「安全優先を」願いなお 関越道バス事故10年、群馬

群馬県藤岡市の関越自動車道で2012年4月、高速ツアーバスが防音壁に衝突、7人が死亡、38人が重軽傷を負った事故は29日、発生から10年を迎えた。事故後、運転手の過労運転に対する再発防止策がとられたが、16年に運転手の技能不足が原因とされるバス事故が長野県軽井沢町で起きた。背景として指摘されたのは事業者間の過当な競争のひずみだ。「利益よりも安全優先を」。遺族は今も願い続けている。
「事故の20分前に眠気を感じながらあえて中止せず、漫然と運転を続けた」「プロとして許されない」
前橋地裁の裁判長は14年3月、関越道バス事故で自動車運転過失致死傷などの罪に問われた運転手に懲役9年6月、罰金200万円の判決を言い渡し、厳しい言葉を投げかけた。
事故を受け、国土交通省は「事業者間競争の激化によって過労運転等が常態化し、輸送の安全が脅かされる懸念があった」とする課題を提示。夜間運行する運転手の1日の走行距離を従来の670キロから400キロに制限する新基準を出した。
しかしその4年後、今度は「運転手の技能不足」に焦点が当たる。16年1月には軽井沢町でスキーバスが道路から転落し、大学生ら15人が死亡した。
国交省の委託を受けた事故調査委員会は「通常では考えにくい運転」「経験や技能が十分でなかった可能性がある」とした上で、「事業規模の急激な拡大に運転者の確保育成が追いつかず、安全を軽視した事業運営を行ってきた」と指摘した。
2つの大事故で「利益優先」という共通の問題が浮かび上がった。遺族らは同じ言葉を繰り返し訴えてきた。「風化させず、二度と同じ事故を起こさないで」。すべての運転事業者に心がけてほしい。安全最優先の姿勢を求め続けている。〔共同〕