理研とハーバード大など、国際ゲノム解析により関節リウマチの遺伝的背景を解明
発表日:2022年11月10日

国際ゲノム解析により関節リウマチの遺伝的背景を解明
−個人のゲノム情報を活用した発症予測の社会実装に貢献−
理化学研究所(理研)生命医科学研究センターヒト免疫遺伝研究チームの石垣和慶チームリーダー、大阪大学大学院医学系研究科の坂上沙央里助教(ハーバード大学医学部博士研究員)、理研生命医科学研究センターゲノム解析応用研究チームの寺尾知可史チームリーダー、東京大学大学院新領域創成科学研究科の松田浩一教授、京都大学大学院医学研究科の松田文彦教授、産業医科大学医学部の田中良哉教授、大阪大学大学院医学系研究科の熊ノ郷淳教授、東京医科歯科大学難治疾患研究所の高地雄太教授、東京女子医科大学医学部の猪狩勝則特任教授、理研生命医科学研究センター自己免疫疾患研究チームの山本一彦チームリーダーらが参加し、理研生命医科学研究センターシステム遺伝学チームの岡田随象チームリーダー(大阪大学大学院医学系研究科教授)とハーバード大学のショウモウ・レイチャウドリ教授らが統括する国際共同研究グループは、関節リウマチの発症に関わる34個の遺伝的変異を新たに同定しました。
本研究成果は、関節リウマチの新しい治療標的の同定や、個人の遺伝情報に基づく個別化医療の発展に貢献すると期待できます。
今回、国際共同研究グループは、日本人集団を含む五つの人種集団から構成される約28万人のゲノム解析を行い、関節リウマチの発症に関わる34個の遺伝的変異を新たに同定しました。さまざまなデータベースとの統合解析を行うことで、関節リウマチの発症に関与する分子メカニズムを多数解明しました。さらに、個々人の遺伝子情報から関節リウマチの発症を予測するリスクスコアを構築し、東アジア人集団における予測精度が欧米人集団と同程度であることを確認しました。
本研究は、科学雑誌『Nature Genetics』オンライン版(2022年11月4日付)に掲載されました。
※参考画像は添付の関連資料を参照
■背景
関節リウマチは、免疫システムが関節組織を破壊して機能が損なわれる原因不明の疾患です。関節リウマチの発症には、多くの遺伝的変異(リスク変異)が関与することが知られています。そのため、ゲノムワイド関連解析(GWAS)[1]によってリスク変異を同定する研究が欧米を中心に行われてきました。しかし、大半のリスク変異の影響は非常に小さいため、従来のGWAS研究では一部のリスク変異しか同定できませんでした。また、単一の人種集団を対象とするGWASでは、ゲノム上の近傍に位置する遺伝的変異間の相関関係のため、リスク変異をピンポイントで同定することは一般的に困難であり、その局在も不明瞭でした。一方、多くの患者・健常者のサンプルを多人種集団のコホート(集団)から集め、大規模にGWASを実施することで、変異間の相関関係の影響が緩和され、より多くのリスク変異を高い精度で同定できることが知られています。
近年、欧米人集団を対象に大規模なGWASが多数実施され、その解析結果は、疾患発症の予測などの目的で、臨床現場で実用性が示されつつあります。一方、遺伝的変異の分布には人種差があるため、欧米人集団での解析結果を日本人集団に応用できる範囲は限定的です。そのため、日本において関節リウマチのゲノム医療を実現するためには、多くの東アジア人集団をGWASの対象に含めることが必須だと考えられています。
このような背景から本研究では、日本人集団を含む東アジア人集団など五つの人種集団を対象とした関節リウマチのGWASを過去最大規模で実施しました。
※以下は添付リリースを参照
リリース本文中の「関連資料」は、こちらのURLからご覧ください。
参考画像
https://release.nikkei.co.jp/attach/643842/01_202211101519.jpg
添付リリース
https://release.nikkei.co.jp/attach/643842/02_202211101519.pdf