NICT・京大・東芝・ZenmuTech、量子セキュアクラウドによる高速安全なゲノム解析システムの開発に成功
発表日:2022年11月17日

量子セキュアクラウドによる高速安全なゲノム解析システムの開発に成功
〜従来不可能だった情報理論的安全で高速な処理を実現〜
【ポイント】
■量子セキュアクラウドによるゲノム解析を情報理論的安全かつリアルタイムに実施できるシステムを開発
■フィルタリング機能により、解析・治療に不必要な個人情報の保護が可能
■今後、患者のMRI画像などの重要データを安全に利活用できるデータプラットフォームとして期待
国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT(エヌアイシーティー)、理事長: 徳田 英幸)、国立大学法人京都大学(総長: 湊長博)、株式会社東芝(代表執行役社長 CEO: 島田 太郎)、株式会社 ZenmuTech(代表取締役社長 CEO:田口 善一)は、量子セキュアクラウド(*1)(量子暗号(*2)ネットワーク上に秘密分散(*3)を組み合わせた分散ストレージシステム)にゲノム解析専用装置を装備し、全ゲノムデータの安全な伝送・保管・解析をリアルタイムで実施できるシステムの開発に成功しました。
安全なデータの解析手法として開発されている準同型暗号(*4)を用いたものやマルチパーティ計算(*5)では扱うことがほぼ不可能であった全ゲノムデータに対し、情報理論的安全な暗号化処理を施すことにより、ゲノム解析専用装置の処理速度を損なうことなく、情報理論的安全なデータ解析を実現しました。また、解析や治療に不必要な個人情報に対し、フィルタリング機能を実装しており、個人情報を保護しつつゲノム解析を実施できるシステムが完成しました。
今後、本技術は、超長期に保管が必要な患者のMRI画像データなどの安全な利活用を可能とするデータプラットフォームとして活用されることが期待されています。
なお、本成果は、2022年11月2日(水)に、英国科学雑誌「Scientific Reports」に掲載されました。
【背景】
個人のゲノムデータは究極の個人情報であり、超長期に秘匿性を担保しつつ利用する必要があります。しかし、現時点では従来の暗号技術での秘匿化に留まっており、2030年頃に実現されるといわれているフルスケール量子コンピュータを用いれば解読されるおそれがあります。今、解析が困難としても、保管されているデータも将来攻撃されるリスクがあり、十分な対策が取られていないのが現状です。
例えば、従来から知られている安全なデータ処理方法として、秘密計算が挙げられます。秘密計算は、データを一切復号することなく秘匿したまま処理し、その出力も秘匿したまま得られるので、入力から出力まで一貫して安全なデータ処理を実現できる一方、計算リソースや通信リソースを多く必要とするという欠点がありました。秘密計算の一手法であるマルチパーティ計算では、データを秘密分散した状態で各種演算を実行可能ですが、複数サーバ間で大量の通信が必要となります。また、別の秘密計算手法である準同型暗号を利用した手法においては、その処理に大量の計算リソースが必要となります。そのため、いずれの秘密計算の手法においても、全ゲノム解析などの大容量かつ非構造化データに対し、四則演算よりも複雑な処理を可能とする実装は現時点において実現していません。
※図は添付の関連資料を参照
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図
https://release.nikkei.co.jp/attach/644281/01_202211171713.JPG
添付リリース
https://release.nikkei.co.jp/attach/644281/02_202211171713.pdf