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アートあるところに人は集まる 榊田隆之さん

関西のミカタ 京都信用金庫理事長

さかきだ・たかゆき 1960年京都市生まれ。15歳から4年間、米国の全寮制高校に留学。授業では「作曲」も履修。84年上智大外国語卒。日本輸出入銀行(現・国際協力銀行)を経て、85年に京都信用金庫入庫。2018年から理事長。

■「コミュニティ・バンク」の登録商標を持ち、まちづくりや地域おこしのプロジェクトに次々と参画している京都信用金庫。理事長の榊田隆之さん(61)にまたひとつ新しい肩書が加わった。6月末に一般社団法人となった「BASE(Bank for Art Support Encounters)」の代表理事だ。京都市内の小劇場やミニシアターなど5つの芸術発信拠点とともに新型コロナウイルス禍で窮地に追い込まれている芸術活動を応援する新たな仕組みをつくる。

民間の芸術発信拠点はひとつひとつが中小企業。脆弱な財務基盤の中、ギリギリのところでやりくりしている。「人が集まれない」状況で実際、小劇場やミニシアター、ライブハウスやギャラリーなど多く民間拠点が苦境に立たされている。

アートがあるところに人は集まり、文化的な時間を共有して、交流が始まる。コミュニティーづくりにアートは大きな力を持っている。京都信金としては今回のBASEも含めて、コミュニティーを豊かにしていくことに貢献していきたいと考えている。京都が文化都市であり続けるため、地域金融機関が果たすべき役割をきちんと果たしていきたいという思いで代表理事を引き受けた。

■BASEは自前の収益事業などで基金を創設し、広く民間の芸術発信拠点を応援する仕組み。アーティスト本人ではなく、アーティストを育むためにある拠点の支援に特化する全国でも珍しい取り組みになる。

5拠点の代表者から話があったのは感染拡大第1波の真っただ中の2020年5月だった。厳しい状況をわかってくると、5拠点を応援するだけでいいのか、「お金を出しますよ」という役割だけでいいのか、と次々に疑問が浮かんできた。じっくり話し合った結果、京都全体で芸術を応援しよう、将来も京都から若いアーティストが育っていくための「座組」をしっかりとつくろう、ということになった。

そのために基金をつくり、そこから毎年、いくらかのお金を民間の芸術発信拠点に助成していく。アーティストの支援では様々な顕彰制度があるものの、アーティストを育むために設けられている小劇場やライブハウス、ギャラリーに対しての支援は盲点となっていた。

アーティストとなった彼ら、彼女たちが世に出て行った場所、飛躍への足掛かりとした場所、そうした芸術創造発信拠点への支援にBASEは特化する。こうした取り組みは全国でも初めてだろう。

5つの芸術発信拠点の代表者と2月に開いた記者会見で「BASE」の立ち上げを発表した(写真中央)

■収益事業の柱はビジネスパーソン向け芸術発想講座。クリエーティブな発想を促す「アート思考」習得のための独自の有料講座を22年の年明け早々にもスタートする。

現在は日本財団の助成金3000万円をベースに最初のひと転がり目の準備をしている。ビジネスパーソンが対象の「BASE ART CAMP」は最短でも半年間、座学ではなく、自分で体験し、自分でつくっていく研修内容にする。自身のビジネスの未来を脚本に仕立て、映画を1本撮るという最終的なアウトプットがあってもいいと思う。

クリエーティブな発想はビジネスでも欠かせない。ビジネスパーソンのくくりは経営者に限らず、一般の社員や起業家、起業家予備軍の大学生など広い範囲で捉えていく。収益事業かどうかは別として、中学生や小学生にも「アート思考」に触れる機会を提供していきたい。

5つの拠点を中心に「BASE ART PROGRAM」と呼ぶイベントも仕掛けていく。収益事業への参加者の募集、寄付・クラウドファンディングの呼び掛けでは信用金庫のネットワークも生かしていける。芸術発信拠点への助成は収益事業のスタートからは一呼吸、遅れるだろう。まずは3年くらいかけて、収益事業をてこに1億円、2億円、3億円と地道に基金を積み上げていく。

京都市内では梅小路京都西駅エリアなどで「アート」を切り口にした再開発が進んでいる。それぞれのエリアが「アート思考」の人々にとって、居心地のいい場所となっていけば、文化都市・京都としての魅力は一層高まる。BASEの活動がそうしたまちづくりと関わり、重なっていけば面白い。(聞き手は池光靖弘)

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