遺伝性神経難病の仕組み解明、ALS治療にも期待 京大

京都大学の森和俊教授らは29日、手足の筋肉が衰える遺伝性の神経難病が発症する仕組みを解明したと発表した。細胞内の小胞体という小器官に異常なたんぱく質が集まり、神経細胞が死んでいた。全身の筋肉が動かなくなるALS(筋萎縮性側索硬化症)の原因解明や治療法開発につながる。
研究成果は同日、米科学誌に掲載する。小胞体は体に必要なたんぱく質をつくる細胞内の器官だ。細胞内に異常なたんぱく質がたまると、修復したり除去したりする働きをする。森教授は小胞体がたんぱく質の品質管理をする仕組みを解明し、ノーベル賞の有力候補者といわれている。
森教授らはセイピノパシーという手足の筋肉が衰える神経難病に注目した。人の大腸や神経のがんの培養細胞に対して、小胞体にある「セイピン」というたんぱく質が異常になるように遺伝子を操作すると、たんぱく質が小胞体に集まって塊を作った。
塊は細胞外からカルシウムイオンを取り込む働きをする分子を巻き込んでできる。それによってカルシウムイオンの取り込みが減ってイオン濃度が下がることで神経細胞が死んでいた。別の遺伝子を導入して分子を増やすとイオンの濃度が上がり、細胞死を防げた。
今後はALSの患者から作ったiPS細胞を使い、ALSでも同様にカルシウムの濃度低下が発症に関わるかどうかを確かめる。森教授は「患者から作ったiPS細胞で研究したい」と話した。