東北大・名大・九大、ビッグバン宇宙を実験室で再現できる理論を構築
発表日:2022年05月17日
ビッグバン宇宙を実験室で再現できる理論を構築
トポロジカル物質を使った極限宇宙シミュレータの理論
【発表のポイント】
● トポロジカル物質の一種である量子ホール状態のエッジ(注1)を膨張させることで、ビッグバン宇宙の始まり(注2)で起こる物理を検証できる理論を構築しました。
● ホーキング博士らが予言していた、急膨張するインフレーション宇宙(注3)で起こるホーキング輻射(注4)や、宇宙の構造形成(注5)の起源を擬似実験として検証できる可能性も示しました。
● これらの手法と理論により、従来の天文観測や大規模加速器実験に頼らない、極限宇宙の新しい検証実験への道が開かれました。
【概要】
ビッグバン宇宙の始まりやブラックホール(注6)を理解するために、量子力学と一般相対性理論の統一を目指した量子重力(注7)に関する理論研究が進められ、それらの理論検証には天文観測や高エネルギー加速器実験等の大がかりな実験研究が進められています。
東北大学大学院理学研究科物理専攻の堀田昌寛助教、遊佐剛教授、名古屋大学理学研究科素粒子宇宙物理学専攻の南部保貞准教授、九州大学理学研究院物理学部門の山本一博教授と杉山祐紀さんの研究グループは、量子力学が重要な役割をする初期宇宙の原理的な問題を検証できるシミュレータを、半導体で作成可能であることを理論的に示しました。ここで提案されているのは量子ホール状態とよばれるトポロジカル物質の端を一方向に流れる1次元の電子(エッジ)です。今回の成果は、膨張宇宙でも現れるとされるホーキング輻射や、宇宙の構造形成、AdS/CFT対応(注8)などを実験的に検証する道筋を示した重要な結果です。また、トポロジカル物質に関する新しい物質物理学の窓を拓くことも同時に期待されます。
本研究成果は専門誌Physical Review D誌(オンライン版)に2022年5月13日(米国東部時間)に公開されました。
※以下は添付リリースを参照
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添付リリース
https://release.nikkei.co.jp/attach/632381/01_202205171155.pdf