京大霊長類研を事実上解体、名称変更へ 不正経理受け
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京都大は26日、研究費の不正使用があった霊長類研究所(愛知県犬山市)について、一部の部門を別の組織に移管するなど大幅に規模を縮小し、組織名も変更すると発表した。世界の霊長類研究をリードしてきた著名な拠点が事実上解体されることになった。
12の部門とセンターで構成される霊長類研のうち、研究費や論文で不正があった2部門を含む3部門を廃止。他の4部門を京大の別の機関に移管する。残る5つの部門とセンターを来年4月から新組織「ヒト行動進化研究センター(仮称)」に移行する。
これまで霊長類研が占有していた犬山地区は「京大犬山キャンパス」とし、チェック体制を強化するため同センターを含む京大の複数の機関が協議会をつくり、共同で運営に当たる。サルなどの飼育や職員の雇用は継続する。
霊長類研は日本の霊長類学の父、故・今西錦司京大名誉教授らが設立に貢献。数字を使う天才チンパンジー「アイ」の研究などで知られる。
霊長類研を巡っては、京大が昨年6月、チンパンジー飼育施設の工事で架空取引や入札妨害など約5億円の不正支出があったと公表。他にも会計検査院が約6億円の不正支出を指摘した。今月中旬には元教授が執筆した論文で実験が実際に行われた事実が確認できないとして、捏造と発表した。
湊長博学長は26日に記者会見し「不祥事が起きた時に自浄能力があることが研究所の必要条件だが、そこに問題があった」と陳謝した。〔共同〕
京都大霊長類研究所
霊長類に特化した国内唯一の研究施設で、1967年に設立。生態学や行動学、認知科学、ゲノム科学といった多様な視点から、人間のほかチンパンジー、ボノボ、ゴリラなどの霊長類を総合的に研究している。〔共同〕