東大・九大・大同大、常温常圧の極めて温和な反応条件下で可視光エネルギーを用いて窒素ガスをアンモニアへと変換することに成功
発表日:2022年12月01日
常温常圧の極めて温和な反応条件下で、可視光エネルギーを用いて窒素ガスをアンモニアへと変換することに世界で初めて成功!
1.発表のポイント:
◆常温・常圧の温和な反応条件下で、可視光をエネルギー源とした、窒素ガスからアンモニアを合成する世界初の反応の開発に成功した。
◆イリジウム光酸化還元触媒とモリブデン触媒を組み合わせて用いて、窒素ガスと水素供与体を可視光照射下で反応させることでアンモニア合成反応が進行することを発見した。
◆本研究成果は、再生可能エネルギーである可視光エネルギーをエネルギーキャリアとして期待されるアンモニアに貯蔵することが可能であることを示した極めて興味深いものである。
2.発表概要:
アンモニア(注1)は、取り扱いの容易さ、高いエネルギー密度、燃焼しても二酸化炭素を排出しないことから最近ゼロエミッション燃料およびエネルギーキャリアとして有望視されている。しかしながら、現状のアンモニア合成法では、窒素ガスと水素ガスとを高温高圧の極めて厳しい条件下、鉄系触媒を利用して反応させることでアンモニアを合成している(図1a、ハーバー・ボッシュ法、注2)。ハーバー・ボッシュ法は工業的なアンモニア合成法であるが、水素ガスの原料として石油・石炭・天然ガス等の化石燃料に依存しており、人類が地球上で消費する全エネルギーの数%を消費するエネルギー多消費型プロセスである。東京大学大学院工学系研究科の西林仁昭教授らの研究グループ、九州大学先導物質化学研究所の吉澤一成教授らの研究グループ、大同大学の田中宏昌教授らの研究グループは以前に、PCP(リン−炭素−リン)型ピンサー配位子(注3)を有するモリブデン錯体が、常温常圧の温和な反応条件下で窒素をアンモニアに変換する極めて高活性な触媒として働くことを見出している(図1b)。今回同グループは、上記のアンモニア合成に用いたものと同一の触媒を用い、さらに可視光を化学変換に利用できるイリジウム光酸化還元触媒(注4、以下光触媒)と組み合わせることで、通常では進行しない窒素分子と水素供与体(注5)であるジヒドロアクリジンからのアンモニア合成反応を、常温常圧の極めて温和な反応条件下、可視光のエネルギーで進行させることに成功した(図1c)。これは、可視光エネルギーを駆動力として分子触媒を用いて窒素ガスからアンモニアを触媒的に合成することに成功した世界初の例である。本研究の成果は、再生可能エネルギーを利用したグリーンアンモニア(注6)合成反応の開発に向けて、重要な指針となるものであると期待される。
本研究成果は、2022年12月1日(イギリス時間)に「Nature Communications(ネイチャー・コミュニケーションズ)」(オンライン速報版)で公開される予定である。
※以下は添付リリースを参照
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添付リリース
https://release.nikkei.co.jp/attach/644965/01_202211291443.pdf