難民支援へ、自治体関心 UNHCRと連携強化
ロシアの侵攻を受けたウクライナから多くの住民が国外へ逃れる中、難民支援の連携を強化するため国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)が世界の都市と結ぶ「難民を支える自治体ネットワーク」への関心が、日本国内でも高まっている。日本は難民認定に消極的との指摘もある。UNHCR担当者は「ネットワークを広め、社会の受け入れ機運を高めていきたい」と期待している。
「ウクライナからの避難民が、どんどん増えている。市として何かできないか」。ロシアが侵攻を始めた直後の3月、岡山県瀬戸内市の武久顕也市長や職員は、市として1千万円の寄付を決め、送り先としてUNHCRを選んだ。その過程でネットワークの存在を知り、市はさっそく5月に参加への署名へ踏み切った。
ネットワークに参加するのは今年5月時点で53カ国の280自治体。日本では東京都が2019年11月に初めて名を連ね、広島市、東京都文京区、渋谷区が続いた。UNHCR駐日事務所の担当者によると、ウクライナ侵攻後は「問い合わせが膨大」という。6月には札幌市も加わった。
日本国内の支援の在り方は、さまざまだ。東京パラリンピックで難民選手団のホストタウンに登録した自治体もあれば、地域住民への理解を深めるため写真パネル展を開催している自治体もある。瀬戸内市は勉強会を開いて職員の理解を深める予定で、担当者は「地方の自治体でも、できることがある。多文化共生に向けて努力したい」と語った。
日本の難民受け入れは各国と比べると少ないのが現状で「難民鎖国」とも批判される。UNHCRによると、ウクライナ侵攻前の21年末時点で、紛争や迫害で国内外に逃れた難民や難民申請者らは世界で8930万人に上るが、21年の日本の難民認定者数は74人にとどまっている。
UNHCRのナッケン鯉都・駐日首席副代表は「これまでは地球の裏側のことだと考えていたのが、今は自分事として捉えている人が多い。この機会にネットワークの仲間を増やし、難民支援の最前線である自治体から国に政策提言できるような社会に持っていきたい」と話している。〔共同〕