2019年2月22日(金)

インフラファンド初上場、安定利回りに期待

2016/6/2 18:00
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タカラレーベンの太陽光発電所(栃木県塩谷郡)

タカラレーベンの太陽光発電所(栃木県塩谷郡)

電力設備などのインフラに投資するファンドが2日、日本で初めて東京証券取引所に上場した。マンション分譲のタカラレーベンが設立した「タカラレーベン・インフラ投資法人」で、東証が2015年4月に開設したインフラファンド市場の上場第1号。大規模太陽光発電施設(メガソーラー)に投資する。基準価格の初値は10万9900円、初値に基づく分配金利回りは約5%となる。

■投資と分配の仕組み

インフラファンド市場は、発電所や空港など社会基盤(インフラストラクチャー)を組み込むファンドが上場する専用の市場。東証1部上場銘柄などと同じように、証券会社の窓口やインターネット証券のウェブサイトで売買できる。

インフラファンドの仕組みは、不動産投資信託(REIT)と似ている。REITは保有する不動産が稼ぐ賃貸料、インフラファンドは保有するインフラが稼ぐ売電や利用料金をもとに投資家に分配金を支払う。ともに価格変動はするが、不動産やインフラなどの裏付け資産があるため、一般の株式のように無価値になるリスクは小さい。

一から分かるインフラファンド 6月上場、利回りにメリット(5月15日)

投資家からお金を集めて空港や道路、港湾、再生可能エネルギー施設などに投資する。インフラは一般的に景気変動の影響を受けにくく、長期的に安定した収入が期待できる。

インフラファンド 景気変動の影響、受けにくく(2013年12月7日)

■分配金の変動リスクをヘッジ

(タカラレーベン・インフラは)上場後最初の決算期となる16年11月期では、株式投資の配当にあたる1口当たりの分配金を2981円にする計画だ。

株式投資の配当利回りは現在2%程度。低金利が続くなか、安定した利回りを確保できる資産運用の手法として個人の注目を集めそうだ。

インフラファンド、東証に初上場 新たな運用手段に(6月2日)

タカラレーベン・インフラが注目されるのは初上場だからだけではない。「分配金の仕組みに特徴があり、マイナス金利政策による金利低下に苦しむ債券投資家が注目している」(三井住友トラスト基礎研究所の福島隆則上席主任研究員)。

ユニークなのは分配金に事実上の下限が設けられていることだ。過去の日照量のデータから、統計的に50%以上の確率で発生する標準的な日照量を施設ごとに設定。たとえ実際の日照量が標準的日照量より少なくても、標準的日照量で発電できたものとして一定の分配金を出す。逆に日照量が多かった場合、それが標準の10%以下なら分配金は据え置き、10%を超えて発電できた部分については、半分は分配金の上乗せ払いに回す。

つまり悪天候で発電量が少なかったり、需給によって売電価格が低下したりするリスクが事実上ヘッジされていると言える。分配金の変動リスクが減り、債券に近い性質となった結果、安定運用を重視する地方銀行なども関心を寄せている。

一から分かるインフラファンド 6月上場、利回りにメリット(5月15日)

■税制改正が追い風

全国の風力や地熱発電などにより多くの民間資金を呼び込むため、財務省と金融庁はインフラ投資をするファンドの法人税負担を軽くする。インフラ整備を目的とする上場投資ファンドが対象で、利益に対する法人税を20年間非課税とする。投資家はその分、多くの分配金を得やすくなる。財政資金が乏しくなるなか、民間マネーをインフラの整備や維持に回す仕組みを税制で支える。

インフラ投資、減税長く 再生エネファンド向け20年に倍増(2015年12月9日)

これにより、太陽光パネルなどの償却期間を超える優遇期間が得られ「滞留している上場案件が一気に出てくる」(インフラファンド運用会社)と期待されている。

再エネファンド、非課税措置延長で上場の幕開けに(2015年12月17日)

政府は2015年6月にまとめた成長戦略で「インフラファンドの組成・上場の促進」を盛り込んでいた。厳しい国家財政を考えると、インフラの更新や新設に民間資金を呼び込むのが不可欠になっている。税制の壁を取り除くことで、市場の成長を狙う。

01年から始まったREITは利益の9割超を投資家に分配すると、法人税が非課税になる。市場は一気に10兆円規模まで広がった。インフラファンドは上場投資信託(ETF)のように日々取引されるため、流動性や透明性が高いのも特徴だ。欧米がインフラファンド市場で先行しており、東証にとっても成長が見込める分野となっている。

インフラ投資、減税長く 再生エネファンド向け20年に倍増(2015年12月9日)

今後のインフラファンドもメガソーラーが中心となるとみられる。不動産運用大手のいちごグループホールディングスはメガソーラーファンドを来年2月までに上場する方針だ。同社は北海道から沖縄県まで全国に30超の施設を保有しており、ファンドに組み入れる施設は地域的に分散させる方針だ。組み入れ資産の規模は100億円弱と、タカラレーベン・インフラと同等になるとみられる。

一から分かるインフラファンド 6月上場、利回りにメリット(5月15日)

北海道釧路市で稼働するスパークスの太陽光発電所の敷地面積は東京ドーム10個分の広さ

北海道釧路市で稼働するスパークスの太陽光発電所の敷地面積は東京ドーム10個分の広さ

「太陽光ファンドといえば、あの会社」と市場関係者に評されるのは、全国各地で大規模太陽光発電所(メガソーラー)を運営する独立系運用会社のスパークス・グループだ。太陽光を含む再生エネルギー発電事業の運用資産は約800億円。そのスパークスが東京証券取引所のインフラファンド市場に太陽光ファンドを上場させようと準備を進めている。新市場をテコに新たな個人マネーを掘り起こすのが狙いだ。

インフラファンドの投資期間は長い。風力や太陽光を生みだす設備の耐用年数は20年。半面、当初は上場投資ファンドの利益に対する法人税の非課税期間が10年に限られ、投資家に返す十分な分配金を確保できなくなる懸念があった。

スパークス、インフラファンドで掘り起こす個人マネー(1月15日)

自然エネルギーに関わる金融商品を手掛けるリニューアブル・ジャパン(東京・港)は、東京証券取引所が2015年に開設した「インフラファンド市場」に参入する。太陽光発電ファンドを組成し、今夏にも東証へ上場を申請する。ファンドの資産は太陽光発電施設など100億円程度で始め、20年までに2000億円規模を目指す。

太陽光ファンド上場へ まず100億円規模、「インフラ市場」で(2月16日)

太陽光発電所の運営などを手掛けるネクストエナジー・アンド・リソース(長野県駒ケ根市)は、上場インフラファンドを組成する。東京証券取引所が2015年に開設した「インフラファンド市場」での上場を目指す。国内のメガソーラー(大規模太陽光発電所)十数件を資産に組み入れ、50億~100億円の資産規模で来年3月の上場を目指す。

ネクストエナジー、インフラ投信上場へ 太陽光発電組み入れ(6月2日)

メガソーラーファンドはインフラファンドの一種にすぎない。今後の関心は、空港などの公共施設を組み込んだ様々なタイプのインフラファンドが上場するかどうか。国内ではインフラを民間が運営する制度が導入されて間もなく、ようやく4月に関西国際空港と大阪国際(伊丹)空港の運営権が民間に売却されたばかりだ。

一から分かるインフラファンド 6月上場、利回りにメリット(5月15日)

空港運営権もインフラファンドの投資対象になりうる(関西空港)

空港運営権もインフラファンドの投資対象になりうる(関西空港)

■海外で先行、時価総額15兆円

海外ではインフラそのものに投資するだけでなく、公共施設の運営権を取得するケースも多い。国や地方自治体に所有権を残したまま、管理・運営する権利や料金を集める権利を得る。ファンドは利用料金の設定や徴収が可能になり、運営で得た利益を投資家の配当に回す。

インフラファンド 景気変動の影響、受けにくく(2013年12月7日)

タイ発電公社(EGAT)はバンコク北部のノンタブリ県にある複合火力発電所に投資するインフラファンドを設立し、タイ証券取引所に上場した。国営企業のインフラファンドの上場はタイで初めて。

インフラファンド「EGATIF」はEGATの発電所の売電収入などを受け取り、半期ごとに利益の9割以上を投資家に配当する。時価総額は210億バーツ(約740億円)にのぼる。

タイ発電公社、火力発電投資基金を上場(2015年7月30日)

オーストラリアや米国、カナダ、英国などでインフラファンドが上場している。投資対象のインフラも再生可能エネルギー関連に限らず、有料道路や空港、ごみ焼却施設や刑務所内の病院に至るまで幅広い。投資対象によってリスクやリターンの大きさは異なるが、安定したキャッシュフローなどを強みに2000年代に入ってから増加した。東京証券取引所によると、16年4月時点で世界で46銘柄が上場し、その時価総額は15兆円に達する。

一から分かるインフラファンド 6月上場、利回りにメリット(5月15日)

日本生命保険は海外のインフラファンドに今後2~3年で400億円を投じる。株式や債券より高い利回りが見込めるためで、住友生命保険も同様のファンドへの資金拠出を今年度から始める方針だ。日銀のマイナス金利政策で長期国債の利回りが低下しており、為替変動リスクを抑えた外国債券や成長が見込める分野に資金を振り向ける。

日本生命は発電所や上下水道、空港、有料道路を投資対象とするファンドに出資する「親ファンド」を設立。年10%以上の利回りを期待できる案件を選別して投資する。

日本生命、インフラファンドに400億円 16年度運用方針(4月22日)

日本郵政グループのかんぽ生命保険と第一生命保険は29日、海外での共同投融資などを柱とする業務提携を正式に発表した。総額80兆円のかんぽマネーのうち、まず100億円規模が海外インフラファンドなどに流れる。

かんぽマネー海外へ まず100億円、第一生命と提携発表(3月29日)

損害保険ジャパン日本興亜はカナダのオンタリオ州公務員年金基金や三菱商事が設けたインフラファンドに出資する。出資額は1億ドル(約120億円)で運用総額の1%弱。低金利が続く中、国内では運用収益の確保が難しい。比較的高い利回りが見込める成長分野への投資を増やす。

損保ジャパン日本興亜、インフラファンドに出資(2015年10月5日)

■海外のファンド、運用成績振るわず

インフラファンドの収益は景気に大きく左右されないため、一般的に株式などとの連動性が低く、資産に組み入れると分散効果が高まるとされる。ただ、人口の減少はインフラの需要減につながるため、投資家が満足できる収益を上げ続けるのは簡単ではない。「優遇税制や補助金による後押しが必要」(三井住友トラスト基礎研の福島氏)との指摘もある。

世界的な低金利を背景に企業年金や生命保険のマネーは上場、私募を問わずインフラファンドに流れ込んでいる。日本では年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)も海外でのインフラ投資を本格化させる計画。ただ資金流入の結果、妙味は薄れつつある。2004年からインフラファンドに投資してきたDIC企業年金基金の近藤英男運用執行理事は「新規案件では期待利回りが下がるなど過熱感も出てきた」と分析する。

一から分かるインフラファンド 6月上場、利回りにメリット(5月15日)

海外の上場インフラファンドを購入するのは、個人投資家にはやや敷居が高い。海外のインフラ関連投資から果実を得たいという日本の個人は、投資信託を利用する手がある。

ただ、実はインフラ関連投信の運用成績は足元では振るわない。

多くの投信が他の投信に投資する「ファンド・オブ・ファンズ」形式のため、信託報酬などコストがかさみやすいという問題もある。

一から分かるインフラファンド 6月上場、利回りにメリット(5月15日)

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