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犬の車椅子、ともに歩く喜びを ビジュアルで迫る現場

現場探究

(更新)

車椅子で動く喜びを得られるのは人間だけではない。犬ならば車椅子を使えば、もう一度歩いたり走ったりできるようにもなる。工房スイーピー(大阪市)は犬の大きさや動きにあわせる細やかな技術が評判を呼び、8年で約3000台を手作りしている。

南海電気鉄道の住吉大社駅から7~8分歩いた住宅街の一角に工房はある。川西英治さん(61)と仁美さん(55)夫婦の自宅ガレージを改装した店内には、車椅子の原料となるアルミのパイプ棒や車輪がずらりと並んでいた。

犬のサイズや症状に合わせて車椅子を組み上げていく川西英治さん=大岡敦撮影

仕組みはシンプルだ。アルミ棒の枠に車輪がついていて、病気や事故で悪くなった脚を枠に引っかけて浮かせる。持ち手にあたる部分をベルトで犬の胴体に固定し、元気な脚で地面を蹴れば前に進んでいく。

製作を担当するのは英治さん。「作りは簡単だが、体にあったものでなければ犬が不安や違和感を覚えて歩かなくなってしまう」と難しさを話す。後ろ脚用なら2輪でいいが、前脚用だと4輪が必要になる。

事故で左後ろ脚を欠損し、散歩時に車椅子を使用する犬

出来を左右するのは、犬の状態の観察眼だ。胴回りや脚の長さを1ミリメートル単位で測って、棒の長さを調整するだけではない。歩き方をじっくりと見て、軸となる脚や筋肉の付き方を探る。店に来られない客には犬が歩いている動画を送ってもらう。

どの脚に力を入れれば歩きやすいかを判断するのは経験がなせる技。ベルトの位置や締める強さも調節し、動く脚がしっかりと地面を蹴れるようにする。

バックルなどで調整し車椅子を装着する

「今後容体がどう変化するかまで見極め、車椅子を何度も買い替える必要はないようにしている」。犬の容体が悪化しそうなら、2輪ではなく最初から4輪の車椅子にするよう飼い主に勧めることもある。

犬の車椅子は市販されているが、サイズの種類は限られる。手作りするのは全国でも珍しいという。1台1万~4万円が中心で、市販品の半額以下。作るのに1~2日かかり、1カ月分ほど注文がたまっている。

犬の症状によって2輪か4輪かを選び、飼い主に提案する

実は注文に応じて、猫やヤギの車椅子も作ったこともある。ただ、「猫は上下に運動するので車椅子を作るのは難しい」と英治さんは教えてくれた。

夫妻が工房を開いたのは2013年。ダックスフントの「スイーピー」が椎間板ヘルニアで両後ろ脚を動かせなくなった。獣医の診察を受けて車椅子を購入したが、ベルトのサイズがあわず装着を嫌がった。

そこでホームセンターで材料を買い、自分で車椅子を作ってみると元気に歩いてくれた。「市販の車椅子で同じ思いをした人は大勢いるはず」。骨董品店を経営していたが、飼い犬の名前を掲げた犬用の車椅子工房の開業を決意した。

これまでに作った車椅子を使うペットの写真が壁一面に貼られている

工房の壁にはこれまで車椅子を作った犬の写真が所狭しと並ぶ。飼い主とのやりとりを担う仁美さんは「歩けない犬を飼っていたからこそ、車椅子の大切さがわかる」と振り返る。

スイーピーは死んでしまったが、名前は工房に残る。喜んで走る姿を思い返しながら、川西夫妻はきょうも車椅子作りに励んでいる。

「工房スイーピー」を二人三脚で営む川西英治さんと妻の仁美さん

(泉洸希)

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