2019年1月21日(月)

水兵リーベ僕の船……113番元素は「ニホニウム」

2016/6/9 18:00
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周期表に日の丸で記された113番元素(9日午前、埼玉県和光市の理化学研究所)

周期表に日の丸で記された113番元素(9日午前、埼玉県和光市の理化学研究所)

理化学研究所の森田浩介グループディレクター(九州大学教授)らが発見し、2015年12月に命名権を得ていた113番の新元素の名称が「ニホニウム」になる。欧米以外の国で元素を命名するのは初めて。今後、教科書などに載る周期表にニホニウムの名前が書き加えられる。

■欧米以外で元素の命名は初めて

新名称案は科学者でつくる国際純正・応用化学連合(IUPAC)が8日発表した。新元素ニホニウムの英語表記は「nihonium」で元素記号は「Nh」。同連合が一般から意見を募集したうえで、年内にも名称を正式決定する。森田氏は「人類の知的財産である周期表に日本の発見した元素が載ることは大変光栄だ」とのコメントを出した。

ニホニウムは森田氏らが04年、30番の亜鉛の原子を83番のビスマス原子に衝突させ、核融合を起こすことで作った。10年近い実験で作れたのは3個だった。

理研発見の新元素名は「ニホニウム」、記号「Nh」(6月8日)

113番元素の名称案「ニホニウム」の発表を受け、記者会見する理化学研究所の森田浩介グループディレクター(右)(9日午前、埼玉県和光市)

113番元素の名称案「ニホニウム」の発表を受け、記者会見する理化学研究所の森田浩介グループディレクター(右)(9日午前、埼玉県和光市)

■「母国語で国名付けるのは自然」

元素の名称は国や地名、科学者の名前などにちなんで付けられる。命名権獲得はノーベル賞より難しいと指摘する専門家も多い。元素に詳しい東京大学の山崎敏光名誉教授は「母国語で国名を付けるのは自然な流れだ」と歓迎する。

新元素が見つかった場合は、科学者でつくる国際純正・応用化学連合(IUPAC)が、発見チームに命名権を与える仕組みだ。同連合の審査を経て正式に決まる。命名には国や地名などにちなむといった歴史的なルールがあり、語尾の音は「イウム」となる例が多い。

偉大な科学者に敬意を表して付けられたのはキュリウム(96)、アインスタイニウム(99)などだ。今回の113番元素でも、日本の原子核物理を切り開き、元素発見にも挑んだ理研の仁科芳雄博士にちなんで「ニシナニウム」にするのではという予測もあった。

「母国語で国名は自然」 新元素名ニホニウム、専門家ら歓迎(6月8日)

■発見した森田氏「次の元素発見が目標」

新元素「ニホニウム」の発見者の森田浩介理化学研究所グループディレクター(九州大学教授)は9日、埼玉県和光市の理研で会見し、「次の(未発見元素である)119番元素、120番元素を発見することを目標にしたい」と、今後の研究への意欲を語った。

新元素の発見に向けた研究について、森田グループディレクターは「明日の生活にすぐ役立つというものではない」と語った。だが今回、発見が国際的に認められ、日本にちなむ名前を付けることができたことで「日本の皆さんに少しでも恩返しできたのはうれしい」と話した。

ニホニウム発見の森田氏「次の元素発見が目標」(6月9日)

113番元素の名称案「ニホニウム」の発表を受け、記者会見する理化学研究所の森田浩介グループディレクター(9日午前、埼玉県和光市)

113番元素の名称案「ニホニウム」の発表を受け、記者会見する理化学研究所の森田浩介グループディレクター(9日午前、埼玉県和光市)

■7億円の研究費は高いか安いか

113番元素は、自然界には存在しない。これを合成するには、原子番号30番の亜鉛を加速器で高速に加速し、83番のビスマスにぶつけて「核融合」という反応を起こす必要がある。

せっかく合成しても、一瞬で消えてしまうはかない元素だ。産業などに利用できるわけでもない。周期表のマスが1つ埋まるだけで、何が変わるのかと思う人もいるかもしれない。

だが、この研究を通じて、日本が得たものは小さくない。核融合は新たなエネルギー調達の手段としても研究が進んでおり、日米欧ロの国際共同チームが核融合による発電施設をフランスで建設している。

研究を率いた森田浩介グループディレクターは「周期表の枠を日本人が埋めたというのは象徴的。アジアの研究者にも勇気を与える」と話した。「ニッポニウム」か「ジャポニウム」かと話題になっているが、原子核物理学の基礎的な知見を積み上げたことには、命名権以上の価値がある。7億円は高くない。

113番の元素発見 7億円の研究費は高いか安いか(1月9日)

元素周期表の中の新元素「ニホニウム」の位置(9日午前、埼玉県和光市)

元素周期表の中の新元素「ニホニウム」の位置(9日午前、埼玉県和光市)

■理研の決め手は厳密さ 米国・ロシアに勝る

理研の7カ月前に米国とロシアの共同グループが113番元素を発見したと報告していた。115番の元素を合成し、それが崩壊して113番元素になったことを確認したとしていた。

理研が新元素の存在をより厳密に確認していたのが決め手となった。05年に再度ドブニウムを観測し、12年にはそれがさらに崩壊して101番のメンデレビウムになったことも確認した。一連の観測で、113番ができていたことが確実になった。一方米ロのチームは、既知の元素への崩壊を確認していなかった。

理論上は173番まで存在すると予測されているが、発見は118番までで止まっている。これ以上大きな元素は、ぶつける原子が不安定になるため、制御が難しい。より高価で高度な装置が必要になり、今後は国際競争ではなく、国際共同で進める必要があるとみられる。

113番新元素、理研の決め手は 厳密さ、米ロに勝る(1月4日)

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