関西電力、社長が不正閲覧陳謝 23年3月期は赤字縮小へ

関西電力は31日、2023年3月期の連結最終損益が450億円の赤字(前期は858億円の黒字)になりそうだと発表した。1450億円の赤字を見込んでいた従来予想から赤字幅を縮小する。液化天然ガス(LNG)などの燃料費が想定より低く推移し、円安の是正も寄与する。顧客情報の不正閲覧問題に関し、森望社長は「公正な競争を揺るがすもので深くおわび申し上げる」と陳謝した。
30日に自動停止した高浜原子力発電所4号機(福井県高浜町)については原因を調査する。森社長は「(再稼働など)具体的なスケジュールを話すのは難しい」と話した。火力発電の拡大などで対応し、足元の電力需給への影響は限定的としている。
23年3月期の業績予想については、為替変動と燃料価格の低下などが前回予想から1100億円の増益要因となる。通期の原油価格の見通しを1バレル当たり3ドル下げ、想定為替レートを1ドル当たり3円円高に修正した。ドルに対して1円円高になると年97億円の費用が減る。売上高は前期比42%増の4兆500億円と、前回予想を1000億円下方修正した。燃料価格の低下に連動して収入が減少する。
高浜原発4号機が停止した影響は業績予想に織り込んでいない。1カ月止まると今の燃料市況前提で95億円の費用増につながるという。

東京電力などが家庭向けの規制料金の値上げを申請する中、関西電力は表明していない。足元で価格転嫁できない費用は23年3月期通期で720億円程度と見込む。森社長は値上げについて「できる限り顧客の負担が増えない方向で進めていきたい」とし、現時点では「値上げをするしないは決まっていない」と話した。
関電は子会社が持つ新電力の顧客情報を関電の営業部門が閲覧していたことが22年末に発覚し、他電力と法人向けでカルテルを結んだことも明らかになっている。森社長は「顧客からの信頼を失っていることは間違いない」と語った。不正閲覧問題を巡っては森社長を本部長とする緊急対策本部を設置したと公表した。森社長は「根底にある課題の抜本的な解決」を目指すとした。また「多くの社員が長期間にわたって続けてきた」(森社長)とし、不正閲覧が組織的だったと事実上認めた。
元役員らが原子力発電所の立地自治体の元助役(故人)から金品を受領していた問題が19年に発覚後、関電はコンプライアンスを重視する方針を示してきた。しかし、森社長は「道半ばだった」と認めた。自身も含む関係者の処分については「会社としての責任がある」とした上で「調査や原因究明が進められた後に結果を踏まえて判断する」と話した。
31日に発表した22年4〜12月期決算は、売上高が前年同期比42%増の2兆7731億円、最終損益は1244億円の赤字(前年同期は735億円の黒字)だった。
森社長は記者会見で原発の建て替えなどについては「(投資回収の)予見性を持って進められる、事業環境整備が必要だ」との見方を示した。