の訴えが相次ぎ、同年6月に接種呼びかけを中止した。

子宮頸がんワクチン、4地裁で一斉提訴 63人「健康被害」(7月28日)

子宮頸がんワクチンについて記者会見する厚労省の担当者(右)(2013年6月14日、厚労省)

子宮頸がんワクチンについて記者会見する厚労省の担当者(右)(2013年6月14日、厚労省)

予防接種の安全性を議論する厚生労働省の検討部会は2013年6月14日、4月から定期予防接種の対象に加えた子宮頸(けい)がんワクチンについて「積極的な勧奨は一時やめる」との意見をまとめた。
接種後、体の複数部分に慢性的な痛みが生じる重い副作用が相次いで報告されたため。これを受け厚労省は、対象者への接種呼びかけを中止するよう自治体に勧告した。
重い副作用が出たとして、女子中高生の保護者らが「全国子宮頸がんワクチン被害者連絡会」を2013年3月に発足させ、国に予防接種中止を求めていた。

接種呼びかけ中止 副作用報告の子宮頸がんワクチン(2013年6月15日)

その後、専門家の会議で議論はされているものの、副作用への懸念から接種呼び掛けの再開には至っていない。

子宮頸がんワクチンの接種呼び掛けを再開するかどうかについての結論が先送りになったことを受け、被害者団体の代表らは2013年12月25日夜、東京都内で記者会見。「被害を防ぐために中止にしなかったのは残念」とし、ワクチンの接種中止を強く求める声明を出した。

被害者団体「被害防止へ接種中止を」 子宮頸がんワクチン(2013年12月26日)

子宮頸がん予防ワクチンの接種について案内を掲示するクリニックの待合室(2013年6月、東京都中央区)

子宮頸がん予防ワクチンの接種について案内を掲示するクリニックの待合室(2013年6月、東京都中央区)

子宮頸(けい)がんワクチンを接種した女性が相次ぎ「副作用」を訴え、厚生労働省が接種の呼び掛けを中止してから3年が過ぎた。
体の痛みなどを抱えつつ、進学や就職の時期を迎えた女性も多い。
同省は「因果関係は否定できない」とするが、詳細な原因は分からないまま。一方、学術団体からの呼び掛け再開を求める声は高まっている。

子宮頸がんワクチン勧奨中止から3年 続く「副作用」就職不安(6月17日)

■勧奨再開を求める声も

日本小児科学会など17団体は4月21日までに、ワクチン接種後の診療体制などが整備されたとして、積極的な接種を推奨するとの見解を発表した。
見解では、子宮頸がんワクチンを導入したオーストラリアや米国など複数の国で、子宮頸がんの前段階の病変の発生が約半分に減っており、有効性は明らかと指摘。健康被害に遭った人への救済が開始されたことも推奨する理由に挙げた。

子宮頸がんワクチン推奨 小児科学会など、診療体制が整う(4月21日)

子宮頸(けい)がんワクチンの積極的な接種を呼びかけた日本小児科学会など17の学術団体の声明について、市民団体「薬害オンブズパースン会議」は7月4日、「科学的に不正確な記載がある」として撤回を求める意見書を17団体に提出した。

子宮頸がんワクチン推奨「17学術団体は声明撤回を」 市民団体(7月4日)

厚生労働省

厚生労働省

世界保健機関(WHO)や関連学会は接種を強く推奨。
同ワクチンと身体症状を巡っては一部の専門家から、因果関係があることを疑うべきだとの声も上がっている。
WHOは昨年「薄弱な根拠で有益なワクチンを使わないことは損害につながる」との声明を発表。「予防できうるがんの危険に若い女性をさらしている」と日本に警告を発した。

原告側、薬害訴え 被告側、有効性で反論へ(7月28日)

多くのがんは予防が難しいとされるなか、子宮頸がんは数少ない「予防できるがん」といわれる。
日本産科婦人科学会などは「世界でワクチン接種が進むなか、接種が進んでいない日本の現状は極めて例外的。十数年後には、日本だけが子宮頸がん罹患(りかん)率の高い国となることが懸念される」とし、接種勧奨の早期再開を求めている。

年3000人死亡、予防に遅れ(2015年6月13日)

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