2019年8月26日(月)

日産・ルノー、世界1千万台へ執念 三菱自を傘下に

2016/5/16 18:00
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記者会見で握手する日産のゴーン社長(左)と三菱自の益子会長(12日、横浜市)

記者会見で握手する日産のゴーン社長(左)と三菱自の益子会長(12日、横浜市)

日産自動車が先月20日に燃費データの改ざんを公表したばかりの三菱自動車を傘下に入れ、日産主導で三菱自の経営再建を進めることを発表した。電撃的な決定の背景には、自動車業界の世界的な競争が激しくなるなか、トヨタ自動車グループなど上位3強の追撃へ世界販売1000万台達成に執念を燃やす日産・ルノー連合の思惑がある。

■不正発覚をきっかけに

日産自動車は12日、2016年内をメドに2370億円を投じて、三菱自動車の株式の34%を取得すると正式発表した。

会長を派遣し燃費データの不正問題に揺れる三菱自の再建を支援するほか、車の次世代技術の開発や両社の生産拠点を一体運用するなど連携を強化する。

12日に共同記者会見した日産のカルロス・ゴーン社長兼最高経営責任者(CEO)は「燃費不正にかかる消費者からの信頼回復に力を注ぐ」と強調した。

東南アジアなど新興国市場の開拓や購買部門の連携によるコスト削減を進めるほか、自動運転技術など幅広い分野で連携する。両社の国内外の生産拠点の相互活用も進める。

生産拠点を一体運営 日産、三菱自に会長派遣 2370億円出資(5月13日)

5年前に軽自動車事業で手を結んで以降、両社は良好な関係を続けてきた。不正発覚をきっかけに一気に資本提携にまで発展した。

再編早めた燃費不正 連休返上、交渉一気に(5月13日)

「久しぶりに高揚したゴーン社長を見た」。12日の三菱自との記者会見に寄り添った日産の幹部はつぶやいた。2010年の独ダイムラー以来の資本提携交渉入りの会見に臨んだゴーン社長は幾分興奮した表情だった。

今回の提携で三菱自の100万台を加え、日産・ルノーグループの世界販売台数は950万台を超える。トヨタやVWと肩を並べ、「1千万台クラブ」入りの布石を打った。

鋼板や樹脂製品などの購買力は増し、部品の共通化を通じて一段の原価低減効果も見込める。新興国開拓といった「面」での競争では規模拡大がものを言う。

しかし、世界の自動車業界の競争軸は規模拡大だけでは収まらない。

電撃再編 日産・三菱自(上) 世界1000万台へ新連合、規模の利益に執念(5月15日)

■中堅、単独での生き残り難しく

「燃費データの改ざんが見つかった。生産中止でご迷惑をおかけすることになる」。燃費不正を公表する2日前の4月18日、三菱自の益子修会長は横浜市の日産本社にゴーン社長を訪ねた。

社内調査の結果を報告し、謝罪した益子会長にゴーン社長はこんな言葉をかけた。「深刻な事態だが、なんとか乗り越えてほしい。日産は協力を惜しまない」

この瞬間から、ゴーン社長は三菱自への出資のシナリオを描き始めた。

インタビューに答えるゴーン社長(13日、横浜市)

インタビューに答えるゴーン社長(13日、横浜市)

三菱自の株価が急落するなか、同社の電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド(PHV)などの技術の獲得を狙って、中国企業が食指を動かしてくる懸念もあった。

三菱自が加わるルノー・日産連合のグローバル販売は1千万台に近づき、トヨタ自動車、独フォルクスワーゲン、米ゼネラル・モーターズを視界にとらえる。

電光石火ゴーン流 提携スピード合意 トヨタ超えに執念(5月14日)

環境規制の強化や自動運転車など次世代車の開発負担の増大から中堅の自動車メーカーは「単独での生き残りは難しくなっている」(益子会長)。

日本では昨年にマツダがトヨタと包括提携したほか、海外では自動運転車の共同開発でフィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)が米グーグルの持ち株会社のアルファベットと提携するなど異業種間での提携も相次いでいる。

生産拠点を一体運営 日産、三菱自に会長派遣 2370億円出資(5月13日)

■自動車業界、円高で逆風

国内の自動車大手7社の決算が出そろい、2017年3月期は為替の円高影響で合計1兆8000億円の営業減益要因となる見通しだ。

トヨタ自動車や日産自動車、ホンダなどは想定為替レートを前期比で年間約15円の円高水準となる1ドル=105円に置いた。

円安効果で潤ってきた自動車各社には追い風がやむ。

ホンダ、前期純利益32%減 今期、各社とも円高重荷に(5月14日)

それでも、世界トップのトヨタ自動車は競争力強化に向けて研究開発費や設備投資を増額する。

トヨタ自動車は2017年3月期に大幅な減益を見込む。東日本大震災などが響いた12年3月期以来、5期ぶりの減益だ。

逆風のなかでも今期の研究開発費は1兆800億円、設備投資は1兆3500億円と、前期比2~4%増やす。研究開発費は過去最高を見込む。

IT(情報技術)企業なども巻き込み自動運転やカーシェアリングなどの実用化・普及を目指す動きが加速。「モビリティー(移動手段)そのものが大きな転換点に差し掛かっている」との危機感は強い。

決算発表に臨んだ豊田社長(11日、東京都文京区)

決算発表に臨んだ豊田社長(11日、東京都文京区)

前期は米シリコンバレーに人工知能(AI)の研究所を新設するなど「自動車事業の枠に収まらない領域にも種をまいた」。米グーグルなどから研究者を引き抜き、開発体制を強化している。今後も短期の収益の変化にかかわらず、息の長い研究開発への投資を続ける方針だ。

リーマン・ショックの直後に就任した豊田社長ら現在のトヨタの経営陣には苦い記憶がある。

赤字転落を受け、設備投資を一気に5割以上減らすなど支出を急減。この結果、エンジンの改良など商品力の強化が遅れ、「当時、アクセルを踏み続けられたメーカーとの差がじわじわと広がった」(トヨタ幹部)。

トヨタ 逆風も投資増 研究費、過去最高に(5月12日)

■「車頼み」日本経済に危うさも

数少ない景気のけん引役である自動車の存在感がますます大きくなっている。製造業全体の出荷額に占める割合は2015年に初めて2割に達した。

プラザ合意があった1985年の自動車の出荷比率は13.6%。その後、海外生産を拡大させる一方で出荷額を伸ばし、2002年にはパソコンや半導体などの電機産業を追い抜いた。

日本経済の自動車依存はますます強まっていく公算が大きいが、そこには危うさが潜む。

若者の自動車離れなどで国内販売は先細りが避けられず、各社は新興国など需要が伸びる地域で生産する「地産地消」にかじを切る。「一本足打法」が揺らげば景気はいっそう不安定になる。

強まる「車頼み」に危うさ 15年出荷額、製造業の2割(5月16日)

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