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私鉄の収益、脱・鉄道を加速 近鉄は国際物流を柱に

鉄道ビジネスまとめ読み

私鉄各社が非鉄道分野の成長を競っています。私鉄最長の路線をもつ近鉄グループホールディングスは、国際物流の「近鉄エクスプレス」を完全子会社化。沿線人口減少の影響を受けにくいビジネスを成長の柱に据えます。東急は東京都渋谷地区の再開発を軸に不動産事業が長期的な収益源となる戦略を描きます。長年、旅客輸送を中心にしていた業界の殻を破った各社の動きをまとめました。(データや肩書は公開当時)

近鉄、国際貨物に命運託す 異形の事業構成に

新型コロナウイルスの流行で大打撃を被った鉄道業界。なかでも私鉄最長の路線を持つ近鉄グループホールディングス(GHD)は大幅な事業の見直しを迫られた。そのなかで、国際物流の近鉄エクスプレスを完全子会社にした。

「近鉄エクスプレスは売却すべきではないか」。関係者によると、近鉄GHDのもとに数年前から複数のレターが届いていたという。送り主は少数の株式を保有する投資ファンド。鉄道やホテル、不動産を中心とする近鉄GHDと、持ち分法適用会社の近鉄エクスプレスとはグループ内の相乗効果が小さいというのが、その理由だ。

近鉄エクスプレスを売却すれば、単純計算で1000億円規模の資金を確保できる。それを元手に財務の立て直しや成長戦略投資ができるという提案だった。「売るか取り込むか、どっちかやったんや」。近鉄エクスプレスへのTOB(株式公開買い付け)を決めた2022年5月、近鉄GHDの首脳はこう漏らした。

社内で「太陽と冥王星」と呼ばれるほど離れていた両社。それでも1680億円もの資金を投じて取りこんだ。

近鉄エクスプレスは1950年代に旅行部門から派生して始まった。世界に拠点を巡らし航空会社から貨物スペースを仕入れて荷物をまとめて運ぶフォワーダー(混載貨物事業)。国内大手になり、株式上場後は赤字になったことは一度もない。最近では医薬品や電子部品などの輸送が増えている。…続きを読む

東急、渋谷再開発に傾注 不動産事業主体へ加速 

東急の不動産事業で稼ぐ構図が鮮明だ。鉄道事業の利益回復が遅れる一方、東京・渋谷の再開発など不動産事業が底堅く推移する。社名から「電鉄」を外して3年、コロナを機に「脱・鉄道」の構造転換が加速している。

東京・渋谷駅に直結する東急百貨店東横店の解体工事が進む。跡地には複合施設「渋谷スクランブルスクエア」の別棟が27年度に開業する。近隣に複合施設「渋谷ヒカリエ」を12年に開業して以来、東急が進めてきた渋谷再開発が終盤に入る。

渋谷再開発は東急の最大の成長戦略だ。30年度までに不動産関連で累計4500億円を投資する計画で、今期のEBITDA(利払い・税引き・償却前利益)の約3倍に当たる。「鉄道を絡めながら街との連動性を持たせた開発ができる。大きなアドバンテージだ」。高橋俊之専務は強調する。

東京急行電鉄が社名から「電鉄」を外し、鉄道事業を分社化して不動産事業を主体とする事業持ち株会社となって3年。名実ともに不動産事業へのシフトが加速している。…続きを読む

東京メトロ、地上で稼ぐ 自前でeスポーツやNFT

東京地下鉄(東京メトロ)が非鉄道分野の事業拡大に乗り出している。沿線近辺の空きビルなどを活用し、ゲーム対戦競技「eスポーツ」のトレーニングジムやロボットのプログラミング教室をオープン。新型コロナウイルス禍で移動需要が目減りする中、業界の殻を破った戦略を相次ぎ打ち出し、新たな収益源に育てている。

「そうそう、その調子で前に出よう」「もう少し上に向けて撃ってみようか」

1月の平日の夕方、南北線赤羽岩淵駅(東京・北)のすぐ横にあるガラス張りの施設を訪れると、モニター画面の前に座って人気の射撃対戦ゲームに打ち込む小学生たちと、操作を見守りながら助言するインストラクターの姿があった。

ここは日本でまだ珍しいeスポーツ専用のトレーニングジム。東京メトロとスタートアップのゲシピ(同・千代田)が共同運営する。…続きを読む

大阪メトロ、鉄道以外に路線拡大 飲食支援やヘルスケア

大阪市高速電気軌道(大阪メトロ)が鉄道以外の分野で新規事業を続々と開始する。飲食物の移動販売車「フードトラック」を出店したい事業者と土地所有者をつなぐサービスを春に始める。2023年度中には独自のアプリで鉄道利用客の健康増進を支援するヘルスケアサービスへの参入を目指す。交通事業とシナジー(相乗効果)を発揮できる新規事業を育成して収益源を多角化する。

フードトラック(キッチンカー)の出店支援サービスでは、出店を希望する飲食事業者と、空きスペースを保有する土地所有者をマッチングする。飲食事業者に代わって車両の手配も行う。飲食事業者から出店料をもらい、土地所有者に賃料を支払う。

出店エリアは、まず通勤客の多い御堂筋線の淀屋橋駅や本町駅の周辺を計画している。将来的には京橋や梅田、なんばの駅周辺にも拡大したいという。…続きを読む

鉄道大手、広がる配置転換 西武は間接部門集約の新会社

新型コロナウイルス禍で移動需要の回復が遅れる中、鉄道大手で人員を再配置する動きが広がっている。西武ホールディングス(HD)はグループの間接部門を集約する新会社を来春立ち上げ、東急も1000人規模で従業員の再配置を計画する。各社ともコロナ禍後を見据えた成長分野を模索する中で、経営資源の最適化に動く。

西武HDは2023年4月に運営を始める新会社に、グループ20社強の経理や労務管理などの間接業務を集約する。社員数は60〜80人前後になる見込みだ。西武HDからの出向や転籍に加え、給与計算や経理業務が得意な専門人材を中途採用する。28年ごろまでに新会社の従業員の8割を23年度以降の新規採用者で構成できるようにする。

新会社で間接業務の基幹システムを共通化し、グループ横断でDX(デジタルトランスフォーメーション)分野に経営資源を投入しやすくする狙いもある。…続きを読む

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