英国民投票直前、EU残留の損得まとめ - 日本経済新聞
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英国民投票直前、EU残留の損得まとめ

英国は23日、欧州連合(EU)から離脱するか否かを問う国民投票を実施する。賛否はなお拮抗しており、世界がその結果に注目する。英国民の判断と投票後の国の進路を占うため、主に経済の面から残留の「損得」をまとめた。

残留派、経済面の恩恵強調

キャメロン英首相は19日夜(日本時間20日未明)、BBCの特別討論番組に出演し、英国が欧州連合(EU)から離脱すれば「英経済は縮小して税収も減るだろう」と語った。
英首相、EU離脱「痛み」強調 TV討論で増税の見方に同調(6月20日)

残留のメリット、貿易や金融に

英国は人口5億人を超える単一市場である欧州連合(EU)に加盟することで域内でのヒト、モノ、カネの自由な往来の恩恵を受けている。
域内貿易には関税がかからず、英国にとってEUは最大の貿易相手だ。英国歳入関税庁によると、2015年の貿易総額約7158億ポンド(約106兆円)のうち49%をEUが占めた。米国(11%)、中国(7%)を大きく上回る数字だ。
国際金融の中心地ロンドンもEUのルールが支える。金融機関が1国で事業認可を得れば、他国にも進出できる「パスポート制度」だ。世界の金融機関の多くは英国に拠点を置き、欧州に展開している。英国の国内総生産(GDP)の1割以上を金融業が稼ぐ。
英、EU残留の損得は(6月21日)

離脱派、「自主路線」訴え

「自らコントロールを取り戻す好機をつかむべきだ」。ロンドン市内中心部で離脱派が開いた数百人規模の集会。登壇したジョンソン前ロンドン市長は、EUを離脱してこそ独自の移民制限や通商交渉などを展開できると、強い口調で従来の主張を繰り返した。
両陣営、静かに運動再開(6月20日)

デメリット、EUの規制の網

離脱派はEUが課す規制による弊害の方が大きいと訴える。例えば漁業。加盟国は漁獲量の管理・規制を受けるが、英国の港町では生活に必要な漁業ができず、廃業せざるをえなくなった漁師も多い。
投機的な株取引を減らす目的で導入が決まった「金融取引税」も不人気だ。仏、独など10カ国は導入に向け合意したが、英国は金融機関の競争力が下がるとみて調印していない。
英、EU残留の損得は(6月21日)

移民問題も大きな判断材料に?

近年、残留派、離脱派ともに関心が高いのが移民問題だ。EU加盟国の国民は原則自由に域内を移動し、働く場所を決められる。労働市場を活発にする効果があり、英国は00年代から新たにEU加盟したブルガリア、ルーマニアなどから移民を多く受け入れている。
だが、リーマン・ショックを経て、移民が英国の雇用を奪うという批判が出始めた。移民を安易に手厚い福祉の対象にすべきでないとの意見もある。
英、EU残留の損得は(6月21日)

EUへの拠出金に不満も

EUの予算をまかなうため、英国は2014年で140億ユーロ(約1兆6500億円)を拠出した。国民の間には、その使い道への不満もあるようだ。

EUの加盟国拡大で、予算はインフラが未整備な東欧などに再配分される傾向が強まっている。支払った額より、英国のために使われる額が少ないため、一部の英国民の間では「差し引きで英国は負担過多だ」と不公平感がある。
EUへの英の貢献は 予算の1割拠出(6月21日)
なぜユーロには不参加 政治統合とは一定の距離感(6月21日)

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