/

パナソニック、長期視点の経営に転換 利益率目標示さず

(更新)

パナソニックが1日、半年後の持ち株会社移行を見据えた体制に切り替えた。電池など主力の8つの事業会社ごとに経営を管理する。同日記者会見した楠見雄規社長は「(利益などの)結果数値で管理しない」方針を示した。利益や時価総額が競合に比べ見劣るなか、新たに事業ごとに競争力向上につながる指標を設定し、長期的な視点で復活につなげる。

楠見氏は会見で「事業戦略の推進のアプローチを変える」と、津賀一宏前社長の経営路線を転換する姿勢を鮮明にした。

パナソニックは2012~21年まで社長を務めた津賀氏の下、売上高営業利益率5%を経営目標に据えてきた。楠見氏はそれが「事業部には足切りラインのように受け止められた」と振り返る。

事業部では目標達成に向けて無理な受注や投資の先送りなどを繰り返し帳尻合わせの数字を作るようになった。結果として大胆な投資などを打ち出した海外勢に比べて競争力を失い、「過去30年間、パナソニックは成長していない」停滞につながっているとの分析だ。

そこで売上高や営業利益など結果として表れる財務指標だけで管理するのをやめ、事業ごとに競争力の向上につながる指標まで落とし込んで管理するように変える。

例えば車載電池では、設備の導入コストや稼働率、製造現場での省人化率などに細分化した非財務指標で管理する。

楠見氏は「各事業に大きなポテンシャルがあるが、どの事業にも改善の余地はある」と、管理手法を変えることで潜在力を引き出すことを狙う。「基幹事業」「再挑戦事業」などの区分もなくし、各事業が横一線で成長を模索する。

各事業ごとの目標を設定する上で進めるのが、10年後のゴールの仮説から逆算する視点だ。30強ある事業単位の責任者である事業部長は3~5年程度で異動になることが多い。事業会社のトップを含め、自身の任期中でなく、先を見据えた「10年の計」で目標を定めるように求める。

「IT(情報技術)が経営のスピードアップに貢献できていない」(楠見氏)のも課題だ。1日にはファーストリテイリングで最高情報責任者(CIO)を務めた玉置肇執行役員をトップとするプロジェクトも立ち上げた。デジタルトランスフォーメーション(DX)での挽回につなげる。

重視してきた環境関連では、自社拠点での二酸化炭素(CO2)排出量削減に加え、機器やサービスを活用して他社の削減支援に取り組む方針を表明。「自社排出量を上回る規模で他社の排出量を削減する」(楠見氏)考えだ。

収益力、競合の背中遠く 事業モデル転換に遅れ 

赤字事業の売却などでパナソニックはビジネスモデルの改革に出遅れたことが収益性の低下につながっている。

祖業の家電事業は売り上げ規模は世界大手の一角を占めるが、利益率は低迷する。

同事業の4%の利益率は、売上高が同規模の韓国・LG電子や米ワールプールの半分程度。売り上げ規模の大きい韓国・サムスン電子や中国・美的集団にも及ばない。電子部品も専業の村田製作所が20%に迫るのに対し、2桁に満たないのが現状だ。

市場が急拡大する電気自動車(EV)では水平分業の一角として車載電池を手がけるが、収益性・成長性ともに競合に見劣りする。

同事業の利益率は5%程度を見据える水準まで回復したが、競争激化で逆に売上高成長率が横ばい圏にとどまる。

全体でみると2021年3月期の売上高営業利益率は4%にとどまる。赤字事業の売却などで改善傾向だが、ソニーグループ(11%)の背中は遠い。

22年4月に取り入れる持ち株会社制は、事業会社が本体から権限を委譲されることで、思い切った成長戦略を打ち出せるようになる。一方で「遠心力を働かせようとしている人たちもいる」と打ち明ける幹部もおり、もろ刃の剣の面もある。

長期視点での経営になればグループとしてのガバナンスは従来より難しくなる。いかに放漫経営にならず、メリハリある投資と独立経営を両立させるか。「今後の発展の礎を築く」と話す楠見氏には難しいかじ取りが求められる。

(岩戸寿)

すべての記事が読み放題
有料会員が初回1カ月無料

関連トピック

トピックをフォローすると、新着情報のチェックやまとめ読みがしやすくなります。

セレクション

トレンドウオッチ

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
新規会員登録ログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
新規会員登録 (無料)ログイン
図表を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した図表はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン