「甲子年」の銘文入り鉄刀 熊本で発見、604年製作か

熊本市と熊本大は、熊本城跡(同市中央区)の敷地から昨年4月に出土した鉄刀を分析した結果、「甲子年」を含む6文字の象眼の銘文が見つかったと発表した。6文字は「甲子年五□□」で、最後の2文字は「月中」とみられる。古墳時代の横穴群付近で発見されたことや、鉄刀の装飾などの特徴から、甲子年は西暦604年に製作したことを示す可能性が高いとしている。

鉄刀は全長約55センチで、銘文は真ん中に近い部分にあった。市などによると、銘文が入った古墳時代の鉄の刀剣出土は全国的にも珍しい。これまでに埼玉や千葉、島根など7県7例が確認されている。
兵庫県養父市の古墳からも西暦608年が有力視される「戊辰年」の銘文が入った鉄刀が出土している。熊本市の熊本城調査研究センターの林田和人主査は「異なる場所で同じ時期に同じような鉄刀が見つかった。当時の社会状況などを調査する手がかりになる」と話す。
当時は聖徳太子が活躍した時代にも重なり、刀剣は中央政府から承認の証しとして与えられるものとされる。
出土地点付近には、1962年の旧NHK熊本放送局建設工事の過程で見つかった10基の横穴群がある。史跡整備の際に出土し、CTスキャンで解析を進めていた。
市は今後、象眼に使われた金属の解析を進めるほか、見つかったエリアの調査を継続する。〔共同〕