2019年2月21日(木)

新丸ビルのCO2排出ゼロに グリーン電力を販売 出光興産
科学技術部編集委員 滝順一

2010/3/31付
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出光興産は発電時に二酸化炭素(CO2)を出さないグリーン電力の販売を始める。第1弾はJR東京駅前にある三菱地所の新丸の内ビルディング。4月から風力発電などのグリーン電力を供給、新丸ビルはCO2排出ゼロのビルになる。地球温暖化問題への関心の高まりに加え、東京都が独自の温暖化ガス排出量取引制度を4月から発足させることが、ビジネスチャンスをもたらした。出光興産でプロジェクトを進めてきた新規事業推進室の石崎秀樹室長と貝瀬研二室長付の2人にグリーン電力販売の仕組みや背景を聞いた。

出光興産新規事業推進室の石崎秀樹室長(右)と貝瀬研二さん

出光興産新規事業推進室の石崎秀樹室長(右)と貝瀬研二さん

――グリーン電力はどこから調達するのですか。

「当社が出資する日本風力開発が運営する風力発電所(二又風力開発、青森県六ケ所村)、王子製紙が北海道にもつ自家発電用の小規模水力発電所、バイオマス発電などを組み合わせて供給する。北海道や青森の電気は東北電力などの既存の送電網を経由して、東京の新丸ビルに送る」

「日本風力開発の発電所は、所内に大型の蓄電池を持つ。風力発電は天候任せで発電量の予測がつきにくく変動もする。日本風力開発は蓄電池を活用して、発電電力量の凸凹を整形し、安定した電力供給を実現している。電源が安定であることが、今回のビジネスでは重要だ。出光としては、戦略的事業のパートナーとして風力発電所に出資をしている」

――事業を始めた背景には何が。

「実は、当社はかつて電力小売り事業を手掛けていた。中部地区で化学会社の自家発電の余剰電力を買い集めて販売していたが、2007年に撤退した経緯がある。このときは化石燃料を燃やす火力の電気を売っていた。原油高が響いて、原子力発電所や水力発電所をもつ電力会社より割安な価格では利益が出せなかった」

「撤退に先立って05年に、社内の別の部署で、グリーンエネルギーを手掛ける新規事業推進室が発足していた。海外で天然ガス事業を手掛けたり燃料電池の可能性を追求したりしてきた。その中で風力発電も1つの事業として浮かび上がり、日本風力開発との付き合いも生まれた。化石燃料による電力小売りの撤退と入れ違うような形でグリーン電力が浮上した」

――東京都の排出量取引制度がスタートしますが、これは追い風になりましたか。

日本風力開発の二又風力発電所

日本風力開発の二又風力発電所

「都の制度がなかったら、ビジネスとしては成り立たない。まず、CO2排出に上限(キャップ)が設定されることで、オフィスビルや工場などで排出削減へのインセンティブが高まった」

「第二に、100%再生可能エネルギーで生み出した電気を遠くの発電所から直送して使用した場合、都の制度ではこれを『生(なま)グリーン電力』と呼んで、排出削減として認定する。それだけではなく、風力や小水力(出力1000キロワット以下)、太陽光、地熱などはクレジット(削減量)を1.5倍に換算して評価する仕組みだ。風力発電の電気を遠くから託送したのでは、電力会社の電気に比べて割高になるが、この制度でユーザーも納得してグリーン電力を採用できる環境ができた」

100%再生可能エネルギーで電力を賄う新丸の内ビル(出光興産提供)

100%再生可能エネルギーで電力を賄う新丸の内ビル(出光興産提供)

――新丸ビルを皮切りにグリーン電力の小売りを拡大していくのですか。

「まず、最初の案件を無事にスタートさせることが第一だが、もちろん拡大は考えている。調達予定の電力は新丸ビルの最大需要よりかなり大きい。新丸ビルで使わない電気は他にも販売したい」

「都の制度によって、首都圏を遠く離れた地域の再生可能エネルギーをグリーン電力ビジネスとして使えるようになった。国内の再生可能エネルギー開発を進めるとともに、グリーン電力の需要家開拓に努めていきたい」

――石油会社が非化石燃料ビジネスに取り組む意味はどこに。

「出光は日本のエネルギー企業として、日本のエネルギー安全保障を重視している。化石燃料を潤沢に使い続けていられる時代がずっと続くとは考えていない。風力や水力、太陽光など再生可能エネルギーは日本がこれから将来に向けて確実に手にできる国産エネルギーであり、その開発・利用は国のためにも国民生活の役にも立つと考えている」

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■取材を終えて

東京都は4月から環境確保条例に基づき、都内でエネルギーをたくさん使う工場やオフィスビルなどを対象に温暖化ガス排出を5年間で6~8%削減することを義務付ける。都内に大きな施設をもつ企業や政府機関、大学などは工場やオフィスビルなど事業所別に削減計画を都に提出する。10年度の削減実績を踏まえて、11年度からは目標に対する超過達成分と不足分を売り買いできるようになる。これが東京都版の排出量取引制度だ。

この制度では、再生可能エネルギーの使用による削減実績は、省エネなど他の対策に比べて1.5倍に水増しして実績として評価するのも重要なポイント。再生可能エネルギーを制度的に優遇することでCO2削減につなげるだけでなく、新ビジネスの機会を生み出す。

出光だけではなく、コスモ石油も荏原の風力発電子会社を買収するなど、石油元売り会社が再生可能エネルギー関連事業に進出する例が増えている。温暖化対策だけでなく、エネルギー安全保障という側面を考え合わせると納得がいく動きだ。

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