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日経プラス10「フカヨミ」

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アパート建設過熱 新たなバブルの種に
前野雅弥・日経産業新聞副編集長に聞く

2016/7/18 10:00
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小谷:不動産市場に新たなバブルが発生しつつあります。2013年の日銀による異次元緩和以降、マネーの流入が続く不動産市場。銀行の不動産向け融資残高は今年3月末時点で、1年前に比べ6%も増え、マイナス金利の導入以降、行き場を失った資金が不動産に向かう流れはさらに加速しています。
 特に今年に入って資金の集中が過熱気味なのが、アパートです。5月の着工件数は1年前に比べ15%も増え、持ち家のプラス4%を大きく上回っています。これまでもマンションバブルの可能性は指摘されてきましたが、ここに来てマネーが流れ込んでいるのがなぜアパートなのでしょうか?

小谷真生子メインキャスター

小谷真生子メインキャスター

前野雅弥・日経産業新聞副編集長(2016年7月13日放送)

前野雅弥・日経産業新聞副編集長(2016年7月13日放送)


■団塊世代の資産家が投資

「まずアパートを建てているのは、団塊の世代で資産を持つ人です。投資としてアパート経営を考えている人が増えています」

小谷:アパートへの投資はマンションとは違うのですか?

「最大の違いはオーナーの属性です。マンション投資をする人は都心の富裕層、アパートは郊外に住む資産家が多いという特徴があります。マンション投資は他の金融商品と比較しながら全く知らない物件を購入します。これに対してアパート投資は、土地勘がある場所にその土地のオーナーがアパートを建設します」

小谷:土地を持っている人が多いとはいえ、その土地にアパートを建てるというのは大変ですよね。

■マイナス金利で借金しやすく

「当然、借金をしてアパートを建てることになります。ただ、今は非常にお金を借りやすい状況にあります。銀行がアパートローンを重視しているためです。マイナス金利で貸出金利が大幅に低下し利益が縮小する中で、アパートローンに活路を見いだしています」

小谷:アパートローンというのは、銀行にとってもメリットがあるのでしょうか?

「アパートは1軒で平均1億円弱の融資を見込め、貸出金利も1%弱です。大手企業に貸し出すと約0.1%、住宅ローンでも0.6%前後の金利ですから、アパートローンはうまみがある融資だといえます」


小谷:アパート投資というのは、リターンは大きいのでしょうか?

■利回り10%超も

「比較的大きいといえます。銀行に預金しておいても得られる金利はほぼゼロです。それに対し、アパート経営でうまくいけば数%から、場合によっては10%を上回る利回りも期待できます。また高齢者の中で現金を多く持っている人で、お金を不動産に換えるケースも増えています。相続税対策になるからです」


小谷:去年から相続税の最高税率が上がり事実上の増税となりました。

「相続対策の不動産投資は去年から注目されてきました。同じ1億円でも現金ではなく不動産にすれば、相続時に評価額が小さくなるからです。その不動産にアパートを建て、第三者に貸し出せば、さらに評価額は下がります」

小谷:その評価額に基づいて、相続税が決まるということですね。

■相続税対策にも有効

「その通りです。例えば、相続税評価額1億円の土地と現金1億円を持った人がいたとします。これをそのまま相続すれば2億円に相続税がかかりますが、アパートを建てれば大きく軽減されます。まず現金1億円を使ってアパートを建てますと、アパートの価値は固定資産税評価額を使いますからおおむね4割減で、6000万円。さらにこれを貸し出せば3割減になり、評価額は4200万円です。つまり1億円の現金は4200万円の価値しかないことになります。土地の相続税評価額も上にアパートを建てれば2割減になります。これで8000万円の価値です。ですから土地と現金で2億円の資産は相続税上は1億円2200万円の価値しかないことになります」


小谷:アパート投資にいろんな人が乗り出すのは良いのですが、入居者の取り合いにはならないのでしょうか?

「問題はリスクの面に目が向かっていないところです。自分の土地にアパートを建てても、空室が多ければその分もうけは目減りします。アパートは郊外の土地に建てるケースが多いため、よほど立地が良かったり、洗練されたデザインであったりと、そういった特徴がなければ、部屋はなかなか埋まりません」


小谷:リターンを得られるケースはそれほど多くないということでしょうか?

■家賃保証には期限も

「気をつける必要はあると思います。ハウスメーカーの中には空き家になっても収入を保証するといったところがありますが、期間は10年が限度です。それ以降、リスクは自分でとる必要があります。また、建設をセットにして話を持ちかけてくるハウスメーカーもありますが、こうした場合はかなり割高な建設費用を要求されることもありますので、注意が必要です」

小谷:アパート投資もバブル状態なのでしょうか?

「人口減の中で、着工件数の急増をどうみるかということです。不動産動向に詳しい専門家は『すでに過熱気味のサインが出ている』と指摘しています。特に地銀が融資を増やしている郊外や地方都市には人口の流出が止まらない所も多くあります。マイナス金利と人口減の間で日本経済に新たなゆがみが出ている危険があります」


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