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京都の地下鉄運賃なぜ高い? 埋蔵文化財で工費かさむ

おカネ知って納得

京都市営地下鉄は全国の公営地下鉄で最も初乗り運賃が高い。区間に応じて運賃は220~360円と変動するが、総じて他都市よりも高い設定だ。さらに、他都市と比べお得に購入できた観光客向けの1日乗車券も10月に値上げされる。市民や観光客に負担が押し寄せる理由を調べた。

巨大ターミナルのJR京都駅から世界遺産・二条城へ向かう場合、市営地下鉄の京都駅―二条城前駅は260円(市バスは230円の均一運賃区間)。同区間は初乗り運賃の次の段階の「2区」(3~7㌔㍍)に相当するが、他都市より10円ほど高い水準だ。加えて、地下鉄だと乗り換えも必要になるので、京都で暮らす記者はバスを頻用する。

京都市をのぞく全国7つの公営地下鉄のうち、初乗り運賃は札幌市、仙台市、横浜市、名古屋市、神戸市、福岡市が210円で並ぶ。利用客が多い東京都は180円と群を抜いて安い。京都市は2019年度の消費税増税にともない、初乗り運賃を210円から10円値上げし、全国で最も高い運賃となった。

その理由を京都市交通局は「バブル期の工事費がかさみ、借金返済を補うために他都市より運賃設定を高くせざるを得なかった」と説明する。1997年に完成した東西線は当初想定した2450億円の総工費が4515億円まで膨らんだ。二条城周辺に埋蔵文化財が見つかったことなどを受け、工事が難航したのが原因だ。92年3月まで160円だった初乗り運賃は、4回の改定を経て現在の運賃になった。

バス利用が観光客にとって便利なのも地下鉄経営が苦しい一因だ。清水寺、金閣寺など著名な観光地へのアクセスでは、バスに比べ地下鉄は分が悪い。コロナ前にはJR京都駅前で、そうした観光地へのバスを待つ長蛇の列が見られた。

現在、観光客向けの地下鉄の1日乗車券は大人600円と、横浜市の740円と比べても大幅に安い。そのため初乗りなどの運賃は高いのだが、1人あたりの乗車運賃を比べると全国で4番目の水準に落ち着く。

京都市の財政は火の車。2028年度にも「財政再生団体」に転落する恐れがある。20年度の地下鉄事業の赤字は61億円にのぼる見通し。このほど国に救済措置を求めた。運賃改定は「最後の手段」というが、市は10月に1日乗車券を800円に値上げする。地下鉄運賃が安くなることはなさそうだ。(村上由樹)

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