横浜市大、神経筋疾患の原因となるリピート伸長病の正確・迅速な遺伝子診断法を開発
発表日:2022年10月26日
神経筋疾患の原因となるリピート伸長病の正確・迅速な遺伝子診断法を開発
横浜市立大学附属病院 遺伝子診療科 宮武聡子准教授、同大学大学院医学研究科 遺伝学輿水江里子特任助教、藤田京志助教、松本直通教授らの研究グループは、ナノポアシーケンサー(*1)を用いて、リピート伸長病(*2)の原因となる病的なリピート伸長変異を網羅的に検出する手法を開発しました。この手法は、ターゲットロングリードシーケンス法(Targeted Long-Read Sequencing : T-LRS)(*3)を利用しており、従来法に比べて、簡便で正確なリピート伸長病の診断が可能になります。
本研究成果は、ネイチャー・パブリッシング・グループが刊行する科学雑誌「npj Genomic Medicine」に掲載されます。(日本時間2022年10月26日18時)
[研究成果のポイント]
● リピート伸長病の原因となる全遺伝子領域を効率的・網羅的にシーケンスする解析法を構築した。
● 病的リピート伸長がある神経筋疾患12症例に対して本解析を施行し、全例で正確に診断可能であった。
● 臨床的に脊髄小脳変性症と診断され、遺伝学的に未診断の10症例に対して本解析及び従来法を別々に施行した。6例で遺伝子診断に至り、従来法では判定困難だった2症例についても精密な判断が可能であった。
● 網羅性、迅速性、正確性の点で優れた解析法である。
■研究背景
リピート伸長病は、遺伝子内の縦列反復配列(タンデムリピート(*4))の異常伸長変異を原因とする疾患群です。疾患群の多くは、ショートタンデムリピートと呼ばれる、多くは3から6塩基の反復ユニット配列が、正常多型の範囲を超えて伸長することが原因となります。現在60種類程度の疾患関連リピート伸長配列が発見されていますが、その多くは神経筋疾患の原因になることが分かっています。
近年、様々な遺伝性神経筋疾患に対して、根本治療につながる治療法が開発されつつあります。このような治療法を選択・提供するためには、正確な遺伝子診断が不可欠なため、精度の高い診断法のニーズが高まっています。しかしリピート伸長配列は、配列の特性上、従来のPCR法(*5)を主体とするゲノム解析法が困難でした。とりわけ従来法では、候補となる疾患に特化した解析しかできない(1疾患解析)ため、リピート伸長病を疑って遺伝子検査を行う場合、原因となる遺伝子領域ごとに解析法を最適化し、複数の手法を組み合わせて診断する必要があり、解析に時間を要し非効率でした。また、PCR抵抗性で病的なリピート伸長を正確に特定できない場合もあり、診断法に限界もありました。
近年開発されたロングリードシーケンス技術は、PCR法では解析が困難なリピート伸長配列を含むゲノム領域を一続きの配列として解読でき、リピートを構成する塩基配列の決定に優れています。従来法では、病的なリピート伸長の部分的な配列しか捉えることができなかった遺伝子領域でも、この技術を用いることで、リピート伸長配列の全長解読が可能となりました。
※以下は添付リリースを参照
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添付リリース
https://release.nikkei.co.jp/attach/642887/01_202210261426.pdf
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