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Jリーグ大詰め 「16分間」が鹿島を変えた
サッカージャーナリスト 大住良之

2009/11/26 7:00
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Jリーグ2009も残すところあと2節。11月28、29の両日に行われる第33節と12月5日の第34節だけとなった。優勝争いは鹿島アントラーズ、川崎フロンターレ、ガンバ大阪の3チームに絞られた。Jリーグ初の「3連覇」に向けて突き進む鹿島。ナビスコ杯決勝で敗れ、「初タイトル」への情熱をJリーグ一本に絞った川崎。そして今季前半に大きな不調に陥りながら、終盤にきて優勝争いに加わってきたG大阪。12月5日の午後5時半近くに吹かれる「2009シーズン最後のホイッスル」の瞬間まで、緊迫した争いは続きそうだ。

スキのない試合で鹿島が首位を奪還

11月21日、鹿島はアウェーで京都サンガと戦い、MF野沢拓也のゴールで1-0の勝利を得た。G大阪もアウェーで清水エスパルスに2-0の快勝。一方、翌22日に最下位の大分とアウェーで戦った首位の川崎は、MFフェルナンジーニョに決められて0-1で敗れた。この結果、鹿島が勝ち点60で首位に立ち、川崎が同58で2位、G大阪が同57で3位となった。鹿島が第27節以来5節ぶりに首位を奪還し、3連覇に向けて大きく前進した形になった。

10月7日に「再試合」(後半29分からやり直した)で川崎に2-3で敗れた後、鹿島は磐田と0-0で引き分け、千葉を3-0で下し、山形に2-0、京都に1-0と、4試合連続無失点を続けている。京都に1-0は辛勝に見えるかもしれないが、鹿島らしいスキのない試合で、DF岩政大樹、FWマルキーニョスという攻守の大黒柱を出場停止で欠く試合を勝ち取った。

G大阪の猛追

一方、第29節以来3節にわたって首位を保っていた川崎は、22日にアウェーとはいえ最下位の大分に敗れ、その座を明け渡した。第29節に大宮を3-2で下して首位に立った後、広島に7-0で大勝、千葉も3-2で下して首位を守っていたものの、ナビスコ杯決勝でも指摘された「ここ一番」でのもろさが出て0-1の敗戦を喫した。

その川崎に勝ち点1差、首位鹿島とは勝ち点3差としたのがG大阪だ。第32節にはアウェーながらFWルーカスとFWチョ・ジェジンの得点で清水に2-0の勝利。これで8月29日の第24節から負け知らずの6勝3分け。そしてこのG大阪が第33節の28日に首位鹿島と直接対決する(カシマスタジアム)。もしG大阪が勝つとG大阪は鹿島に勝ち点60で並び、得失点差で上回って順位を逆転させることになる。その日、川崎はホームにアルビレックス新潟を迎える。

「勝たなければならない試合」

G大阪にとってはアウェーとはいえ、鹿島戦は何が何でも勝たなければならない試合だ。もし引き分けに終わると、優勝するには最終節に鹿島と川崎がともに負け、しかもG大阪自身は4点、5点という大差の勝利が必要ということになる。ちなみに最終節、G大阪はホームで千葉と対戦する。

勝たなければならないのは鹿島も同じだ。引き分けると、川崎が勝った場合には勝ち点61で並ぶが、得失点差で大きく引き離されているため、再び川崎に首位を明け渡すことになるからだ。鹿島は最終節に埼玉スタジアムで浦和レッズと戦わなければならない。一方の川崎はアウェーで柏レイソルと対戦する。

ベストの布陣、力のある交代要員

ホームの鹿島はGK曽ヶ端準、DF内田篤人、岩政、伊野波雅彦、新井場徹、MFは小笠原満男と中田浩二をボランチに置き、右に野沢、左に本山雅志、そしてFWはマルキーニョスと興梠慎三。4-2-2-2で今季のベストというべき布陣が並ぶ。

ビジターのG大阪はGK藤ヶ谷陽介、DFは右から加地亮、中澤聡太、山口智、そして高木和道。清水戦で左サイドバックとして使われた高木が再びそのポジションでプレーするだろう。MFは明神智和と橋本英郎をボランチに置き、右に佐々木勇人、中央に遠藤保仁、左に二川孝広、そしてFWはルーカス。4-2-3-1の布陣で攻撃的なサッカーを仕掛けるはずだ。

攻撃力を強化するための交代要員は鹿島がMFダニーロ、FW田代有三、G大阪がFWチョ・ジェジンらを持っており、オリベイラ(鹿島)、西野朗(G大阪)両監督の采配も試合結果に大きな影響を及ぼすに違いない。

川崎の強力FWトリオ

優勝争いのライバルとの直接対決が残っていない川崎としては残りの新潟戦(第33節)、柏戦(第34節)に集中するしかない。首位の鹿島が第33節のG大阪に続き、第34節には浦和(アウェー)という難しい相手が待っていることを考えれば、最後の最後まであきらめるべきではない。

川崎の持ち味はMF中村憲剛を文字どおり「扇の要」に置き、レナチーニョ、鄭大世、ジュニーニョと並ぶ攻撃陣。レナチーニョ9得点、鄭大世12得点、そしてジュニーニョが16得点、この3人のFWだけで総計37得点と今季のチームの総得点(60点=リーグ最多)の6割を叩き出している。この攻撃陣は相手が攻撃的にくればくるほど破壊力を増すが、自陣に引いて守備を固めるような相手だと得意のスピードを生かすことができず、苦戦することが多い。その「壁」をどう突き崩すか……。

鹿島再浮上のきっかけは川崎との「16分間」

今季のJ1は鹿島が好調に勝ち点を積み重ねる中、それに対抗すべきG大阪、川崎らがAFCチャンピオンズリーグで疲弊し、一時は鹿島の独走状態となった。しかしその鹿島も、8月から急激に調子を落とし、10月にかけて5連敗という信じがたい状態になって清水に首位を明け渡した。清水はわずか1節で川崎に首位の座を譲り、川崎も第32節に最下位大分に負けるという痛手を負って再び鹿島が首位に立った。

5連敗という悪夢が去った後、鹿島はつきものが落ちたように首位独走のころのサッカーができるようになった。そのきっかけは川崎に対する2-3の敗戦だった。

後半29分から再開

第25節のこの試合は9月12日にカシマスタジアムで行われたが、川崎が3-1とリードしていた後半29分「に中断され、そのまま打ち切りとなった。急激に強まった雨脚でピッチコンディションが悪化し、このまま続けたら負傷者が出るという主審の判断だった。

この「打ち切り」は大きな話題となり、首位争いの試合であることから1-3というスコアを切り捨てて0-0の状態で試合当初から再試合するのは妥当ではないとJリーグは判断し、10月7日に後半29分から再開するという異例の決定が下された。その「16分間」で鹿島は1点を返したものの追いつくことはできず、結局2-3で敗れた。

だがこの「16分間」のなかにこそ、鹿島の「目覚め」のカギがあった。

開き直りがその後の試合の変化生む

自陣のFKで再開されたこの「16分間」、鹿島はタイミングを外して川崎のゴール前に長いボールを送り、DF岩政が決めてあっという間に2-3とした。そしてその後もロングボールをどんどんゴール前に放り込むという、鹿島本来のサッカーからはかけ離れたスタイルで押し通し、川崎を守備一辺倒に追い込んだのだ。

「どうせ一度は負けた試合」と開き直り、単純そのものの攻撃を繰り返すなかで、鹿島の選手たちの内面がどんどん変化していくのが手に取るようにわかった。5連敗中は「負けたくない」という気持ちばかりで、「勝ちたい」という燃えるような闘志が忘れ去られていたのだ。「16分間」は、逆にその闘志だけで戦ったような試合だった。翌節、鹿島は磐田と0-0で引き分けてようやく連敗を脱出すると、以後は鹿島らしい堅実なサッカーで3連勝、ついに首位の座を取り戻したのだ。

もし今季鹿島が3連覇という偉業を成し遂げるとしたら、あの「16分間」こそ「救世主」ということになるのではないだろうか。さて、鹿島の3連覇はなるのだろうか。それともG大阪がそこに大きく立ちはだかり、最終節に向けて再び川崎を含めた三つ巴の混戦となるのだろうか。

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