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カネミ油症救済法10年、子や孫の認定進まず 記憶風化も

1968年に西日本一帯で起きた食品公害「カネミ油症」の被害者救済法は29日で成立から10年を迎えた。同法に基づく救済策では国の健康実態調査に協力した認定患者への年計24万円の支援金支給などが決定。患者の認定基準も見直され、国と原因企業、被害者による協議の枠組みも設けられた。一方、子や孫など次世代の認定問題のほか、被害者の高齢化による記憶の風化をどう防ぐかなど課題は山積している。

「納得いかない部分もあったが、やっと公的救済にこぎつけた」。認定患者、下田順子さん(61)=長崎県諫早市=が同法成立時を振り返った。

カネミ倉庫(北九州市)製の米ぬか油を摂取した人が日常生活に支障をきたすほどの倦怠(けんたい)感や頭痛、皮膚の炎症を起こした。不調により仕事を辞めざるを得ない人も。患者認定のハードルは高く、未認定の被害者は医療費を自己負担した。差別や偏見にもさらされ、国やカネミ倉庫などに補償を求めた法廷闘争は長期に及んだ。

被害の表面化から約44年が経過した2012年8月29日、救済法が成立した。

救済策では健康実態調査に協力した患者に国が年19万円、カネミ倉庫が年5万円をそれぞれ支給。ダイオキシン類の血中濃度が基準値に満たなくても、68年当時に認定患者と同居していたことを書類で証明し、一定の症状がある人は認定されるようになった。

救済策の実施状況を検証する関係省庁とカネミ倉庫、被害者団体による定期的な「3者協議」も始まった。

一方、同居が証明できない人や、症状はあるが、基準に満たない子や孫ら次世代の認定は進まなかった。

被害者団体などの要望を受け、国は21年8月、次世代を対象とした初の健康実態調査を開始。22年2月の中間報告では回答した388人のうち、油症特有の症状である倦怠感や頭痛を訴える人がそれぞれ約4割いた。調査結果を踏まえ、次世代の認定基準が作られるかが今後の焦点となる。

発生から半世紀以上がたち、記憶の風化も懸念される。

カネミ油症被害者全国連絡会の三苫哲也事務局長(52)は大学などでの講演を続けている。米ぬか油が入った瓶や一斗缶を公的施設で保存する取り組みも検討中だ。三苫さんは「高度経済成長の裏で起きた事実を、歴史にきざみたい」と話した。〔共同〕

カネミ油症 1968年10月、カネミ倉庫(北九州市)が販売した米ぬか油を摂取した人たちの全身に吹き出物ができ、目が開けられなくなるほどの目やにが出るなど、甚大な健康被害が表面化。原因は、製造過程でのポリ塩化ビフェニール(PCB)や猛毒のダイオキシン類の混入。発生当初、約1万4千人が被害を届け出たが、2022年3月末までに患者として認定されたのは2363人にとどまる。皮膚が黒ずんだ赤ちゃんが生まれたほか、子や孫に先天性疾患が見られるなど、次世代への影響も懸念されている。〔共同〕

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