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花火、夜空を彩る「黒い星」 ビジュアルで迫る現場

現場探究

「My花火大会」で打ち上げられた花火(大阪府泉南市)

7月2日午後8時。大阪府泉南市にある「泉南りんくう公園」の海岸で、約100発の花火が打ち上げられた。色や形、音が異なる花火が次々と夜空を彩り、観客から「イヨーッ」とかけ声が上がった。

これは葛城煙火(大阪市)のグループ会社が企画した「My花火大会」の一コマ。有志が主催者として発注する打ち上げ花火で、この日は経営者仲間と家族の約30人が集まった。幹事役の坂本崇さん(38)は「メンバーの誕生日を祝うイベント。新型コロナウイルス禍で大きな花火大会が軒並み中止になったので、子供たちにも見せたかった」と話す。

花火をつくっているのは葛城煙火の奈良工場(奈良県香芝市)。色を出す炎色剤などの原料を混ぜ合わせる「配合」、釜のような設備で火薬を球状の「星」にする「星掛け」などの工程を経て「玉込め」に移る。打ち上げ時の点火はコンピューター制御だが、製造工程はほとんどが手作業だ。

火薬を球状にした「星」の配置を確かめながら慎重に詰めていく=大岡敦撮影

玉込めは半球状の花火玉に星を詰める工程で、製造部課長の職人、浜辺真人さん(32)が壁に向かって取り組んでいた。静電気や火花が発生して火薬に引火しないよう、竹製のピンセットで丁寧に星を並べていく。星の配置が夜空で「開花」したときの花火の形になるので、星の位置を確かめながら慎重に作業する。

火花や静電気が発生しにくい木や竹の道具を主に使用する

星と星の間には粉状の割薬(わりやく)を詰める。割薬は星に着火して飛ばす役目の火薬。星も割薬も着火前は黒いので素人目には料理用のボウルに炭を詰めているように見える。だが浜辺さんは、夜空で華やかに展開する花火を思い浮かべながらつくっている。

半球同士を合体させてテープで止める

詰め終えたら半球同士を合体させて球にし、紙製のテープで貼り合わせてクラフト紙で包む。乾燥させて完成だ。浜辺さんは点火も担当しており、自分でつくった花火の出来栄えを確認して次の花火づくりに生かす。観客の反応も気になるという。「花火に見入っているときはいいが、世間話が始まると……」

葛城煙火の古賀章広社長

葛城煙火は1950年の創業で、社長の古賀章広さん(45)は3代目。「『花火を見ると楽しい。元気になる』という原点は変わらないが、製品や演出は時代に合わせて変えていく」と語る。新製品では自らもロケット花火とパラシュート花火を一体化した昼用花火を開発した。モノづくりの技能伝承も「最低限のことは教えるが、あとは自分で挑戦させる」。

My花火大会で新たな市場の開拓を目指す

企画・演出面では、花火50発で総額約30万円から受注するMy花火大会で新たな市場を開拓しようとしている。煙火部部長の樋口豪さん(41)は「プライベートな花火大会の需要が高まっている」と話す。2020年には光る衣装を着たダンサーたちが花火の前で踊るパフォーマンス「花光舞(かこうぶ)」を始めた。

あらかじめプログラムを組み、点火器で打ち上げをコントロールする

日本最古といわれる両国の花火打ち上げは江戸時代、コレラの犠牲者の慰霊と悪病退散を祈って行われたという。葛城煙火は毎年夏、大阪市で天神祭の奉納花火打ち上げの一翼を担っていたが、コロナの影響で昨年、今年と花火は中止になった。古賀社長は「コロナが終息した後、多くの花火大会で再び選ばれるように会社を進化させたい」と話す。

(塩田宏之)

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