東大と横浜市大など、たった一つのアミノ酸変異で先天性希少疾患を起こす機序を原子のレベルから解明
発表日:2023年01月14日
たった一つのアミノ酸変異で先天性希少疾患を起こす機序を原子のレベルから解明
1. 発表者:
栗原 由紀子(東京大学大学院医学系研究科 分子細胞生物学専攻 代謝生理化学分野 講師)
栗原 裕基(東京大学大学院医学系研究科 分子細胞生物学専攻 代謝生理化学分野 教授)
浴本 亨(横浜市立大学大学院生命医科学研究科 生命医科学専攻 助教)
池口 満徳(横浜市立大学大学院生命医科学研究科 生命医科学専攻 教授)
Christopher T. Gordon(INSERM;Institut Imagine and Universite Paris-Cite 研究員)(◇)
Jeanne Amiel(INSERM;Institut Imagine and Universite Paris-Cite, Hospital Necker-Enfants Malades チームリーダー)(◇)
◇「Christopher T. Gordon(INSERM;Institut Imagine and Universite Paris-Cite 研究員)」「Jeanne Amiel(INSERM;Institut Imagine and Universite Paris-Cite, Hospital Necker-Enfants Malades チームリーダー)」の正式表記は添付の関連資料を参照
2. 発表のポイント:
◆先天性希少疾患である「脱毛症を伴う顎顔面骨形成不全症」を示すエンドセリンA受容体(Gタンパク質共役受容体;GPCRの1つ)変異症例の発症メカニズムを、モデルマウス、薬理実験、分子動力学(MD)シミュレーションを駆使して解明しました。
◆受容体の1アミノ酸変異によって、生体において正常ではほとんど結合しないリガンドが強く結合することでヒトの症状が発症することを証明しました。そしてそのメカニズムが、リガンド結合部位から離れている変異がアロステリックにリガンド結合に影響を与え、リガンドの乖離を阻害し結合性を増加させることを明らかにしました。
◆今回解明したエンドセリンA受容体変異の発症機構は、多くのGPCRの活性化に共通するメカニズムと考えられます。すなわち、細胞のシグナル伝達を担う主要な受容体であるGPCRは薬のターゲットの1/3以上を占めていることから、GPCR活性化機序を詳細に明らかにしたことは創薬のデザインにも大きく貢献すると考えられます。
3. 発表概要:
特定の遺伝子異常が原因の希少疾患はいろいろ知られていますが、その発症メカニズムの多くは解明されていません。今回、東京大学大学院医学系研究科代謝生理化学分野 栗原由紀子講師らのグループと、INSERM(フランス国立衛生医学研究所)、横浜市立大学大学院生命医科学研究科との共同研究で、原子のレベルから顎顔面骨形成不全症を示すエンドセリンA受容体変異の発症機序を解明しました。この受容体タンパク質は、ヘリックスの細胞内側の1つのアミノ酸の荷電が変化して周囲との水素結合が失われると大きく動くようになり、ヘリックスの細胞外側のリガンド結合部位の構造に影響を与え、新たな機能を獲得することがわかりました。ヒト希少疾患の発症機構について、遺伝子改変マウスや薬理の実験系とスーパーコンピューターを用いた理論系をうまく組み合わせて理解できた良い成功例となりました。
※以下は添付リリースを参照
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「Christopher T. Gordon(INSERM;Institut Imagine and Universite Paris-Cite 研究員)」「Jeanne Amiel(INSERM;Institut Imagine and Universite Paris-Cite, Hospital Necker-Enfants Malades チームリーダー)」の正式表記
https://release.nikkei.co.jp/attach/647358/01_202301111532.pdf
添付リリース
https://release.nikkei.co.jp/attach/647358/02_202301111532.pdf