漫画で学ぶ包括的性教育 埼玉大教授、切り口多様に

妊娠や避妊の知識にとどまらず、ジェンダーや性の多様性など、社会や政治の視点から性を学ぶ「包括的性教育」を知ってもらおうと、埼玉大教育学部の田代美江子教授=ジェンダー教育学=らが、季刊誌で連載する漫画「アイはあるの?」を一冊にまとめた。田代さんは「さまざまな切り口から性を考えてもらえれば」と話す。
包括的性教育では対等な関係性の築き方や性暴力などのテーマを通じ、性を幅広く学ぶ。国連教育科学文化機関(ユネスコ)が科学的根拠に基づいた手引を作成し、学校で必修とする国も多い。
漫画ではデートDVや恋愛、性についての固定的な思い込み「ジェンダーバイアス」など全26テーマを収録。1テーマにつき4ページの漫画に解説2ページを添え、読者に考えてもらうことに重点を置いた。
性行為に関し、お互いの意思を確認する「性的同意」では、相手のことを考えノーと言えないことがあるかもしれない、とした上で「相手を思いやることと、自分の意志をしっかり示すのは両立しないのか」と投げかける。
元になった連載は、中高生に漫画を通して包括的性教育を知ってもらおうと企画された。田代さんが編集長などを務めた性の総合情報誌「季刊セクシュアリティ」(エイデル研究所)で2013年にスタート。田代さんが趣味で漫画を描いていた知人の塙季代子さんに作画を依頼した。
田代さんは大学でジェンダーに関する知識を学び、自身が「思うように生きられない」と感じていた理由が分かるようになったという。「納得して生きるためには、社会を理解し、自分が何に影響を受けているか知る必要がある」
日本では小さい頃から気遣いや思いやりを強調され、人間関係の中でノーを言える素地が養われていないと指摘する田代さん。「漫画には多様なものの見方やヒントを詰め込んだ。性に関する選択をする中で、自分はどうしたいかを考え、行動する力を付ける助けになればうれしい」と期待を込めた。〔共同〕