テロ、歌手殺害……米銃社会の悲劇続く

2016/6/14 18:00
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米南部フロリダ州オーランドで男が銃を乱射し、49人が死亡、53人が負傷する史上最悪の事件が発生した。オバマ大統領はあらためて銃規制強化の必要性を強調したが、世論の賛否は拮抗しており、今年11月の大統領選の争点となりそうだ。

■ライフルや拳銃などで武装

事件は12日午前2時ごろ、大勢のゲイ(男性同性愛者)が集まるナイトクラブ「パルス」で起きた。
地元警察によると、事件当時300人以上が店内にいた。男は屋外で警察と銃撃戦を繰り広げた後、屋内に立てこもり、銃を乱射。午前5時ごろ警察が屋内に突入し、男を射殺した。
男はライフルや拳銃、爆発の恐れがありそうな機器などで武装していたという。

米連邦捜査局(FBI)は男を民間警備員のオマル・マティーン容疑者(29)と特定。ニューヨーク生まれでフロリダ州フォートピアースに在住していた。
アフガニスタン出身の両親を持つ米国市民で、犯行の数日前に武器を合法的に購入していた。

米フロリダ州で銃乱射 50人死亡(6月13日)

米メディアの報道などによると、自動小銃などで武装したマティーン容疑者がナイトクラブ「パルス」に押し入ったのは12日午前2時ごろ。約200キロ離れた州内の自宅から車で到着。店の外にいた警備員に発砲し、銃撃戦の末に乱入した。
閉店直前の凶行。「映画で見るような感じ。自分に起きるはずはないと思っていた」。店内を埋め尽くしていた客の約3分の1が銃弾を浴びた。
床は血の海。死傷者が折り重なる。裏口から無事逃げた人がいた一方、人質になった客も多かった。

銃声数十発、週末の惨事 フロリダ銃乱射(6月13日)

オバマ米大統領は12日、緊急声明を読み上げ、「テロ行為であり憎悪による行動だ」と非難したうえで、銃規制の必要性を強調した。
オバマ氏は同性愛者らが集まるナイトクラブが狙われたことに対し「性的少数者(LGBT)にとって胸が張り裂けそうな日だ」と指摘、同性愛者への偏見が背景にある可能性を示唆した。

銃規制、大統領選の争点に オバマ氏、乱射で強化訴え(6月13日)

過激派組織「イスラム国」(IS)は13日、犯行声明を出した。ISは容疑者との接点に触れておらず、米当局は全容の解明を急ぐ。
米国生まれの若者が祖国で起こした米史上最悪の銃乱射事件は「自国育ちテロ」を阻止することの難しさを改めて浮き彫りにした。
人種差別や格差への不満などから社会に反感を強め、過激思想に感化された若者らが祖国で起こすテロは、組織から命令を受けない例が多い。事前察知も難しい。

米「国産テロ」の闇 銃乱射49人死亡(6月14日)

■若手女性歌手撃たれる

死傷者数は100人を超え、米国で起きた銃撃事件としては、2007年4月にバージニア工科大学で学生が乱射して32人が死亡した事件を上回り、史上最悪となった。

米フロリダ州で銃乱射 50人死亡(6月13日)

銃乱射情報サイト「銃暴力アーカイブ」によると、4人以上が死傷した銃乱射事件は米国内で今年すでに133件起きている。
米メディアによると、オバマ氏が銃乱射事件後に緊急声明を出すのは就任後15回目。

フロリダ銃乱射事件 「銃規制」大統領選の争点に(6月13日)

同じフロリダ州では、22歳の女性歌手が公演後に銃で撃たれ、死亡する事件も起きている。

米国の若手女性歌手クリスティーナ・グリミーさん(22)がフロリダ州でのコンサート後にファンらにサインをしていた際に銃撃され、死亡したと地元警察当局が11日明らかにした。

警察当局によると、グリミーさんは10日午後10時ごろにコンサートが終わった後、ファンらへのサインを始めた。銃を持ったロイブル容疑者に撃たれ、グリミーさんの家族がすぐに取り押さえようとしたが、もみ合いのさなかに同容疑者は銃で自殺した。
グリミーさんは米NBCテレビの音楽オーディション番組「ザ・ボイス」への出演で有名になった。

米女性歌手撃たれ死亡 フロリダ州、容疑者自殺(6月13日)

■ライフル協会はトランプ氏を支持

銃規制を巡り拮抗する米世論は、銃による自衛容認論に傾く可能性もある。銃規制やテロ対策、移民政策は大きな争点になりそうだ。
今回の事件が大統領選に与える影響は、読み切れない。事件が起きたフロリダ州は、大統領選の結果を左右する大票田の激戦州。大きな影響力を持つ銃ロビー団体、全米ライフル協会(NRA)は、激戦のバージニア州に本部を置いている。

共和党の不動産王ドナルド・トランプ氏(69)は「米同時テロ以降、数百人の移民と子供たちが米国内でテロに関与した」とし、イスラム教徒の入国禁止策の必要性を改めて訴えた。
「我々の指導者は弱い」。トランプ氏は12日、オバマ氏を批判した。クリントン氏には大統領選の辞退を迫った。移民への偏見を助長するとの批判も意に介さない。銃を持つ権利も擁護する。
一方、クリントン氏は声明で「戦争の兵器が町に存在する意味はない」とし、銃規制の強化を訴えた。

銃規制 揺れる世論(6月14日)

銃ロビー団体の全米ライフル協会(NRA)は5月20日、米大統領選の共和党候補指名が確実になった不動産王ドナルド・トランプ氏(69)を支持すると表明した。
同協会の集会で演説したトランプ氏は「途方もなく光栄だ」と支持を歓迎した。
トランプ氏は「法を守る米国人には自衛の権利がある。100%保障する」と述べ、銃を持つ権利を擁護すると主張した。

全米ライフル協会が支持 トランプ氏「光栄」(5月21日)

■「毎年3万人以上が命絶たれる」

オバマ氏は1月、大統領権限による銃規制に踏み切ったが、議会の協力が得られず、実効性には限界があるとされる。

オバマ米大統領は1月5日、ホワイトハウスで新たな銃規制を盛り込んだ大統領令を国民に説明した。
インターネットや即売会を通じた銃販売の抜け穴をふさぐため、販売業者に営業許可の取得を義務付け、監視を強化するなどの対策を打ち出した。
オバマ氏は珍しく涙をみせて銃犯罪を防ぐ必要性を訴えた。
オバマ氏は「毎年3万人以上の米国人が銃で命を絶たれる」と述べたうえで「何もしないことを延々と言い訳するのはもうやめよう」と呼びかけた。

オバマ氏、銃犯罪防止を涙で訴え 大統領権限で規制強化(1月6日)

米国は銃を持つ権利を憲法修正第2条で保障する。
だが1981年にレーガン大統領(当時)の暗殺未遂でブレイディ報道官らが負傷したことで規制の機運が高まり、93年に銃規制法「ブレイディ法」が成立した。94年には殺傷能力の高い半自動小銃の製造・販売を禁じる時限立法ができた。
銃業界はロビー団体、全米ライフル協会(NRA)を通じ反対運動を展開。2000年の大統領選では、銃規制に賛成した民主党候補ゴア氏への批判キャンペーンで落選に追い込んだとされる。
新規制の柱は販売業者の登録の義務づけ。米政府は「販売数や頻度」で業者かどうか判断するというが、具体的な基準は不明で、個人間の銃売買に網がかけられるかどうかは分からない。

米大統領が銃規制 対象あいまい、実効性に課題(1月6日)

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